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Channel: 倭人伝を解く
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卜見貴人吉不吉

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卜見貴人吉不吉吉足開首仰身正內自橋

貴人に見(まみ)えるは、吉であるか不吉であるかを卜(うらな)い、吉であれば、足が開いて首が仰(あお)ぎ、身(み)が正され、(甲羅の?)内側が自ずから高くなり、

不吉首仰身節折足肣有外若無漁

不吉であれば、首が仰(あお)ぎ、身(み)の関節が折れ曲がって、足、しっぽ( 肣(こん)=臗(こん)?))は(甲羅の?)外側に有り、漁(あさ)ら無いがごとくする。

卜請謁於人得不得得首仰足開內自橋

人に謁見(えっけん)を請(こ)うて、得られるか得られないかを卜(うらな)い、得られれば、首が仰(あお)ぎ、足が開き、(甲羅の?)内側が自ずから高くなり、

不得首仰足肣有外

得られなければ、首が仰(あお)ぎ足、しっぽ( 肣(こん)=臗(こん)?))は(甲羅の?)外側に有る。

卜追亡人當得不得得首仰足肣內外相應

逃げる人を追いかけてつかまえるべきかつかまえないべきかを卜(うらな)い、つかまえるべきであれば、首が仰(あお)ぎ、足、しっぽ( 肣(こん)=臗(こん)?))が出て(甲羅の?)の内側と外側が相(あい)応(おう)じ、

不得首仰足開若吉安

つかまえるべきでなければ、首が仰(あお)ぎ、足が開き、、(甲羅が?)水平に広がって弛(ゆる)(吉=弛(ち)?)むがごとく安(やす)んじる。


卜漁獵得不得得首仰足開內外相應

漁猟をして得られるか得られないかを卜(うらな)い、得られれば、首が仰(あお)ぎ足が開き、(甲羅の?)の内側と外側が相(あい)応(おう)ずる。

不得足肣首仰若吉安

得られなければ、足、しっぽ( 肣(こん)=臗(こん)?))が出て首が仰(あお)ぎ、
(甲羅が?)水平に広がって弛(ゆる)(吉=弛(ち)?)むがごとく安(やす)んずる。

卜行遇盜不遇遇首仰足開身節折外高內下

行って盗人に遇(あ)うか遇(あ)わないかを卜(うらな)い、遇(あ)えば、首が仰(あお)ぎ足が開き、身(み)の関節が折れまがり、(甲羅の?)外側が高く、内側が低くなる。

不遇呈兆

遇(あ)わなければ、兆(きざ)しをあらわす。

卜天雨不雨雨首仰有外外高內下

天気が雨になるか雨にならないかを卜(うらな)い、雨が降れば、首が仰(あお)ぎ(甲羅の?)外側に有って、外側が高くなり内側が低くなる。

不雨首仰足開若吉安

雨が降らなければ、首が仰ぎ、足が開き、(甲羅が?)水平に広がって弛(ゆる)(吉=弛(ち)?)むがごとく安(やす)んずる。

卜天雨霽不霽霽呈兆足開首仰

天気の雨がやむかやまないかを卜(うらな)い、雨がやめば、兆(きざ)しをあきらかにして足が開き首が仰(あお)ぎ、

不霽吉

雨がやまなければ、(甲羅が?)水平に広がって弛(ゆる)(吉=弛(ち)?)む。

命曰吉安

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命曰吉安以占病病甚者一日不死

命名(めいめい)して曰く、吉安、と。病を占(うらな)うを以ってし、病が甚(はなは)だしい者は、一日では死なない。

不甚者卜日瘳不死

病が甚(はなは)だしくない者は卜(うらな)った日になおり、死なない。

系者重罪不出輕罪環出

囚人の重罪者は出られない、軽罪者はすぐに(環=還?)出られる。

過一日不出久毋傷也

一日を過ぎると出られないが久(ひさ)しく傷つかない。

求財物買臣妾馬牛一日環得

財物を求め、臣妾馬牛を買うは、一日ですぐに(環=還?)得られる。

過一日不得行者不行來者環至

一日を過ぎると得られない。行く者は行かない。来る者はすぐに(環=還?)至る。

過食時不至不來擊盜不行行不遇

食時を過ぎると至らず、来ない。盗人を撃ちに行かない、行くと遇(あ)わない。

聞盜不來徙官不徙居官家室皆吉

盗人が来ないと聞く。官を移るは移らない。官、家に居住して皆(みな)吉(きち)。

歲稼不孰民疾疫無疾歲中無兵

実りの時の穀物が熟(う)れない。民が疫病にかかるは、かからない。実りの時中に戦いは無い。

見人行不行不喜請謁人不行不得

人に見(まみ)えに行くは、行かず、喜ばず。人に謁見(えっけん)を請(こ)うは行かず得られない。

追亡人漁獵不得行不遇盜

逃げる人を追いかける、と漁猟は、得られない。行き盗人に遇(あ)わない。

雨不雨霽不霽

雨は降らない。雨がやむはやまない。

命曰呈兆病者不死系者出

命名して曰く、呈兆、と。病人は死なない。囚人は出る。

行者行來者來市買得

行く者は行く。来る者は来る。市(いち)は買うが得(とく)。

追亡人得過一日不得問行者不到

逃げる人を追いかけてつかまえるが、一日を過ぎるとつかまえられない。見舞いに行く者は到(いた)らない。

命曰柱徹卜病不死系者出

命名して曰く、柱徹、と。病人を卜(うらな)い死なない。囚人は出る。

行者行來者來市買不得

行く者は行く。来る者は来る。市(いち)は買うは不得。

憂者毋憂追亡人不得

憂(うれ)える者は憂(うれ)えない。逃げる人を追いかけてつかまえられない。

命曰首仰足肣有內無外占病病甚不死

命名して曰く、首仰足肣有內無外、と。(或いは下五字は開無内有外?以下、首仰足開無内有外と仮定して)病を占(うらな)い、病が甚(はなは)だであっても死なない。

系者解求財物買臣妾馬牛不得

囚人は解(と)かれる。財物を求め臣妾馬牛を買うは不得。

行者聞言不行來者不來聞盜不來

行く者は行かずと言うを聞く。来る者は来ない。盗人は来ないと聞く。

聞言不至徒官聞言不徙居官有憂

至らないと言うを聞く。官を移るは移らないと言うを聞く。官に居住して憂(うれ)いが有る。

居家多災歲稼中孰民疾疫多病

家に居住して災難が多い。実りの時の穀物は中位に熟(う)れる。民の流行病は病にかからない(多=無?)

歲中有兵聞言不開見貴人吉

実りの時期中に戦いが有る。開かないを言うを聞く。貴人に見(まみ)えるは吉(きち)。

請謁不行行不得善言追亡人不得

謁見(えっけん)を請(こ)うは行かない。行けば善言(ぜんげん)を得られない。逃げる人を追いかけてもつかまえられない。

漁獵不得行不遇盜雨不雨甚霽不霽

漁猟は得られない。行くは盗人に遇(あ)わない。雨は降らないこと甚(はなは)だしい。雨がやむは、やまない。

故其莫字皆為首備問之曰備者仰也故定以為仰此私記也

以前はその字ではなく、皆(みな)首備と為した。これを問うて曰く、備とは、仰(あお)ぐであり、
故(ゆえ)に仰と為すを以って定(さだ)めた。これは私的な記述である。

