太史公曰語曰千金之裘非一狐之腋也
太史公曰く、「語りて曰く、千金の毛皮の衣服は、たった一匹の狐(きつね)の腋(わき)の下の毛皮だけでは非(あら)ざるなり、
臺榭之榱非一木之枝也
高殿(たかどの)の垂木(たるき)は、たった一本の木の枝(えだ)だけでは非(あら)ざるなり、
三代之際非一士之智也
三代(夏、殷、周)の際(きわ)には、たった一人の士の智恵(ちえ)だけでは非(あら)ざるなり、とは、
信哉夫高祖起微細定海內
信(まこと)かな。それ、漢高祖劉邦は微細(びさい)に起(お)こして、海内を平定し、
謀計用兵可謂盡之矣
謀計(ぼうけい)、用兵(ようへい)は力の限りを尽(つ)くしたと謂(い)うべきや。
然而劉敬脫輓輅一說建萬世之安智豈可專邪
然(しか)しながら、劉敬は車の牽引(けんいん)を脱(ぬ)け出して、一たび説(と)いて、万世(ばんせい)の安定を建(た)てた。智恵(ちえ)はどうして専(もっぱ)らにするべきだろうか。
叔孫通希世度務制禮進退與時變化卒為漢家儒宗
叔孫通は世にも希(まれ)に務(つと)めをはかり、礼(れい)を時(とき)とともに変化させて進めたり退(しりぞ)かせたりして制定(せいてい)し、とうとう、漢家の儒学の総本家と為った。
大直若詘道固委蛇蓋謂是乎
はなはだ真っ直(す)ぐなものは曲がっているがごとし。道理(どうり)は固(もと)よりうねうねと曲がりながら進む、とは、思うにこれを謂(い)うのであろうか」と。
今日で史記 劉敬叔孫通列伝は終わりです。明日からは史記 季布欒布列伝に入ります。
太史公曰く、「語りて曰く、千金の毛皮の衣服は、たった一匹の狐(きつね)の腋(わき)の下の毛皮だけでは非(あら)ざるなり、
臺榭之榱非一木之枝也
高殿(たかどの)の垂木(たるき)は、たった一本の木の枝(えだ)だけでは非(あら)ざるなり、
三代之際非一士之智也
三代(夏、殷、周)の際(きわ)には、たった一人の士の智恵(ちえ)だけでは非(あら)ざるなり、とは、
信哉夫高祖起微細定海內
信(まこと)かな。それ、漢高祖劉邦は微細(びさい)に起(お)こして、海内を平定し、
謀計用兵可謂盡之矣
謀計(ぼうけい)、用兵(ようへい)は力の限りを尽(つ)くしたと謂(い)うべきや。
然而劉敬脫輓輅一說建萬世之安智豈可專邪
然(しか)しながら、劉敬は車の牽引(けんいん)を脱(ぬ)け出して、一たび説(と)いて、万世(ばんせい)の安定を建(た)てた。智恵(ちえ)はどうして専(もっぱ)らにするべきだろうか。
叔孫通希世度務制禮進退與時變化卒為漢家儒宗
叔孫通は世にも希(まれ)に務(つと)めをはかり、礼(れい)を時(とき)とともに変化させて進めたり退(しりぞ)かせたりして制定(せいてい)し、とうとう、漢家の儒学の総本家と為った。
大直若詘道固委蛇蓋謂是乎
はなはだ真っ直(す)ぐなものは曲がっているがごとし。道理(どうり)は固(もと)よりうねうねと曲がりながら進む、とは、思うにこれを謂(い)うのであろうか」と。
今日で史記 劉敬叔孫通列伝は終わりです。明日からは史記 季布欒布列伝に入ります。