丞相乃再拜曰嘉鄙野人乃不知將軍幸教
漢丞相申屠嘉はそこで再拝(さいはい)して曰く、「わたしはいなか者で、すなわち知りませんでしたが、将軍が幸いにも教えてくださいました」と。
引入與坐為上客
引き入れてともに座(ざ)し、上客と為した。
盎素不好鼂錯鼂錯所居坐盎去
呉相袁盎は素(もと)より鼂錯を好(この)まず、鼂錯が座(ざ)に居(お)るところ、袁盎は去り、
盎坐錯亦去兩人未嘗同堂語
袁盎が座(すわ)れば、鼂錯もまた去(さ)り、両人(りょうにん)は未(いま)だ嘗(かつ)て堂を同じくして語ったことがなかった。
及孝文帝崩孝景帝即位鼂錯為御史大夫
漢孝文帝劉恒が崩じ、漢孝景帝劉啓が即位するに及んで、鼂錯は漢御史大夫と為った。
使吏案袁盎受吳王財物抵罪詔赦以為庶人
役人をして、呉相袁盎が呉王劉濞の財物(ざいぶつ)をさずかったことを取調べさせ、罪にふれて、詔(みことのり)して赦(ゆる)して庶人と為すを以ってした。
吳楚反聞鼂錯謂丞史曰
呉、楚の反乱が聞こえ、漢御史大夫鼂錯が丞史に謂(い)った曰く、
夫袁盎多受吳王金錢專為蔽匿
「それ、袁盎は呉王の金銭を多く受け取り、もっぱら、隠蔽(いんぺい)して、
言不反今果反欲請治盎宜知計謀
叛(そむ)かないと言った。今、果(は)たして叛(そむ)き、袁盎が知っているはずである計謀(けいぼう)を取り調べることを請(こう)を欲する」と。
丞史曰事未發治之有絕
丞史曰く、「事が未(ま)だ発せられないうちにこれを取り調べれば絶(た)やすことが有っただろう。
今兵西鄉治之何益且袁盎不宜有謀
今、兵は西に向っており、これを取り調べてもどうして益(えき)するであろうか。且(か)つ袁盎が謀(はかりごと)を有するはずがありません」と。
鼂錯猶與未決人有告袁盎者袁盎恐夜見竇嬰
漢御史大夫鼂錯はぐずぐすとして未(ま)だ決めないうちに、人の袁盎に告げる者が有り、袁盎は恐れ、夜に魏其侯竇嬰(景帝の母の従兄の子)に見(まみ)え、
為言吳所以反者願至上前口對狀
呉が叛(そむ)いた理由の言(げん)を為し、上(漢孝景帝劉啓)の前に至って状況を口頭(こうとう)で応(こた)えることを願った。
竇嬰入言上上乃召袁盎入見
魏其侯竇嬰は入って言上(ごんじょう)し、上(漢孝景帝劉啓)はそこで、袁盎を召し寄せて入見させた。
漢丞相申屠嘉はそこで再拝(さいはい)して曰く、「わたしはいなか者で、すなわち知りませんでしたが、将軍が幸いにも教えてくださいました」と。
引入與坐為上客
引き入れてともに座(ざ)し、上客と為した。
盎素不好鼂錯鼂錯所居坐盎去
呉相袁盎は素(もと)より鼂錯を好(この)まず、鼂錯が座(ざ)に居(お)るところ、袁盎は去り、
盎坐錯亦去兩人未嘗同堂語
袁盎が座(すわ)れば、鼂錯もまた去(さ)り、両人(りょうにん)は未(いま)だ嘗(かつ)て堂を同じくして語ったことがなかった。
及孝文帝崩孝景帝即位鼂錯為御史大夫
漢孝文帝劉恒が崩じ、漢孝景帝劉啓が即位するに及んで、鼂錯は漢御史大夫と為った。
使吏案袁盎受吳王財物抵罪詔赦以為庶人
役人をして、呉相袁盎が呉王劉濞の財物(ざいぶつ)をさずかったことを取調べさせ、罪にふれて、詔(みことのり)して赦(ゆる)して庶人と為すを以ってした。
吳楚反聞鼂錯謂丞史曰
呉、楚の反乱が聞こえ、漢御史大夫鼂錯が丞史に謂(い)った曰く、
夫袁盎多受吳王金錢專為蔽匿
「それ、袁盎は呉王の金銭を多く受け取り、もっぱら、隠蔽(いんぺい)して、
言不反今果反欲請治盎宜知計謀
叛(そむ)かないと言った。今、果(は)たして叛(そむ)き、袁盎が知っているはずである計謀(けいぼう)を取り調べることを請(こう)を欲する」と。
丞史曰事未發治之有絕
丞史曰く、「事が未(ま)だ発せられないうちにこれを取り調べれば絶(た)やすことが有っただろう。
今兵西鄉治之何益且袁盎不宜有謀
今、兵は西に向っており、これを取り調べてもどうして益(えき)するであろうか。且(か)つ袁盎が謀(はかりごと)を有するはずがありません」と。
鼂錯猶與未決人有告袁盎者袁盎恐夜見竇嬰
漢御史大夫鼂錯はぐずぐすとして未(ま)だ決めないうちに、人の袁盎に告げる者が有り、袁盎は恐れ、夜に魏其侯竇嬰(景帝の母の従兄の子)に見(まみ)え、
為言吳所以反者願至上前口對狀
呉が叛(そむ)いた理由の言(げん)を為し、上(漢孝景帝劉啓)の前に至って状況を口頭(こうとう)で応(こた)えることを願った。
竇嬰入言上上乃召袁盎入見
魏其侯竇嬰は入って言上(ごんじょう)し、上(漢孝景帝劉啓)はそこで、袁盎を召し寄せて入見させた。