季布為河東守孝文時人有言其賢者
漢中郎将季布は河東守と為った。漢孝文帝劉恒の時、人のその賢(かしこ)さを言う者が有り、
孝文召欲以為御史大夫
漢孝文帝劉恒は召(め)し寄せて漢御史大夫と為すを以ってしようと欲した。
復有言其勇使酒難近
またその勇(いさ)ましさを言う者が有り、酒をして近づけ難(がた)くなる、と。
至留邸一月見罷季布因進曰
至りて、邸に留(とど)まること一ヶ月、中止された。河東守季布は因(よ)りて進み出て曰く、
臣無功竊寵待罪河東
「わたしは手柄無くひそかに寵愛され、河東に登用されました。
陛下無故召臣此人必有以臣欺陛下者
陛下が故(ゆえ)なくわたしを召(め)したのは、これ、人の、わたしを以って陛下を欺(あざむ)く者がきっと有ったからでしょう。
今臣至無所受事罷去此人必有以毀臣者
今、わたしが至り、事(こと)をさずけるところ無く、やめて去(さ)らせるは、これ、人の、わたしをそしるを以ってする者がきっと有ったからでしょう。
夫陛下以一人之譽而召臣
それ、陛下はたった一人の誉(ほ)め言葉を以ってしてわたしを召(め)しよせ、
一人之毀而去臣臣恐天下有識聞之有以闚陛下也
たった一人のそしりの言葉を以ってしてわたしを去(さ)らせ、わたしは、天下の有る者がこれを聞いてさとり、陛下をいざなうことを以ってすることが有るのを恐(おそ)れます」と。
上默然慚良久曰
上(漢孝文帝劉恒)は黙然(もくぜん)とだまりこんで恥(は)じ、しばらくして曰く、
河東吾股肱郡故特召君耳布辭之官
「河東は吾(われ)の手足となる郡で、故(ゆえ)に特別に君を召(め)し寄せただけだ」と。
河東守季布は朝廷を辞去(じきょ)した。
漢中郎将季布は河東守と為った。漢孝文帝劉恒の時、人のその賢(かしこ)さを言う者が有り、
孝文召欲以為御史大夫
漢孝文帝劉恒は召(め)し寄せて漢御史大夫と為すを以ってしようと欲した。
復有言其勇使酒難近
またその勇(いさ)ましさを言う者が有り、酒をして近づけ難(がた)くなる、と。
至留邸一月見罷季布因進曰
至りて、邸に留(とど)まること一ヶ月、中止された。河東守季布は因(よ)りて進み出て曰く、
臣無功竊寵待罪河東
「わたしは手柄無くひそかに寵愛され、河東に登用されました。
陛下無故召臣此人必有以臣欺陛下者
陛下が故(ゆえ)なくわたしを召(め)したのは、これ、人の、わたしを以って陛下を欺(あざむ)く者がきっと有ったからでしょう。
今臣至無所受事罷去此人必有以毀臣者
今、わたしが至り、事(こと)をさずけるところ無く、やめて去(さ)らせるは、これ、人の、わたしをそしるを以ってする者がきっと有ったからでしょう。
夫陛下以一人之譽而召臣
それ、陛下はたった一人の誉(ほ)め言葉を以ってしてわたしを召(め)しよせ、
一人之毀而去臣臣恐天下有識聞之有以闚陛下也
たった一人のそしりの言葉を以ってしてわたしを去(さ)らせ、わたしは、天下の有る者がこれを聞いてさとり、陛下をいざなうことを以ってすることが有るのを恐(おそ)れます」と。
上默然慚良久曰
上(漢孝文帝劉恒)は黙然(もくぜん)とだまりこんで恥(は)じ、しばらくして曰く、
河東吾股肱郡故特召君耳布辭之官
「河東は吾(われ)の手足となる郡で、故(ゆえ)に特別に君を召(め)し寄せただけだ」と。
河東守季布は朝廷を辞去(じきょ)した。