命曰首仰足肣有內無外占病病甚不死

命名して曰く、首仰足肣有內無外、と。(或いは下四字は無内有外?)病を占(うらな)い、病が甚(はなは)だしくても死なない。

系者不出求財買臣妾不得

囚人は出ない。財を求め、臣妾を買うは不得。

行者不行來者不來擊盜不見

行くのは行かない。来るのは来ない。盗人を撃(う)つはあらわれない。

聞盜來內自驚不來徙官不徙

盗人が来ると聞く、ひそかに自ら警(いまし)めれば、来ない。官を移るは移らない。

居官家室吉歲稼不孰民疾疫有病甚

官、家に居して吉(きち)。実りの時の穀物は熟(う)れない。民は流行病にかかり病の甚(はなは)だしくなる者が有る。

歲中無兵見貴人吉請謁追亡人不得

実りの時期中に戦いは無い。貴人に見(まみ)えるは吉(きち)。謁見(えっけん)を請(こ)う、と逃げる人を追いかけるは得られない。

亡財物財物不出得漁獵不得

財物を亡くし、財物は出さずが得(とく)。漁猟は得られない。

行不遇盜雨不雨霽不霽凶

行くは盗人に遇(あ)わない。雨は降らない。雨がやむは、やまず凶(きょう)。

命曰呈兆首仰足肣

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命曰呈兆首仰足肣以占病不死

命名して曰く、呈兆首仰足肣、と。病を占(うらな)うを以って、死なない。

系者未出求財物買臣妾馬牛不得

囚人は未(ま)だ出ない。財物を求め、臣妾、馬、牛を買うは不得。

行不行來不來擊盜不相見聞盜來不來

行くは行かず。来るは来ない。盗人を撃(う)つは相(あい)見(まみ)えない。盗人が来るを聞くは来ない。

徙官不徙居官久多憂居家室不吉

官を移るは移らない。官に居住すれば久(ひさ)しく憂(うれ)いが多い。家に居住するは不吉。

歲稼不孰民病疫歲中毋兵見貴人不吉

実りの時の穀物は熟(う)れない。民は疫病(えきびょう)にかかる。実りの時期中に戦いは無い。貴人に見(まみ)えるは不吉。

請謁不得漁獵得少行不遇盜

謁見(えっけん)を請(こ)うは得られない。漁猟は少し得る。行くは盗人に遇(あ)わない。

雨不雨霽不霽不吉

雨は降らない。雨がやむはやまず不吉。

命曰呈兆首仰足開以占病病甐死

命名して曰く、呈兆首仰足開、と。病を占(うらな)うを以って、病は甐死(甐の意味は不明)。

系囚出求財物買臣妾馬牛不得

囚人は出る。財物を求め臣妾、馬、牛を買うは不得。

行者行來者來擊盜不見盜

行く者は行く。来る者は来る。盗人を撃(う)つは盗人を見ない。

聞盜來不來徙官徙居官不久

盗人が来るは来ないと聞く。官を移るは移る。官に居住するは久(ひさ)しくない。

居家室不吉歲稼不孰民疾疫有而少

家に居住するは不吉。実りの時の穀物は熟(う)れない。民の疫病にかかるは有るが少ない。

歲中毋兵見貴人不見吉請謁追亡人漁獵不得

実りの時期中に戦いは無い。貴人に見(まみ)えるは見(まみ)えずが吉(きち)。謁見(えっけん)を
請(こ)う、逃げる人を追いかける、漁猟は、不得。

行遇盜雨不雨霽小吉

行くと盗人に遇(あ)う。雨は降らない。雨がやんで小吉(しょうきち)。

命曰首仰足肣以占病不死

命名して曰く、首仰足肣、と。病を占(うらな)うを以って、死なず。

系者久毋傷也求財物買臣妾馬牛不得

囚人は久しくするが傷つかない。財物を求め、臣妾、馬、牛を買うは不得。

行者不行擊盜不行來者來聞盜來

行く者は行かず。盗人を撃つは行かず。来る者は来る。盗人が来ると聞く。

徙官聞言不徙居家室不吉歲稼不孰

官を移るは移らずと言うを聞く。家に居住するは不吉。実りの時の穀物は熟(う)れない。

民疾疫少歲中毋兵見貴人得見

民は疫病にかかるは少ない。実りの時期中に戦いは無い。貴人に見(まみ)えるは、見(まみ)えるを得る。

請謁追亡人漁獵不得行遇盜

謁見(えっけん)を請(こ)い、逃げる人を追いかけ、漁猟は、不得。行って盗人に遇(あ)う。

雨不雨霽不霽吉

雨は降らない。雨がやむはやまないが吉(きち)。

命曰首仰足開有內以占病者死

命名して曰く、首仰足開有內、と。病人を占(うらな)うを以ってすると、死。

系者出求財物買臣妾馬牛不得

囚人は出る。財物を求め、臣妾、馬、牛を買うは不得。

行者行來者來擊盜行不見盜

行く者は行く。来る者は来る。盗人を撃つは、行って盗人を見ない。

聞盜來不來徙官徙居官不久

盗人が来るは来ないと聞く。官を移るは移る。官に居(い)るは久(ひさ)しくない。

居家室不吉歲孰民疾疫有而少

家に居(い)るは不吉。実りの時、熟(う)れる。民が疫病にかかるは有るが少ない。

歲中毋兵見貴人不吉請謁追亡人漁獵不得

実りの時期中に戦いは無い。貴人に見(まみ)えるは不吉。謁見(えっけん)を請(こ)い、逃げる人を追いかけ、漁猟するは、不得。

行不遇盜雨霽霽小吉不霽吉

行って盗人に遇(あ)わない。雨がふる。雨がやむはやめば小吉(しょうきち)、やまずは吉(きち)。

命曰吉內外自橋以占病卜日毋瘳死

命名して曰く、吉內外自橋、と。病を占(うらな)うを以って、卜(うらな)った日になおらず死ぬ。

系者毋罪出求財物買臣妾馬牛得

囚人は罪がなくなり出る。財物を求め、臣妾、馬、牛を買うは得。

行者行來者來擊盜合交等聞盜來來

行く者は行く。来る者は来る。盗人を撃つは合戦して交わるは等(ひと)しい。盗人が来るは来ると聞く。

徙官徙居家室吉歲孰民疫無疾

官を移るは移る。家に居(い)るは吉(きち)。実りの時に熟(う)れる。民の疫病はかからない。

歲中無兵見貴人請謁追亡人漁獵得

実りの時期中に戦いは無い。貴人に見え、謁見(えっけん)を請(こ)い、逃げる人を追いかけ、漁猟をするは、得られる。

行遇盜雨霽雨霽大吉

行って盗人に遇(あ)う。雨がふる、雨がやむはやまず大吉(だいきち)(雨=不?)。

命曰吉內外自吉

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命曰吉內外自吉以占病病者死系不出

命名して曰く、吉內外自吉、と。病を占うを以ってすると、病人は死ぬ。囚人は出ない。

求財物買臣妾馬牛追亡人漁獵不得

財物を求め、臣妾、馬、牛を買う、逃げる人を追いかける、漁猟をするは、不得。

行者不來擊盜不相見聞盜不來

行く。来る者は来ない。盗人を撃つは相(あい)見(まみ)えない。盗人が来ないと聞く。

徙官徙居官有憂居家室見貴人請謁不吉

官を移るは移る。官に居(い)るは憂(うれ)いを有(ゆう)する。家に居(いる)、貴人に見(まみ)える、謁見(えっけん)を請(こ)うは、不吉。

歲稼不孰民疾疫歲中無兵

実りの時の穀物は熟(う)れない。民は疫病にかかる。実りの時期中に戦いは無い。

行不遇盜雨不雨霽不霽不吉

行くと盗人に遇(あ)わない。雨は降らない。雨がやむはやまないで不吉。

命曰漁人以占病者病者甚不死

命名して曰く、漁人、と。病人を占うを以ってすると、病人は甚(はなは)だしいが、死なない。

系者出求財物買臣妾馬牛擊盜請謁追亡人漁獵得

囚人は出る。財物を求め、臣妾、馬、牛を買い、盗人を撃ち、謁見(えっけん)を請(こ)い、
