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范陽令乃使蒯通見武信君曰

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范陽令乃使蒯通見武信君曰

范陽令はそこで蒯通をして陳(張楚)武信君武臣に見(まみ)えさせて、曰く、

足下必將戰勝然後略地攻得然後下城

足下は必ずまさに戦勝して然(しか)る後に地を略取し、攻め得て然(しか)る後城邑を下(くだ)さんとしていますが、

臣竊以為過矣誠聽臣之計

わたしはひそかに過(あやま)ちだと思います。誠(まこと)にわたしの計(はか)りごとを聴き入れれば、

可不攻而降城不戰而略地

攻めずに城邑を降(くだ)し、戦わずに地を略取することができ、

傳檄而千里定可乎

ふれぶみを伝えれば千里(せんり)が平定されますが、よろしいですか?」と。

武信君曰何謂也

陳(張楚)武信君武臣曰く、「どういうことを謂(い)ったのか?」と。

蒯通曰今范陽令宜整頓其士卒以守戰者也

蒯通曰く、「今、范陽令がまさにその士卒を整頓(せいとん)して守る戦いを以ってせんとするのは、

怯而畏死貪而重富貴故欲先天下降

死に怯(おび)えて畏(おそ)れ、富貴を貪(むさぼ)って尊(とうと)ぶ故(ゆえ)に天下に先(さき)んじて降(くだ)ることを欲していますが、

畏君以為秦所置吏誅殺如前十城也

君(武信君)が秦が置いたところの役人と為すを以って、前の十の城邑の如(ごと)く誅殺されることを畏(おそ)れているからです。

然今范陽少年亦方殺其令自以城距君

然(しか)るに今、范陽の少年たちもまたまさにその令を殺さんとしており、自(みずか)ら城邑を以って君(武信君)を遠ざけるでしょう。

君何不齎臣侯印拜范陽令

君(武信君)はどうしてわたしに侯印を持って行かせ、范陽令に官をさずけないのですか。

范陽令則以城下君少年亦不敢殺其令

范陽令はすぐに城邑を以って君(武信君)に下(くだ)り、少年たちもまた敢(あ)えてその令を殺さないでしょう。

令范陽令乘朱輪華轂使驅馳燕趙郊

范陽令に令して朱塗りの車輪(しゃりん)に華(はな)の形の轂(こしき 車輪の軸を受けるところ)
の馬車に乗(の)せ、燕、趙の町はずれを(ふれぶみをかかげて)駆(か)け馳(は)せさせるのです。

燕趙郊見之皆曰此范陽令先下者也

燕、趙の町外れはこれを見て、皆(みな)曰く、この范陽令は先んじて下(くだ)った者であると。

即喜矣燕趙城可毋戰而降也

すなわち喜(よろこ)び、燕、趙の城邑は戦わずに降(くだ)ることをよしとするのです。

此臣之所謂傳檄而千里定者也

これがわたしの、ふれぶみを伝えて千里(せんり)を定めると謂(い)ったところのものであります」と。

武信君從其計因使蒯通賜范陽令侯印

陳(張楚)武信君武臣はその計(はか)りごとに従(したが)い、蒯通をつかわすに因(よ)りて、范陽令に侯印を賜(たまわ)らせた。

趙地聞之不戰以城下者三十餘城

趙の地はこれを聞き、戦わずに城邑を以って下(くだ)る者は三十余城であった。

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