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釋之從行登虎圈

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釋之從行登虎圈

漢謁者僕射張釈之は行幸(ぎょうこう)に従(したが)って、虎圈に登(のぼ)った。

上問上林尉諸禽獸簿十餘問尉左右視盡不能對

上(漢孝文帝劉恒)は上林尉に諸(もろもろ)の禽獣(鳥やけもの)の帳簿を問(と)うた。十あまりが問(と)われたが、上林尉、左右は視(み)て、ことごとく応(こた)えることができなかった。

虎圈嗇夫從旁代尉對上所問禽獸簿甚悉

虎圈の嗇夫(低い官)が傍(かたわ)らより上林尉に代(か)わって上(漢孝文帝劉恒)が問(と)うたところの禽獸簿を甚(はなは)だ悉(ことごと)く応(こた)え、

欲以觀其能口對響應無窮者

その口頭で応(こた)えるは響応(きょうおう)して言い窮(きわま)ること無くできるのをみせようと欲した。

文帝曰吏不當若是邪?尉無

漢孝文帝劉恒曰く、「役人はまさにこのごとくであるべきではないのか?尉は頼(たよ)りにならない」と。

乃詔釋之拜嗇夫為上林令

そこ漢謁者僕射張釈之に詔(みことのり)して、嗇夫に官をさずけて上林令と為そうとした。

釋之久之前曰陛下以絳侯周勃何如人也

漢謁者僕射張釈之はしばらくして前に進み出て曰く、「陛下は絳侯周勃はどのような人だと思いますか?」と。

上曰長者也又復問

上(漢孝文帝劉恒)曰く、「長者である」と。またふたたび問(と)うた、

東陽侯張相如何如人也上復曰

「東陽侯張相如はどのような人だと思いますか?」と。上(漢孝文帝劉恒)はふたたび曰く、

長者釋之曰夫絳侯東陽侯稱為長者

「長者だ」と。漢謁者僕射張釈之曰く、「それ、絳侯、東陽侯は長者として称(たた)えられましたが、

此兩人言事曾不能出口豈斅此嗇夫諜諜利口捷給哉

この二人は事(こと)を言うにすなわち弁(べん)が達者(たっしゃ)ではありません。どうしてこの嗇夫の諜諜(ちょうちょう)と弁(べん)が利(き)き次から次へと敏速にしゃべることを教えられましょうかな。

且秦以任刀筆之吏吏爭以亟疾苛察相高

まさに秦は刀筆(文字を書き写すだけの小役人)の役人に任(まか)せるを以って、役人は(書写の)すばやさ、細かくて明らかなさまをを以って相(あい)高めることを争(あらそ)いました。

然其敝徒文具耳無惻隱之實以故不聞其過

然(しか)るにその、むだに文具(ぶんぐ)をぼろぼろにするだけで、いたみあわれむことの真心(まごころ)がありませんでした。故(ゆえ)を以ってその過(あやま)ちを申し上げず、

陵遲而至於二世天下土崩

だんだんと衰(おとろ)えて秦二世皇帝嬴胡亥に至って、天下は土がくずれるようにもろく崩(くず)れたのです。

今陛下以嗇夫口辯而超遷之臣恐天下隨風靡靡

今、陛下は嗇夫の口弁を以ってしてこれを順序を飛び越えて上の官位に遷(うつ)せば、わたしは天下が風のまにまに靡靡(びび)として

爭為口辯而無其實

口弁を為して争(あらそ)うことになびき、その真心(まごころ)を無(な)くすことを恐(おそ)れます。

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