逃げる人を追いかけ、漁猟するは、得られる。

行者行來聞盜來不來徙官不徒居家室吉

行く者は行く。来る。盗人が来るを聞くは来ない。官を移るは移らない。家に居(い)るは吉(きち)。

歲稼不孰民疾疫歲中毋兵見貴人吉

実りの時の穀物は熟(う)れない。民は疫病にかかる。実りの時期中に戦いは無い。貴人に見(まみ)えるは吉(きち)。

行不遇盜雨不雨霽不霽吉

行って盗人に遇(あ)わない。雨は降らない。雨がやまないはやまず吉(きち)。

命曰首仰足肣內高外下以占病病者甚不死

命名して曰く、首仰足肣內高外下、と。病を占うを以ってすると、病人は甚(はなは)だしいが、死なない。

系者不出求財物買臣妾馬牛追亡人漁獵得

囚人は出ない。財物を求め、臣妾、馬、牛を買い、逃げる人を追いかけ、漁猟をするは、得られる。

行不行來者來擊盜勝徙官不徙

行くは行かない。来る者は来ない。盗人を撃つは勝つ。官を移るは移らない。

居官有憂無傷也居家室多憂病歲大孰

官に居(い)ると憂(うれ)いを有(ゆう)するが、傷つかない。家に居(い)るは病に憂(うれ)えることが多い。実りの時は穀物が大いに熟(う)れる。

民疾疫歲中有兵不至見貴人請謁不吉

民は疫病にかかる。実りの時期中に戦いが有るがきわまらない。貴人に見(まみ)える、謁見(えっけん)を請(こ)うは、不吉。

行遇盜雨不雨霽不霽吉

行くと盗人に遇(あ)う。雨は降らない。雨がやむはやまず吉(きち)。

命曰吉上有仰下有柱病久不死系者不出

命名して曰く、吉上有仰下有柱、と。病は久(ひさ)しくしても死なない。囚人は出ない。

求財物買臣妾馬牛追亡人漁獵不得行不行來不來

財物を求め、臣妾、馬、牛を買う、逃げる人を追いかける、漁猟をするは、得られない。行くのは行かない。来るのは来ない。

擊盜不行行不見聞盜來不來徙官不徙

盗人を撃つは行かない、行くと現(あら)われない。盗人が来るを聞くは来ない。官を移るは移らない。

居家室見貴人吉歲大孰民疾疫歲中毋兵

家に居(い)る、貴人に見(まみ)えるは、吉(きち)。実りの時に大いに熟(う)れる。民は疫病にかかる。実りの時期中に戦いは無い。

行不遇盜雨不雨霽不霽大吉

行って盗人に遇(あ)わない。雨は降らない。雨がやむはやまず大吉(だいきち)。

命曰吉榆仰以占病不死系者不出

命名して曰く、吉榆仰、と。病を占うを以ってすると、死なない。囚人は出ない。

求財物買臣妾馬牛至不得行不行來不來

財物を求め、臣妾、馬、牛を買うは、きわめて得られない。行くのは行かない。来るのは来ない。

擊盜不行行不見聞盜來不來徙官不徙

盗人を撃つは行かない、行けば現われない。盗人が来るを聞くは来ない。官を移るは移らない。

居官家室見貴人吉歲孰歲中有疾疫毋兵

官、家に居(い)る、貴人に見(まみ)えるは、吉(きち)。実りの時に穀物が熟(う)れる。実りの時期中に疫病が有り、戦いは無い。

請謁追亡人不得漁獵至不得行不得

謁見(えっけん)を請(こ)い、逃げる人を追いかけるは、得られない。漁猟をするはきわめて得られない。行くは得られない。

行不遇盜雨霽不霽小吉

行って盗人に遇(あ)わない。雨が降る。雨がやむはやまないで小吉(しょうきち)。

命曰吉下有柱以占病病甚不環有瘳無死

命名して曰く、吉下有柱、と。病を占うを以ってすると、病は甚(はなは)だで、すぐに(環=還?)いえることはないが、死ぬことは無い。

系者出求財物買臣妾馬牛請謁追亡人漁獵不得

囚人は出る。財物を求め、臣妾、馬、牛を買う、謁見(えっけん)を請(こ)う、逃げる人を追いかける、漁猟をするは、得られない。

行來不來擊盜不合聞盜來來徙官居官吉不久

行く。来るのは来ない。盗人を撃つは合戦しない。盗人が来るを聞くは来る。官を移るは官に居(い)るが吉(きち)であるが久しくはない。

居家室不吉歲不孰民毋疾疫歲中毋兵

家に居(い)るは不吉。実りの時に穀物は熟(う)れない。民は疫病にかからない。実りの時期中に戦いは無い。

見貴人吉行不遇盜雨不雨霽小吉

貴人に見(まみ)えるは吉(きち)、行って盗人に遇(あ)わない。雨は降らない。雨がやんで小吉(しょうきち)。

命曰載所

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命曰載所以占病環有瘳無死系者出

命名して曰く、載所、と。病を占うを以ってすると、すぐに(環=還?)なおって死ぬことは無い。
囚人は出る。

求財物買臣妾馬牛請謁追亡人漁獵得行者行來者來

財物を求め、臣妾、馬、牛を買う、謁見(えっけん)を請(こ)う、逃げる人を追いかける、漁猟するは、得られる。行く者は行く。来る者は来る。

擊盜相見不相合聞盜來來徙官徙居家室憂

盗人をうつは相(あい)見(まみ)えて相(あい)合戦しない。盗人が来るを聞くを来る。官を移るは移る。家に居(い)るは憂(うれ)える。

見貴人吉歲孰民毋疾疫歲中毋兵

貴人に見(まみ)えるは吉(きち)。実りの時に穀物は熟(う)れる。民は疫病にかからない。実りの時期中に戦いは無い。

行不遇盜雨不雨霽霽吉

行って盗人に遇(あ)わない。雨は降らない。雨がやむはやんで吉(きち)。

命曰根格以占病者不死系久毋傷

命名して曰く、根格、と。病人を占うを以ってすると、死なない。囚人は久しくしても傷つかない。

求財物買臣妾馬牛請謁追亡人漁獵不得行不行來不來

財物を求める、臣妾、馬、牛を買う、謁見(えっけん)を請(こ)う、逃げる人を追いかける、漁猟をする、は不得。行くのは行く。来るのは来る。

擊盜盜行不合聞盜不來徙官不徙居家室吉歲稼中

盗人を撃つは、盗人が行って合戦しない。盗人が来ないと聞く。官を移るは移らない。家に居(い)るは吉(きち)。実りの時の穀物は中位に熟(う)れる。

民疾疫無死見貴人不得見行不遇盜雨不雨不吉

民は疫病にかかるが死ぬことは無い。貴人に見(まみ)えるは、見(まみ)えることができない。行って盗人に遇(あ)わない。雨は降らないで不吉。

命曰首仰足肣外高內下卜有憂無傷也行者不來

命名して曰く、首仰足肣外高內下、と。憂(うれ)いを有(ゆう)するを卜(うらな)うに傷は無い。
行く。来る者は来ない。

病久死求財物不得見貴人者吉

病は久しくして死ぬ。財物を求めても得られない。貴人に見(まみ)えるは吉(きち)。

命曰外高內下卜病不死有祟市買不得

命名して曰く、外高內下、と。病いを卜(うらな)うに死なないが、祟(たた)りが有る。市(いち)で買うは不得。

居官家室不吉行者不行來者不來系者久毋傷吉

官、家に居(い)るは不吉。行く者は行かない。来る者は来ない。囚人は久しいが傷つかないで吉(きち)。

命曰頭見足發有內外相應以占病者起系者出

命名して曰く、頭見足發有內外相応、と。病人を占うを以ってすると起き上がる。囚人は出る。

行者行來者來求財物得吉

行く者は行く。来る者は来る。財物を求めるは得られて吉(きち)。

命曰呈兆首仰足開以占病病甚死系者出有憂

命名して曰く、呈兆首仰足開、と。(同じ兆しの名が既出なので下に內高外下が付く?以下呈兆首仰足開內高外下と仮定して)病を占うを以ってすると、病は甚(はなは)だで死ぬ。囚人は出るが憂(うれ)いが有る。

