有廝養卒謝其舍中曰吾為公說燕
召使の養卒(役職名)がおり、その兵舎の中に謝(しゃ)して曰く、「吾(われ)は公(こう)たちの為に燕を説(と)き、
與趙王載歸舍中皆笑曰
趙王(趙王武臣)とともに馬車に載(の)せて帰しましょう」と。兵舎の中の者は皆(みな)笑って曰く、
使者往十餘輩輒死若何以能得王
「使者が行くこと十余回つづいたが、ことごとく死んだ。なんじが何ものを以って王(趙王武臣)を得ることができようか」と。
乃走燕壁燕將見之問燕將曰
そこで燕の塞(とりで)に走った。燕将軍がこれを見て、燕将軍に問(と)うた、曰く、
知臣何欲燕將曰若欲得趙王耳
「わたしが何を欲しているか知っていますか?」と。燕将軍曰く、「なんじは趙王(趙王武臣)を得ることを欲しているだけだ」と。
曰君知張耳陳餘何如人也
曰く、「君は張耳、陳余はどのような人物が知っていますか?」と。
燕將曰賢人也曰
燕将軍曰く、「賢人(けんじん)なり」と。曰く、
知其志何欲曰欲得其王耳
「その志(こころざし)は何を欲しているか知っていますか?」と。曰く、「その王(趙王武臣)を得ることを欲しているだけだ」と。
趙養卒乃笑曰君未知此兩人所欲也
趙の養卒はそこで笑って曰く、「君は未(ま)だこの二人の欲するところを知っていません。
夫武臣張耳陳餘杖馬箠下趙數十城
それ、武臣、張耳、陳余は馬のむちを杖(つえ)にして趙の数十の城邑を下(くだ)し、
此亦各欲南面而王豈欲為卿相終己邪
これ、また各(おのおの)は南面して王になることを欲しており、どうして卿相に為って己(おのれ)を
終えることを欲するでしょうか。
夫臣與主豈可同日而道哉顧其勢初定
それ、臣下と君主はどうして同じ立場で語(かた)ることができましょうかな。思うにその勢いが定まったばかりで、
未敢參分而王且以少長先立武臣為王
未(ま)だ敢(あ)えて三分して王にならないのです。まさに少し長ずるを以って先(さき)に武臣を立てて王と為し、
以持趙心今趙地已服此兩人亦欲分趙而王
趙の心をにぎるを以ってしたのです。今、趙の地はすでに服し、この二人もまた趙を分けて王になることを欲していますが、
時未可耳今君乃囚趙王
時機が未(ま)だよくないだけです。今、君はすなわち趙王武臣を囚(とら)え、
此兩人名為求趙王實欲燕殺之
この二人は名目は趙王武臣を求めようとしていますが、実質は燕がこれ(趙王武臣)を殺すことを欲しています。
此兩人分趙自立夫以一趙尚易燕
この二人が趙を分けて自ら立てば、それ、一つの趙を以ってしても尚(なお)燕をあなどっているのに、
況以兩賢王左提右挈而責殺王之罪
況(いわん)や、二人の賢(かしこ)い王を以ってたがいに手を引き合って助け、しこうして、王を殺した罪を責(せ)めれば、
滅燕易矣燕將以為然
燕を滅(ほろ)ぼすのは容易(ようい)です」と。燕将軍はその通りだと思い、
乃歸趙王養卒為御而歸
そこで趙王武臣を帰し、趙養卒は御者(ぎょしゃ)と為って帰った。
召使の養卒(役職名)がおり、その兵舎の中に謝(しゃ)して曰く、「吾(われ)は公(こう)たちの為に燕を説(と)き、
與趙王載歸舍中皆笑曰
趙王(趙王武臣)とともに馬車に載(の)せて帰しましょう」と。兵舎の中の者は皆(みな)笑って曰く、
使者往十餘輩輒死若何以能得王
「使者が行くこと十余回つづいたが、ことごとく死んだ。なんじが何ものを以って王(趙王武臣)を得ることができようか」と。
乃走燕壁燕將見之問燕將曰
そこで燕の塞(とりで)に走った。燕将軍がこれを見て、燕将軍に問(と)うた、曰く、
知臣何欲燕將曰若欲得趙王耳
「わたしが何を欲しているか知っていますか?」と。燕将軍曰く、「なんじは趙王(趙王武臣)を得ることを欲しているだけだ」と。
曰君知張耳陳餘何如人也
曰く、「君は張耳、陳余はどのような人物が知っていますか?」と。
燕將曰賢人也曰
燕将軍曰く、「賢人(けんじん)なり」と。曰く、
知其志何欲曰欲得其王耳
「その志(こころざし)は何を欲しているか知っていますか?」と。曰く、「その王(趙王武臣)を得ることを欲しているだけだ」と。
趙養卒乃笑曰君未知此兩人所欲也
趙の養卒はそこで笑って曰く、「君は未(ま)だこの二人の欲するところを知っていません。
夫武臣張耳陳餘杖馬箠下趙數十城
それ、武臣、張耳、陳余は馬のむちを杖(つえ)にして趙の数十の城邑を下(くだ)し、
此亦各欲南面而王豈欲為卿相終己邪
これ、また各(おのおの)は南面して王になることを欲しており、どうして卿相に為って己(おのれ)を
終えることを欲するでしょうか。
夫臣與主豈可同日而道哉顧其勢初定
それ、臣下と君主はどうして同じ立場で語(かた)ることができましょうかな。思うにその勢いが定まったばかりで、
未敢參分而王且以少長先立武臣為王
未(ま)だ敢(あ)えて三分して王にならないのです。まさに少し長ずるを以って先(さき)に武臣を立てて王と為し、
以持趙心今趙地已服此兩人亦欲分趙而王
趙の心をにぎるを以ってしたのです。今、趙の地はすでに服し、この二人もまた趙を分けて王になることを欲していますが、
時未可耳今君乃囚趙王
時機が未(ま)だよくないだけです。今、君はすなわち趙王武臣を囚(とら)え、
此兩人名為求趙王實欲燕殺之
この二人は名目は趙王武臣を求めようとしていますが、実質は燕がこれ(趙王武臣)を殺すことを欲しています。
此兩人分趙自立夫以一趙尚易燕
この二人が趙を分けて自ら立てば、それ、一つの趙を以ってしても尚(なお)燕をあなどっているのに、
況以兩賢王左提右挈而責殺王之罪
況(いわん)や、二人の賢(かしこ)い王を以ってたがいに手を引き合って助け、しこうして、王を殺した罪を責(せ)めれば、
滅燕易矣燕將以為然
燕を滅(ほろ)ぼすのは容易(ようい)です」と。燕将軍はその通りだと思い、
乃歸趙王養卒為御而歸
そこで趙王武臣を帰し、趙養卒は御者(ぎょしゃ)と為って帰った。