求財物買臣妾馬牛請謁追亡人漁獵不得

財物を求める、臣妾、馬、牛を買う、謁見(えっけん)を請(こ)う、逃げる人を追いかける、漁猟をするは不得。

行不行來不來擊盜不合聞盜來來

行くのは行かない。来るのは来ない。盗人を撃つは合戦しない。盗人が来るを聞くを来る。

徙官居官家室不吉歲惡民疾疫無死歲中毋兵

官を移る。官、家に居(い)るは不吉。実りの時は悪い。民は疫病にかかっても死ぬことは無い。実りの時期中に戦いは無い。

見貴人不吉行不遇盜雨不雨霽不吉

貴人に見(まみ)えるは不吉。行って盗人に遇(あ)わない。雨は降らない。雨がやんで不吉。

命曰呈兆首仰足開外高內下以占病不死有外祟

命名して曰く、呈兆首仰足開外高內下、と。病を占うを以ってすると死なないが外の祟(たた)りが有る。

系者出有憂求財物買臣妾馬牛相見不會行行

囚人は出るが憂(うれ)いが有る。財物を求める、臣妾、馬、牛を買うは、相(あい)見(まみ)えて会さない。行くは行く。

來聞言不來擊盜勝聞盜來不來徙官居官家室見貴人不吉

来るは来ないと言うを聞く。盗人を撃つは勝つ。盗人が来るを聞くは来ない。官を移る、官、家に居(い)る、貴人に見(まみ)える、は不吉。

歲中民疾疫有兵請謁追亡人漁獵不得

実りは中位に熟(う)れる。民は疫病にかかり、戦いが有る。謁見(えっけん)を請(こ)う、逃げる人を追いかける、漁猟するは、不得。

聞盜遇盜雨不雨霽凶

盗人は盗人に遇(あ)うと聞く。雨は降らない。雨がやんで凶(きょう)。

命曰首仰足肣身折內外相應以占病病甚不死系者久不出

命名して曰く、首仰足肣身折內外相応、と。病を占うを以ってすると、病は甚(はなは)だしいが死なない。囚人は久しく出ない。

求財物買臣妾馬牛漁獵不得行不行來不來

才物を求める、臣妾、馬、牛を買う、漁猟をする、は不得。行くのは行かない。来るのは来ない。

擊盜有用勝聞盜來來徙官不徙居官家室不吉

盗人を撃つは勝ちにつかせることが有る。盗人が来るを聞くは来る。官を移るは移らない。官、家に居(い)るは不吉。

歲不孰民疾疫歲中有兵不至見貴人喜

実りは熟(う)れない。民は疫病にかかる。実りの時期中に戦いが有るがきわまらない。貴人に見(まみ)えれば喜ぶ。

請謁追亡人不得遇盜凶

謁見(えっけん)を請(こ)う、逃げる人を追いかける、は不得。盗人に遇(あ)って凶(きょう)。

命曰內格外垂行者不行來者不來病者死

命名して曰く、內格外垂、と。行く者は行かない。来る者は来ない。病人は死ぬ。

系者不出求財物不得見人不見大吉

囚人は出ない。財物を求めるは得られない。人に見(まみ)えるは見(まみ)えずが大吉(だいきち)。

命曰吉內外相應自橋榆仰上柱足肣以占病病甚不死

命名して曰く、吉內外相應自橋榆仰上柱足肣、と。病を占うを以ってすると、病は甚(はなは)だしいが死なない。

系久不抵罪求財物買臣妾馬牛請謁追亡人漁獵不得

囚人は罪にふれずに久しくする。財物を求め、臣妾、馬、牛を買う、謁見(えっけん)を請(こ)う、
逃げる人を追いかける、漁猟をする、は不得。

行不行來不來居官家室見貴人吉徙官不徙

行くのは行かない。来るのは来ない。官、家に居(い)る、貴人に見(まみ)える、は吉(きち)。
官を移るは移らない。

歲不大孰民疾疫有兵有兵不會行遇盜

実りの時には大いに熟(う)れない。民は疫病にかかり、戦いが有る。戦いが有っても会さない。
行って盗人に遇(あ)う。

聞言不見雨不雨霽霽大吉

見(まみ)えないと言うを聞く。雨は降らない。雨がやむはやんで大吉(だいきち)。

命曰頭仰足肣內外自垂卜憂病者甚不死

命名して曰く、頭仰足肣內外自垂、と。憂(うれ)いを卜(うらな)い、病人は甚(はなは)だしいが、死なない。

居官不得居行者行來者不來

官に居(い)るは居(い)ることを得られない。行く者は行く。来る者は来ない。

求財物不得求人不得吉

財物を求めるは得られない。人を求めても得られないで吉(きち)。

命曰吉下有柱

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命曰吉下有柱卜來者來卜日即不至未來卜病者過一日毋瘳死行者不行求財物不得系者出

命名して曰く、吉下有柱、と。(同じ兆し名が既出なので下=上? 以下、吉上有柱と仮定して)
来る者を卜(うらな)うは来るで、卜った日にはすなわち至らず、未(ま)だ来ない。病人を卜(うらな)うと一日を過ぎるとなおらずに死ぬ。行く者は行かない。財物を求めるは得られない。囚人は出る。

命曰吉內外自舉以占病者久不死系者久不出

命名して曰く、吉內外自舉、と。病人を占うを以ってすると、久しく死なない。囚人は久しく出ない。

求財物得而少行者不行來者不來見貴人見吉

財物を求め得られるが少ない。行く者は行かない。来る者は来ない。貴人に見(まみ)えるは見(まみ)えるが吉(きち)。

命曰內高外下疾輕足發求財物不得行者行病者有瘳系者不出來者來見貴人不見吉

命名して曰く、內高外下疾軽足発、と。財物を求めるは得られず。行く者は行く。病人は治(なお)る。
囚人は出ない。来る者は来る。貴人に見(まみ)えるは見(まみ)えずが吉(きち)。

命曰外格求財物不得行者不行來者不來系者不出不吉病者死求財物不得見貴人見吉

命名して曰く、外格、と。財物を求めるは得られない。行く者は行かない。来る者は来ない。囚人は出られず不吉。病人は死ぬ。財物を求めても得られず。貴人に見(まみ)えるは見(まみ)えるが吉(きち)。

命曰內自舉外來正足發[行]者行來者來求財物得病者久不死系者不出見貴人見吉

命名して曰く、自挙外来正足発、と。行く者は行く。来る者は来る。財物を求めるは得られる。病人は久しく死なない。囚人は出ない。貴人に見(まみ)えるは見(まみ)えるが吉(きち)。

此吉上柱外內自舉足肣以卜有求得病不死系者毋傷未出行不行來不來見人不見百事盡吉

ここに、吉上柱外內自舉足肣、と。求めるものが有るを卜(うらな)うを以ってすると、得られる。病人は死なない。囚人は傷つかないが未(ま)だ出られない。行くのは行かず。来るのは来ない。人に見(まみ)えるは見(まみ)えない。百事(ひゃくじ 多くの事)が吉(きち)。

此吉上柱外內自舉柱足以作以卜有求得病死環起系留毋傷環出行不行來不來見人不見百事吉可以舉兵

ここに、吉上柱外內自舉柱足以作、と。求めるものが有るを卜(うらな)うを以ってすると、得られる。病人は死なず(死=不死?)すぐに(環=還?)起き上がる。囚人は留(とど)められて傷つかず、すぐに(環=還?)出られる。行くのは行かない。来るのは来ない。人に見(まみ)えるは見(まみ)えない。百事(ひゃくじ 多くの事)が吉(きち)。挙兵(きょへい)を以ってすることがよい。

此挺詐有外以卜有求不得病不死數起系禍罪聞言毋傷行不行來不來

ここに、挺詐有外、と。求めるものが有るを卜うを以ってすると、得られない。病人は死なないでたびたび起き上がる。囚人は罪をわざわうが、傷つかないと言うを聞く。行くのは行かない。来るのは来ない.

此挺詐有內以卜有求不得病不死數起系留禍罪無傷出行不行來者不來見人不見

ここに挺詐有內、と。求めるものが有るを卜うを以ってすると、得られない。病人は死なず、たびたび起き上がる。囚人は留(とど)められて罪をわざわうが傷つかずに出られる。行くのは行かない。来る者は来ない。人に見(まみ)えるは見(まみ)えない。

此挺詐內外自舉以卜有求得病不死系毋罪行行來來田賈市漁獵盡喜

ここに挺詐內外自舉、と。求めるものが有るを卜うを以ってすると、得られる。病人は死なない。囚人は罪がなくなる。行くのは行く。来るのは来る。田の賈市(こし 商売)、漁猟、はことごとく喜ぶ。

此狐狢以卜有求不得病死難起系留毋罪難出可居宅可娶婦嫁女行不行來不來見人不見有憂不憂

ここに狐狢、と。求めるものが有る卜うを以ってすると、得られない。病人は死なない(死=不死?)が起き上がるのは難(むずか)しい。囚人は罪はないが留(とど)められて出るのは難(むずか)しい。宅に居(きょ)するがよい。婦人を娶(めと)ったり、娘を嫁がせたりするはよい。行くのは行かない。来るのは来ない。人に見(まみ)えるは見(まみ)えない。憂(うれ)いが有るは、憂(うれ)えない。

此狐徹

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此狐徹以卜有求不得病者死系留有抵罪行不行來不來見人不見言語定百事盡不吉

ここに狐徹と。求めるものが有るを卜うを以ってすると得られない。病人は死ぬ。囚人は罪にふれるを有して留(とど)められる。行くのは行かない。来るのは来ない。人に見(まみ)えるは見(まみ)えない。言語は定まる。百事(多くの事)はことごとく不吉。

此首俯足肣身節折以卜有求不得病者死系留有罪望行者不來行行來不來見人不見

ここに、首俯足肣身節折、と。求めるものが有るを卜うを以ってすると得られない。病人は死ぬ。囚人は有罪で留(とど)められる。行く者を望み見て来ない。行くのは行く。来るのは来ない。人に見(まみ)えるは見(まみ)えない。

此挺內外自垂以卜有求不晦病不死難起系留毋罪難出行不行來不來見人不見不吉

ここに挺內外自垂、と。求めるものが有るを卜うを以ってすると得られる(晦=悔?)。病人は死なないが起きるのが難しい。囚人は罪がなく留(とど)められるが、出るのが難しい。行くのは行かない。来るのは来ない。人を見(まみ)えるは見(まみ)えないは不吉。

此吉榆仰首俯以卜有求難得病難起不死系難出毋傷也可居家室以娶婦嫁女

ここに吉榆仰首俯、と。求めるものが有るを卜うを以ってすると得るのが難しい。病人は起きるのが難しいが死なない。囚人は出るのが難しいが傷つかない。家に居(い)て婦人を娶(めと)る、娘を嫁(とつ)がせるはよい。

此吉上柱載正身節折內外自舉以卜病者卜日不死其一日乃死

ここに吉上柱載正身節折內外自舉、と。病人を卜うを以ってすると、卜った日には死なない。その一日たってすなわち死ぬ。

此吉上柱足肣內自舉外自垂以卜病者卜日不死其一日乃死

ここに吉上柱足肣內自舉外自垂、と。病人を卜うを以ってすると、卜った日には死なないが、その一日すると死ぬ。

(為人病)首俯足詐有外無內病者占龜未已急死卜輕失大一日不死

人の病の為に卜い、首俯足詐有外無內、と。病人は亀を占い未(ま)だ終わらないうちに急死する。軽い者を卜うと大きく失い、一日では死なない。

首仰足肣以卜有求不得以系有罪人言語恐之毋傷行不行見人不見

首仰足肣、と。(この兆し名は既出なので仰=俛?) 求める者が有るを卜うを以ってすると、得られない。囚人を以ってすると罪を有するが、人の言語は恐らく傷つけない。行くのは行かない。人に見(まみ)えるは見(まみ)えない。

大論曰外者人也內者自我也

おおまかに論じて曰く、外とは人であり、内とは自我(じが)である。

外者女也內者男也首俛者憂大者身也小者枝也

外とは女であり、内とは男である。首俛(首がうつむく)とは憂(うれ)いである。大とは身であり、小とは枝(肢?)である。

大法病者足肣者生足開者死

おおまかな法則は、病人では、足肣(足が閉じる?肣=閉?)ものは生きて、足開(足が開く)者は死ぬ。

行者足開至足肣者不至

来る者(行=来?)は、足が開くと至り、足が肣(閉じる?)と至らない。

行者足肣不行足開行

行く者は、足が肣(閉じる?)と行かず、足が開くと行く。

有求足開得足肣者不得

求めるものが有ると、足開は得られ、足肣は得られず。

系者足肣不出開出

囚人は、足肣は出られず、開くと出られる。

其卜病也足開而死者內高而外下也

その病を卜うは、足開して死ぬのは、内が高くして外が低いのである」と。

今日で史記 亀策列伝は終わりです。明日からは史記 貨殖列伝に入ります。

史記 貨殖列伝 始め

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老子曰至治之極鄰國相望雞狗之聲相聞民各甘其食

老子曰く、「至治(しち)世の中が最もよくおさまること)の極(きわ)みは、隣国は相(あい)望(のぞ)まれ、鶏(にわとり)狗(いぬ)の声は相(あい)聞かれても、民は各(おのおの)がその食事をうまくし、

美其服安其俗樂其業至老死不相往來

その服を美しくし、その俗に安(やす)んじ、その仕事を楽しみ、老(お)いて死ぬに至るまで、相(あい)往き来しあわない」と。

必用此為務輓近世涂民耳目則幾無行矣

必ずこれを用いて務(つと)めを為そうと、輓近(ばんきん 近年)の世に、民の耳、目を塗(ぬ)りふさぐことはすなわちほとんどよい行いでは無いのである。

太史公曰夫神農以前吾不知已至若詩書所述虞夏以來

太史公曰く、「それ、神農以前は、吾(われ)は知らないだけであるが、詩、書のごとくに至って虞(帝舜の国)、夏(帝禹の国)以来を述(の)べるところは、

耳目欲極聲色之好口欲窮芻豢之味身安逸樂而心誇矜輓能之榮使俗之漸民久矣

耳、目は、声、色の好(よ)いものを極(きわ)めることを欲し、口は芻豢(すうかん ごちそう)の味を窮(きわ)めることを欲し、身(み)は逸楽(いつらく)に安(やす)んじ、しこうして、心(こころ)はすぐれた能力(輓=軼?)の栄(さか)えを自負(じふ)し、俗をして民を感化すること久しいのである。

雖戶說以眇論終不能化

よろこびをとざして崇高な論を以ってしたと雖(いえど)も、終いまで教化することはできない。

故善者因之其次利道之其次教誨之其次整齊之最下者與之爭

故(ゆえ)に善(よ)いのは、これに因(ちな)むことで、その次はこれに利(り)させる道であり、
その次はこれに教えさとすことであり、その次はこれをひとしくととのえることであり、最も下のものはこれと争うことである」と。

夫山西饒材竹穀纑旄玉石

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夫山西饒材竹穀纑旄玉石

それ、山西には材木、竹、穀物、纑(ちょま)、旄(からうし)、美しい石が多く、

山東多魚鹽漆絲聲色

山東には魚、塩、漆(うるし)、絹糸、声色、が多く、

江南出枏梓薑桂金錫連丹沙犀瑁珠璣齒革

江南には、枏(くすのき)、梓(あずさ)、薑(しょうが)、桂(かつら)、金、錫(すず)、鏈(金属名 連=鏈?)、丹沙(丹砂?)、犀(さい)、瑁(海亀の一種)、珠璣(しゅき 宝石)、歯、革が出て、

龍門碣石北多馬牛羊旃裘筋角

龍門、碣石の北には馬、牛、羊、旃裘(せんきゅう 毛織の服)、筋角が多く、

銅鐵則千里往往山出棋置此其大較也

銅、鉄はすなわち千里に出て、往々(おうおう)にして山は棋置(騏驥?(きき すぐれた馬))を出す。これがそのおおまかな比較(ひかく)である。

皆中國人民所喜好謠俗被服飲食奉生送死之具也

皆(みな)中国人民の好み喜ぶところの民間の流行歌、被服、飲食、生を奉(たてまつ)り、死を送(おく)るための道具である。

故待農而食之虞而出之工而成之商而通之

故(ゆえ)に農を待(ま)ってこれを食べ、虞(沼沢山林)にしてこれを産出し、工にしてこれをつくり、商にしてこれを流通させる。

此寧有政教發徵期會哉人各任其能竭其力以得所欲

これらは、どうして政教(せいきょう)が発されて約束を求めることが有ろうかな。人が各(おのおの)その能力に任(まか)せ、その力を尽(つ)くし、欲するところを得るを以ってする。

故物賤之徵貴貴之徵賤各勸其業樂其事

故(ゆえ)に物の安いは高くとりたて、、高いは安くとりたて、各(おのおの)その仕事を勧(すす)め、その事を楽しみ、

若水之趨下日夜無休時不召而自來不求而民出之

川が下におもむくがごとく、昼も夜も休む時無く、召(め)さなくとも自ら来て、求めなくとも民がこれを出し、

豈非道之所符而自然之驗邪

どうして道の一致するところでないだろうか、そして、自然の効能(こうのう)ではないだろうか。

《周書》曰農不出則乏其食

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《周書》曰農不出則乏其食

周書曰く、「農が出なければその食を乏(とぼ)しくし、

工不出則乏其事

工が出なければその事を乏(とぼt)しくし、

商不出則三寶絕虞不出則財匱少

商が出なければ三宝が絶え、虞(山林沼沢)が出さなけれ財はとぼしくなる。

財匱少而山澤不辟矣

財がとぼしくなれば、山沢は開拓されない。

此四者民所衣食之原也

この四者(農、工、商、虞)は民が衣食するところの源(みなもと)である。

原大則饒原小則鮮

源が大きければ多く、源が小さければ少ない。

上則富國下則富家

上はすなわち国を富まし、下はすなわち家を富ます。

貧富之道莫之奪予

貧富の道は、奪(うば)ったり与(あた)えたりするのではなく、

而巧者有餘拙者不足

しこうして、巧(たく)みな者が余(あま)りを有(ゆう)し、拙(つたな)い物が足(た)らなくなる。

故太公望封於營丘地澙鹵

故(ゆえ)に太公望呂尚は営丘に封ぜられて、地は塩分を含んだ地で、

人民寡於是太公勸其女功

人民は少なく、ここに於いて太公望呂尚はその女性の仕事を勧(すす)め、

極技巧通魚鹽

技巧(ぎこう)を極(きわ)め、魚、塩を流通させ、

則人物歸之繦至而輻湊

すなわち、人や物(もの)はこれに帰(き)して、統治(繦(きょう)=経(きょう)?)がきわまり物が四方からより集まった。

故齊冠帶衣履天下海岱之斂袂而往朝焉

故(ゆえ)に斉(太公望呂尚の封国名)は天下に冠帯衣履し、海、岱の間(あいだ)は袂(たもと)を整えて、あいさつしに往(い)ったのである。

其後齊中衰管子修之設輕重九府

その後、斉中が衰(おとろ)えたとき、管子(管仲)がこれを修(おさ)め、九府に軽重を設(もう)け、

則桓公以霸九合諸侯一匡天下

すなわち斉桓公姜小白は諸侯の旗頭(はたがしら)となるを以ってし、諸侯を何度も会合させ、一(いつ)に天下を匡(ただ)した。

而管氏亦有三歸位在陪臣

しこうして管氏(管仲)もまた三帰(一説では三つの諸侯から夫人を娶ったこと)を有(ゆう)し、地位は陪臣(ばいしん)に在(あ)って、

富於列國之君

列国の君主より富(と)んでいた。

是以齊富彊至於威宣也

ここに斉を以って富強が威(い)にきわまり、広く行き渡ったのである。

故曰倉廩實而知禮節

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故曰倉廩實而知禮節衣食足而知榮辱

故(ゆえ)に曰く、「倉廩(そうりん 米ぐら)が満ちて、礼節(れいせつ)を知り、衣食が足(た)りて栄辱(えいじょく)を知る」と。

禮生於有而廢於無故君子富好行其

礼は有(ゆう)より生まれ、無(む)に廃(はい)される。故(ゆえ)に君子は富(と)んで、その徳(とく)を行うことを好(この)み、

小人富以適其力淵深而魚生之

取るに足らない者が富(と)めば、その力(ちから)におもむくを以ってする。淵(ふち)が深くして、魚がここに生(しょう)じ、

山深而獸往之人富而仁義附焉

山が深くして獣(けもの)がここに往(ゆ)き、人が富(と)んで、仁、義が附(つ)きしたがうのである。

富者得埶益彰失埶則客無所之以而不樂

富む者は勢(いきお)いを得てますます彰(あきら)かになり、勢(いきお)いを失えば、客は行くところが無くなり、すなわち楽しまずを以ってして、

夷狄益甚諺曰千金之子不死於市

夷狄がますます甚(はなは)だしくなる。諺(ことわざ)に曰く、「千金の子は市に死せず」と。

此非空言也故曰天下熙熙皆為利來

これは空言(そらごと)では非(あら)ざるなり。故(ゆえ)に曰く、「天下が熙熙(きき)としておだやかになれば、皆(みな)利(り)を為しに来て、

天下壤壤皆為利往夫千乘之王萬家之侯

天下は壤壤(じょうじょう)と入り乱れ、皆(みな)利(り)を為しに往(い)く」と。それ、千乗の王、万家の侯、

百室之君尚猶患貧而況匹夫編戶之民乎

百家の君でもなお貧しさに患(うれ)えるのに、況(いわん)や、匹夫、編戸の民ではなおのことではないか。

昔者越王句踐困於會稽之上

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昔者越王句踐困於會稽之上乃用范蠡計然

昔、越王句踐が会稽のほとりで困(こま)り、そこで范蠡(人名)、計然(人名)を用いた。

計然曰知斗則修備時用則知物

計然曰く、「ひしゃくを知れば、備(そな)えを修(おさ)め、用いるをうかがえば、物を知る。

二者形則萬貨之情可得而觀已故歲在金穰

二者が形になれば、万(よろず)の貨の情況は得てして観(み)ることができるのみ。故(ゆえ)に実りの時は金に在(あ)り、豊穣(ほうじょう)は、

水毀木饑火旱

水に在(あ)り、毀(こぼ)つは、木に在(あ)り、飢饉(ききん)は火、旱魃(かんばつ)に在(あ)る。

旱則資舟水則資車物之理也

日照りになれば、舟を役ににたて、洪水になれば、車を役にたてるは、物の理(り)である。

六歲穰六歲旱十二歲一大饑

六年ごとに豊穣(ほうじょう)になり、六年ごとに日照りになり、十二年に一度大きな飢饉(ききん)になる。

夫糶二十病農九十病末

それ、穀物を売り出すに、二十で農を病(や)み、九十で商売を病(や)む。

末病則財不出農病則草不辟矣

商売が病(や)めば、品物が出ず、農が病めば草は除(のぞ)かれず、

上不過八十下不減三十則農末俱利

上が八十を過ぎず、下が三十を減(へ)らなければ、すなわち、農、商はともに利(り)して、

平糶齊物關市不乏治國之道也

穀物を売り出すを平(たいら)かにして物をととのえ、関の市(いち)は乏(とぼ)しくならず、国を治(おさ)める道である。

積著之理務完物無息幣

適(つりあう 著(ちゃく)=適(ちゃく)?)の道理を積(つ)み、物をまっとうさせることに務(つと)め、貨幣を休ませること無かれ。

以物相貿易腐敗而食之貨勿留無敢居貴

物を以って相(あい)貿易(ぼうえき)し、腐敗させて食糧の品が留(とど)まることなく、敢(あ)えて値段を高く据(す)えること無かれ。

論其有餘不足則知貴賤

その有余(ゆうよ)、不足(ふそく)を論(ろん)ずれば、すなわち高い、安いを知る。

貴上極則反賤賤下極則反貴

高値が上に極(きわ)まれば、反(かえ)して安くなり、安値が下に極(きわ)まれば反(かえ)して高くなる。

貴出如糞土賤取如珠玉財幣欲其行如流水

高ければ糞土(ふんど)の如(ごと)く出して、安ければ珠玉(しゅぎょく)の如(ごと)く取る。
財幣はその流水の如(ごと)く行くことを欲する」と。

修之十年國富厚賂戰士士赴矢石

これを修(おさ)めて十年、国は富(と)み、賄賂(わいろ)を(呉に)厚(あつ)くし、士を戦わせ、士は戦場に赴(おもむ)き、

如渴得飲遂報彊吳觀兵中國稱號五霸

のどが渇(かわ)いて飲むを得たが如(ごと)く、遂(つい)に強い呉に報(むく)い、戦いを中国に観(み)て、称(しょう)して、五覇、と号(ごう)した。

范蠡既雪會稽之恥乃喟然而嘆曰

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范蠡既雪會稽之恥乃喟然而嘆曰

范蠡がすでに会稽の恥(はじ)を雪(すす)ぎ、すなわち喟然(きぜん)としてため息をついて曰く、

計然之策七越用其五而得意

「計然の策(さく)は七つで、越はその五つを用いて、意を得た。

既已施於國吾欲用之家

すでに国に施(ほどこ)され、吾(われ)はこれを家に用いることを欲する」と。

乃乘扁舟浮於江湖變名易姓

そこで小舟(こぶね)に乗って江湖に浮かび、名を変え姓名を変えて、

適齊為鴟夷子皮之陶為朱公

斉におもむいて鴟夷子皮と為り、陶に行って朱公と為った。

朱公以為陶天下之中諸侯四通貨物所交易也

朱公は、陶は天下の中心で、諸侯は四方から通じ、貨物が交易(こうえき)するところであると思った。

乃治產積居與時逐而不責於人

そこで、産物を治(おさ)め積みたくわえた。好機とともに出して、人を責(せ)めとがめなかった。

故善治生者能擇人而任時

故(ゆえ)に善(よ)く生業(なりわい)を治(おさ)めたのは、人を択(えら)んで、好機に委(ゆだ)ねることができたからである。

十九年之中三致千金再分散與貧交疏昆弟

十九年のうちで三度、千金を成しとげ、二度、分散して貧しく交際の疎遠(そえん)な兄弟に与えた。

此所謂富好行其者也後年衰老而聽子孫

これは、所謂(いわゆる)富んでその徳を行うことを好む者である。後年、衰(おとろ)え老(お)いて、子や孫にまかせ、

子孫修業而息之遂至巨萬故言富者皆稱陶朱公

子、孫は業を修(おさ)めてこれを増やし、遂(つい)に巨万に至った。故(ゆえ)に富(とみ)を言う者は、皆(みな)陶朱公を称(たた)えた。

子贛既學於仲尼退而仕於衛

子贛(子貢)がすでに仲尼(孔子)に学び、退(しりぞ)いて衛に仕(つか)え、

廢著鬻財於曹魯之

曹、魯の間で品物を鬻(ひさ)いで売って儲(もう)け(著(ちょ)=儲(ちょ)?)、

七十子之徒賜最為饒益

七十人の弟子の仲間で、最も豊かと為るを賜(たまわ)った。

原憲不厭糟糠匿於窮巷

原憲は粗末な食べ物にも厭(いと)わず、貧しい巷(ちまた)に隠れたが、

子貢結駟連騎束帛之幣以聘享諸侯

子貢は四頭立て馬車を結んで、騎士を連(つら)ね、束(たば)ねた絹の贈り物は、諸侯に訪問して献上するを以ってし、

所至國君無不分庭與之抗禮

至ったところの国君で、庭を分けてこれと対等の礼をしない者は無かった。

夫使孔子名布揚於天下者子貢先後之也

それ、孔子の名声をして天下に広く称揚(しょうよう)されたのは、子貢がこれを助け導いたからである。

此所謂得埶而益彰者乎

これは、所謂(いわゆる)、勢(いきお)いを得て益々(ますます)彰(あきら)かになった者だろうか。

白圭周人也

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白圭周人也

白圭は周の人である。

當魏文侯時李克務盡地力

魏文侯魏斯の時に、李克が土地の生産力を尽(つ)くすことに務(つと)めるに当たり、

而白圭樂觀時變故人棄我取人取我與

しこうして、白圭は時の変化を観(み)ることを楽しみ、故(ゆえ)に人が棄(す)てたら我(われ)が取り、人が取ったら我(われ)が与(あた)えた。

夫歲孰取穀予之絲漆

それ、実りの時が豊かであれば穀物を取って、絹糸、漆(うるし)を与(あた)え、

繭出取帛絮予之食

繭(まゆ)が捨てられたら、絹織物、真綿(まわた)を取って、食物を与(あた)えた。

太陰在卯穰明歲衰惡

太陰は卯(う)の年に在(あ)り、豊穣になり、明くる年の実りは衰え悪くなる。

至午旱明歲美

午(うま)の年に至ると日照りになり、明くる年の実りは立派になる。

至酉穰明歲衰惡

酉(とり)の年に至ると豊穣になり、明くる年の実りは衰え悪くなる。

至子大旱明歲美有水

子(ね)の年に至ると、大日照りになり、明くる年の実りは立派になるが、洪水が有る。

至卯積著率歲倍

卯(う)の年に至ると、積み貯(たくわ)える(著(ちょ)=貯(ちょ)?)はおおむね実りの時の倍(ばい)になる。

欲長錢取下穀長石斗取上種

長銭(質の良い銭?価値のある銭?)で嘉穀(かこく 下(か)=嘉(か)?)を取り、
長石斗(質の良い石のひしゃく?)で上等の種(たね)を取ることを欲した。

能薄飲食忍嗜欲節衣服

飲食を質素にし、嗜欲(しよく)を忍(しの)び、衣服を節約(せつやく)することができ、

與用事僮仆同苦樂趨時若猛獸摯鳥之發

事に用いられる僮僕(召使)と苦楽(くらく)を同じにして、好機に走るは、猛獣(もうじゅう)、猛鳥(もうちょう)の発するがごとくであった。

故曰吾治生產猶伊尹呂尚之謀孫吳用兵商鞅行法是也

故(ゆえ)に曰く、「吾(われ)が生産を治(おさ)めるは、ちょうど伊尹、呂尚の謀(はかりごと)、孫子、呉子の用兵(ようへい)、商鞅の行法がこれである。

是故其智不足與權變勇不足以決斷

これ故(ゆえ)にその智(ち)が権変にあずかるに足(た)らず、勇気が決断を以ってするに足(た)らず、

仁不能以取予彊不能有所守

仁が取ったり与(あた)えたりするを以ってすることができず、強さが守るところを有することができなければ、

雖欲學吾術終不告之矣

吾(わ)が術を学ぶことを欲すると雖(いえど)も、終(しま)いまでこれに告げることはないだろう」と。

蓋天下言治生祖白圭白圭其有所試矣

思うに天下が治生を言うは白圭を祖(そ)とした。白圭がその積みたくわえる(試(し)=積(し)?)ところが有れば、

能試有所長非茍而已也

その長ずるところを有して積みたくわえる(試(し)=積(し)?)ことができ、かりそめにしてそれのみではないのである。

猗頓用盬鹽起

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猗頓用盬鹽起而邯鄲郭縱以鐵冶成業與王者埒富

猗頓は盬塩(こえん あらしお)を用いて身を起こした。しこうして邯鄲(趙の都)の周囲で 鉄冶(鉄鉱石を溶かし鉄をとりだすこと)を以って産業を成(な)すを思うままにして、王者と富(とみ)をひとしくした。

烏氏倮牧及眾斥賣求奇物獻遺戎王

烏氏倮は牧畜(ぼくちく)をして、多くなるに及んで、売りはらって、すぐれた絹物を求め、ひそかに戎王に謹(つつし)んで物を贈った。

戎王什倍其償與之畜畜至用谷量馬牛

戎王はその返礼を十倍にして、これに狗(いぬ 畜は休と音が同じで休(く)=狗(く)?)を与え、
狗(いぬ)は至って谷で用いられ、馬、牛を数(かぞ)えた。

秦始皇帝令倮比封君以時與列臣朝請

秦始皇帝嬴政は烏氏倮に令して封君の比(たぐ)いにさせ、時を以って列臣とともに朝請させた。

而巴[蜀]寡婦清其先得丹穴

しこうして巴(地方名)の寡婦(かふ やもめ)の清は、その先祖は丹(赤色の鉱物)の穴を得て、

而擅其利數世家亦不訾

しこうしてその利(り)を思うままにすること数世代、家もまたうらまれなかった。

清寡婦也能守其業用財自衛不見侵犯

清は寡婦(かふ)であり、その仕事を守ることができ、財を用いて自衛(じえい)して、侵犯(しんぱん)される目にはあわなかった。

秦皇帝以為貞婦而客之為筑女懷清臺

秦始皇帝嬴政は貞婦と為すを以ってこれを客にまねき、女懐清台を築(きず)きつくった。

夫倮鄙人牧長清窮鄉寡婦

それ、烏氏倮はいなかもので牧畜が長(た)け、清は郷(さと)に窮(きゅう)した寡婦(かふ)であるのに、

禮抗萬乘名顯天下豈非以富邪

礼は万乗に匹敵(ひってき)して、名が天下に顕(あきら)かになったのは、どうして、富(とみ)を以ってしてで非(あら)ざるだろうか。

漢興海內為一開關梁弛山澤之禁

漢が興(おこ)って、海内が一つに為り、関梁を開(ひら)き、山沢の禁を弛(ゆる)め、

是以富商大賈周流天下交易之物莫不通

ここに、富商、大商人を以って天下にあまねく流れさせ、交易(こうえき)の物で通じないものはなくなり、

得其所欲而徙豪傑諸侯彊族於京師

その欲するところを得て、しこうして、豪傑(ごうけつ)、諸侯、強族を京師(みやこ)に移した。

關中自汧雍以東至河華膏壤沃野千里

関中は汧(川名)、雍(川名)以東より河、華に至るまで、肥沃な土地が千里、

自虞夏之貢以為上田而公劉適邠

虞(帝舜の国)、夏(帝禹の国)の貢(税法の名)より上田(じょうでん)と為すを以ってして、公劉(后稷の曾孫)は邠におもむき、

大王王季在岐文王作豐

大王(古公亶父)、王季(季歴)は岐に在住し、周文王姫昌は豐(都市名)を作り、

武王治鎬故其民猶有先王之遺風

周武王姫発は鎬(都市名)を治(おさ)め、故(ゆえ)にその民は猶(なお)先王の遺風(いふう)を有(ゆう)し、

好稼穡殖五穀地重重為邪

稼穡(かしょく 農事)を好み、五穀を育て、地は尊ばれ、くりかえし作られたのだろうか。

及秦文(孝)[]繆居雍隙隴蜀之貨物而多賈

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及秦文(孝)[]繆居雍隙隴蜀之貨物而多賈

秦文公、秦徳公、秦繆公は雍に居住し、隴蜀の貨物をうかがって商人が多い。

獻(孝)公徙櫟邑櫟邑北卻戎翟東通三晉亦多大賈

秦献公は櫟邑に移り、櫟邑は北に戎翟をうかがい、東に三晋に通じ、また大商人が多い。。

(武)[孝]昭治咸陽因以漢都長安諸陵

秦孝公、昭公は咸陽で治(おさ)め、因りて漢都、長安の諸陵を以って、

四方輻湊并至而會地小人眾故其民益玩巧而事末也

四方が輻湊(ふくそう)して並び至りて会(かい)した。地は小さく人が多く、故(ゆえ)にその民はますますなれ親しみ、ぬけめがなくなり商売を事(こと)としたのである。

南則巴蜀巴蜀亦沃野地饒炧薑丹沙石銅鐵竹木之器

南に進めば巴蜀で、巴蜀もまた肥沃(ひよく)な土地で、土地には炧、薑(しょうが)、丹沙(丹砂)、石、銅、鉄、竹、木の器、

南御滇僰僰僮西近邛笮笮馬旄牛

南御滇僰,僰僮が豊かである。西は邛笮が近く、笮馬、旄牛がいる。

然四塞棧道千里無所不通唯褒斜綰轂其口以所多易所鮮

然(しか)るに四方が塞(ふさ)がり、桟道(さんどう)が千里に通じないところは無く、唯(ただ)褒斜道(褒(川名)斜(川名))はその出口に轂(車輪のこしき)をつないで、豊富にあるところを以って足らないところと交換した。

天水隴西北地上郡與關中同俗然西有羌中之利

天水、隴西、北地、上郡は関中と同俗(どうぞく)で、然(しか)るに西に羌(異民族名)中の利(り)が有り、

北有戎翟之畜畜牧為天下饒

北に戎翟(異民族名)の狗(いぬ 畜(休と同音でおそらく、く、と発音する)=狗(く)? 例えば翟犬など)が有り、畜牧は天下を豊かにした。

然地亦窮險唯京師要其道

然(しか)るに地もまたきわめて険阻(けんそ)で、ただ京師(みやこ)だけがその道を要(かなめ)にした。

故關中之地於天下三分之一而人眾不過什三

故(ゆえ)に関中(咸陽?)の地は天下に於いて三つに分けた一つ(雍、櫟邑、咸陽の三つ?)で、しこうして、人の多さは三割に過ぎず、

然量其富什居其六

然(しか)るにその富(とみ)を量(はか)るに、十のうちその六を占(し)めた。

昔唐人都河東殷人都河內周人都河南

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昔唐人都河東殷人都河內周人都河南

昔、唐人は河東を都(みやこ)にし、殷人は河内を都(みやこ)にし、周人は河南を都(みやこ)にした。

夫三河在天下之中若鼎足王者所更居也

それ、三河は天下の中心に在(あ)って、鼎(かなえ)の足(三本足)のごとく、王者が居を改めたところである。

建國各數百千歲土地小狹民人眾

建国して各(おのおの)数百千年、土地は小さく狭(せま)く、人民は多く、

都國諸侯所聚會故其俗纖儉習事

都(みやこ)は国、諸侯が集会するところで、故(ゆえ)にその俗(ぞく)はつつましく事(こと)に習熟した。

楊平陽陳西賈秦翟北賈種代

楊(河東)、平陽(河東)、陳(河南)は西に秦、翟に商(あきな)い、北に種、代に商(あきな)った。

種代石北也地邊胡數被寇

種、代は石北であり、地は胡(きょうど)にとなりあい、たびたび寇(こう 集団でうばいとること)を被(こうむ)った。

人民矜懻忮好氣任俠為姦不事農商

人民はうらんでそばだち、気を好(この)み、任侠(にんきょう)で不正を為し、農、商を事(こと)としなかった。

然迫近北夷師旅亟往中國委輸時有奇羨

然るに北夷に迫(せま)り近く、軍隊がしばしば往(ゆ)き、中国が輸送を委(ゆだ)ねた時、すぐれたあまりものを有(ゆう)した。

其民羯羠不均自全晉之時固已患其僄悍

その民は羯羠(どなり傷つけ?)して均(ひと)しくせず、全晋の時より固(もと)よりすでにその僄悍(すばやくて荒々しいこと)さを患(うれ)いており、

而武靈王益之其謠俗猶有趙之風也

しこうして趙武霊王はますますこれに悩(なや)み、その俗(ぞく)を歌うは猶(なお)趙のならわしを有したのである。

故楊平陽陳掾其得所欲

故(ゆえ)に楊(河東)、平陽(河東)、陳(河南)はその間(あいだ)に拠(よ)り欲するところを得た。

溫軹西賈上黨北賈趙中山

溫(河内)、軹(河内)は西に上党に商(あきな)い、北に趙、中山に商(あきな)った。

中山地薄人眾猶有沙丘紂淫地餘民

中山の地は草木が密生 し、人が多く、猶(なお)沙丘には紂(帝紂の)淫(殷?)地の残った民(たみ)がおり、

民俗懁急仰機利而食

民俗は気ぜわしく、機利(きり 機会に乗じて利益を得ること)を仰(あお)いで食した。

丈夫相聚游戲悲歌慨起則相隨椎剽

丈夫(一人前の男子)は相(あい)集まって遊戯をし、悲しい歌をうたってなげき、たちあがれば相(あい)まにまにたたきおびやかした。

休則掘冢作巧姦冶多美物為倡優

休めば、墳墓を掘りかえし、巧(たく)みに不正に金属を鋳(い)て作り、美しい物を多(た)とし、役者と為った。

女子則鼓鳴瑟跕屣

女子ならば、瑟(おおごと)を鳴(な)らし、はきものをつっかけにはいて歩き、

游媚貴富入後宮遍諸侯

貴富に遊びへつらい、後宮に入るは、諸侯に遍(あまね)くした。

然邯鄲亦漳河之一都會也

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然邯鄲亦漳河之一都會也

然(しか)るに邯鄲(趙の都)もまた漳、河の間(あいだ)の一都会である。

北通燕涿南有鄭衛

北に燕、涿に通じ、南に鄭、衛が有る。

鄭衛俗與趙相類然近梁魯微重而矜節

鄭、衛の俗(ぞく)は趙と相(あい)類(るい)し、然(しか)るに梁、魯に近いので、かすかに礼節を重んじうやまう。

濮上之邑徙野王野王好氣任俠衛之風也

濮上の邑は野王(河内)に移り、野王(河内)は気を好み任侠(にんきょう)で、衛の気質である。

夫燕亦勃碣之一都會也

それ、燕もまた勃、碣の間(あいだ)の一都会である。

南通齊趙東北邊胡

南に斉、趙に通じ、東北に胡(匈奴)にとなりあう。

上谷至遼東地踔遠人民希數被寇

上谷は遼東に至り、地ははるか遠く、人民は希(まれ)で、たびたび寇(こう 集団でうばいとること)を被(こうむ)った。

大與趙代俗相類而民雕捍少慮有魚鹽棗栗之饒

おおまかに趙、代の俗(ぞく)と相(あい)類似し、しこうして民はずるがしこく荒々しく慮(おもんばか)りが少ない。魚、塩、棗(なつめ)、栗(くり)の豊饒(ほうじょう)が有る。

北鄰烏桓夫餘東綰穢貉朝鮮真番之利

北に烏桓、夫餘に隣(とな)りあい、東に穢貉、朝鮮、真番の利(り)に結(むす)ぶ。

洛陽東賈齊魯南賈梁楚

洛陽は東に斉、魯に商(あきな)い、南に梁、楚に商(あきな)う。

故泰山之陽則魯其陰則齊

故(ゆえ)に泰山の陽であれば魯、その陰であれば斉である。

齊帶山海膏壤千里宜桑麻人民多文綵布帛魚鹽

斉は山、海を帯(お)び、肥沃な土地が千里、桑(くわ 絹)、麻(あさ)を宜(よろ)しくして、人民は模様や彩(いろど)りのある織物、魚、塩を多(た)とした。

臨菑亦海岱之一都會也

臨菑もまた、海、岱の間(あいだ)の一都会である。

其俗緩闊達而足智好議論地重難動搖

その俗(ぞく)はのんびりして心がひろくこせこせしておらず、しこうして、智(ち)に足(た)り、議論を好み、地は尊ばれ、動揺(どうよう)し難(がた)く、

怯於眾鬬勇於持刺

衆闘(大勢の闘い)に怯(おび)え、刃物を持つことにおいては勇(いさ)み、

故多劫人者大國之風也其中具五民

故(ゆえ)に人をおびやかして制する者が多く、大国の気質である。その中は五民(士農工商賈)を具(そな)える。

《周書》曰農不出則乏其食

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《周書》曰農不出則乏其食

周書曰く、「農が出なければその食を乏(とぼ)しくし、

工不出則乏其事

工が出なければその事を乏(とぼt)しくし、

商不出則三寶絕虞不出則財匱少

商が出なければ三宝が絶え、虞(山林沼沢)が出さなけれ財はとぼしくなる。

財匱少而山澤不辟矣

財がとぼしくなれば、山沢は開拓されない。

此四者民所衣食之原也

この四者(農、工、商、虞)は民が衣食するところの源(みなもと)である。

原大則饒原小則鮮

源が大きければ多く、源が小さければ少ない。

上則富國下則富家

上はすなわち国を富まし、下はすなわち家を富ます。

貧富之道莫之奪予

貧富の道は、奪(うば)ったり与(あた)えたりするのではなく、

而巧者有餘拙者不足

しこうして、巧(たく)みな者が余(あま)りを有(ゆう)し、拙(つたな)い物が足(た)らなくなる。

故太公望封於營丘地澙鹵

故(ゆえ)に太公望呂尚は営丘に封ぜられて、地は塩分を含んだ地で、

人民寡於是太公勸其女功

人民は少なく、ここに於いて太公望呂尚はその女性の仕事を勧(すす)め、

極技巧通魚鹽

技巧(ぎこう)を極(きわ)め、魚、塩を流通させ、

則人物歸之繦至而輻湊

すなわち、人や物(もの)はこれに帰(き)して、統治(繦(きょう)=経(きょう)?)がきわまり物が四方からより集まった。

故齊冠帶衣履天下海岱之斂袂而往朝焉

故(ゆえ)に斉(太公望呂尚の封国名)は天下に冠帯衣履し、海、岱の間(あいだ)は袂(たもと)を整えて、あいさつしに往(い)ったのである。

其後齊中衰管子修之設輕重九府

その後、斉中が衰(おとろ)えたとき、管子(管仲)がこれを修(おさ)め、九府に軽重を設(もう)け、

則桓公以霸九合諸侯一匡天下

すなわち斉桓公姜小白は諸侯の旗頭(はたがしら)となるを以ってし、諸侯を何度も会合させ、一(いつ)に天下を匡(ただ)した。

而管氏亦有三歸位在陪臣

しこうして管氏(管仲)もまた三帰(一説では三つの諸侯から夫人を娶ったこと)を有(ゆう)し、地位は陪臣(ばいしん)に在(あ)って、

富於列國之君

列国の君主より富(と)んでいた。

是以齊富彊至於威宣也

ここに斉を以って富強が威(い)にきわまり、広く行き渡ったのである。

故曰倉廩實而知禮節

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故曰倉廩實而知禮節衣食足而知榮辱

故(ゆえ)に曰く、「倉廩(そうりん 米ぐら)が満ちて、礼節(れいせつ)を知り、衣食が足(た)りて栄辱(えいじょく)を知る」と。

禮生於有而廢於無故君子富好行其

礼は有(ゆう)より生まれ、無(む)に廃(はい)される。故(ゆえ)に君子は富(と)んで、その徳(とく)を行うことを好(この)み、

小人富以適其力淵深而魚生之

取るに足らない者が富(と)めば、その力(ちから)におもむくを以ってする。淵(ふち)が深くして、魚がここに生(しょう)じ、

山深而獸往之人富而仁義附焉

山が深くして獣(けもの)がここに往(ゆ)き、人が富(と)んで、仁、義が附(つ)きしたがうのである。

富者得埶益彰失埶則客無所之以而不樂

富む者は勢(いきお)いを得てますます彰(あきら)かになり、勢(いきお)いを失えば、客は行くところが無くなり、すなわち楽しまずを以ってして、

夷狄益甚諺曰千金之子不死於市

夷狄がますます甚(はなは)だしくなる。諺(ことわざ)に曰く、「千金の子は市に死せず」と。

此非空言也故曰天下熙熙皆為利來

これは空言(そらごと)では非(あら)ざるなり。故(ゆえ)に曰く、「天下が熙熙(きき)としておだやかになれば、皆(みな)利(り)を為しに来て、

天下壤壤皆為利往夫千乘之王萬家之侯

天下は壤壤(じょうじょう)と入り乱れ、皆(みな)利(り)を為しに往(い)く」と。それ、千乗の王、万家の侯、

百室之君尚猶患貧而況匹夫編戶之民乎

百家の君でもなお貧しさに患(うれ)えるのに、況(いわん)や、匹夫、編戸の民ではなおのことではないか。
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