李良已定常山還報趙王復使良略太原
趙将李良がすでに常山を平定し、還(かえ)り報告した。趙王武臣はふたたび李良をして太原を略取させた。
至石邑秦兵塞井陘未能前
石邑に至り、秦兵が井陘を塞(ふさ)ぎ、未(ま)だ前に進むことができないうちに、
秦將詐稱二世使人遺李良書不封
秦将軍が偽(いつわ)って秦二世皇帝と称(しょう)して人をして趙将李良に封をしていない書状を送らせた。
曰良嘗事我得顯幸
曰く、「李良は嘗(かつ)て我(われ)に仕(つか)え、顕(あきら)かなる幸(お気に入り)を得ていた。
良誠能反趙為秦赦良罪貴良
李良が誠(まこと)に秦の為(ため)に趙にそむくことができれば、李良の罪を赦(ゆる)し、李良を高い身分にする」と。
良得書疑不信乃還之邯鄲益請兵
趙将李良は書状を得ると、疑い信じなかった。そこで還(かえ)って邯鄲(趙の都)に行き、ますます兵を請(こ)おうとした。
未至道逢趙王姊出飲
まだ(邯鄲に)至らないうちに、道で趙王武臣の姉が外出して飲んだのに出逢った。
從百餘騎李良望見以為王
百余りの騎兵を従(したが)えていた。李良は遠くから望(のぞ)み見て、趙王武臣だと思い、
伏謁道旁王姊醉不知其將使騎謝李良
道の傍(かたわ)らに伏(ふ)して申し上げた。趙王武臣の姉は酔(よ)っていて、その将軍と知らず、
騎兵をして趙将李良に謝(しゃ)した。
李良素貴起慚其從官從官有一人曰
趙将李良はもともと地位が高く、起き上がって、その(趙将李良の)従官(じゅうかん)に恥ずかしく思った。従官の有る者が一人、曰く、
天下畔秦能者先立
「天下は秦に叛(そむ)き、才能のある者は先んじて立っています。
且趙王素出將軍下今女兒乃不為將軍下車
まさに趙王武臣はもともとは将軍(李良)の下(した)から出た者で、今、おなごがすなわち、将軍の為(ため)に馬車を下(お)りませんでした。
請追殺之李良已得秦書固欲反趙
追いかけてこれを殺させてください」と。趙将李良はすでに秦の書状を得ており、固(もと)より趙にそむこうと欲していたが、
未決因此怒遣人追殺王姊道中
未(ま)だ決めないうちに、このように怒(おこ)るに因(よ)りて、人を遣(つか)わして追いかけさせ趙王武臣の姉を道中で殺した。
乃遂將其兵襲邯鄲邯鄲不知竟殺武臣邵騷
そこで、遂(つい)にその兵を率(ひき)いて邯鄲(趙の都)を襲(おそ)った。邯鄲(趙の都)は知らず、とうとう趙王武臣、趙左丞相邵騷を殺した。
趙人多為張耳陳餘耳目者
趙人は趙右丞相張耳、趙大将軍陳余の為(ため)に、耳、目となる者が多く、
以故得脫出收其兵得數萬人客有說張耳曰
脱出をかたく得るを以ってした。その兵を収(おさ)め、数万人を得た。食客の有る者が趙右丞相張耳に説(と)いた、曰く、
兩君羈旅而欲附趙難獨立趙後
「両君(趙王武臣、趙左丞相邵騷)は旅(たび)して趙を附(つ)けることを欲したが難(むずか)しかった。単に旧趙の子孫(しそん)を立てていれば、
扶以義可就功乃求得趙歇
助け支(ささ)えるに義(ぎ)を以ってし、功(こう)に就(つ)くことができただろうに」と。
そこで趙歇(旧趙国の王(趙氏)の子孫)を得ることを求め、
立為趙王居信都李良進兵擊陳餘
立てて趙王と為し、信都に居(きょ)した。趙将李良は兵を進め、趙大将軍陳余を撃(う)ったが、
陳餘敗李良李良走歸章邯
趙大将軍陳余は趙将李良を破(やぶ)り、趙将李良は秦将章邯に走り帰属(きぞく)した。
趙将李良がすでに常山を平定し、還(かえ)り報告した。趙王武臣はふたたび李良をして太原を略取させた。
至石邑秦兵塞井陘未能前
石邑に至り、秦兵が井陘を塞(ふさ)ぎ、未(ま)だ前に進むことができないうちに、
秦將詐稱二世使人遺李良書不封
秦将軍が偽(いつわ)って秦二世皇帝と称(しょう)して人をして趙将李良に封をしていない書状を送らせた。
曰良嘗事我得顯幸
曰く、「李良は嘗(かつ)て我(われ)に仕(つか)え、顕(あきら)かなる幸(お気に入り)を得ていた。
良誠能反趙為秦赦良罪貴良
李良が誠(まこと)に秦の為(ため)に趙にそむくことができれば、李良の罪を赦(ゆる)し、李良を高い身分にする」と。
良得書疑不信乃還之邯鄲益請兵
趙将李良は書状を得ると、疑い信じなかった。そこで還(かえ)って邯鄲(趙の都)に行き、ますます兵を請(こ)おうとした。
未至道逢趙王姊出飲
まだ(邯鄲に)至らないうちに、道で趙王武臣の姉が外出して飲んだのに出逢った。
從百餘騎李良望見以為王
百余りの騎兵を従(したが)えていた。李良は遠くから望(のぞ)み見て、趙王武臣だと思い、
伏謁道旁王姊醉不知其將使騎謝李良
道の傍(かたわ)らに伏(ふ)して申し上げた。趙王武臣の姉は酔(よ)っていて、その将軍と知らず、
騎兵をして趙将李良に謝(しゃ)した。
李良素貴起慚其從官從官有一人曰
趙将李良はもともと地位が高く、起き上がって、その(趙将李良の)従官(じゅうかん)に恥ずかしく思った。従官の有る者が一人、曰く、
天下畔秦能者先立
「天下は秦に叛(そむ)き、才能のある者は先んじて立っています。
且趙王素出將軍下今女兒乃不為將軍下車
まさに趙王武臣はもともとは将軍(李良)の下(した)から出た者で、今、おなごがすなわち、将軍の為(ため)に馬車を下(お)りませんでした。
請追殺之李良已得秦書固欲反趙
追いかけてこれを殺させてください」と。趙将李良はすでに秦の書状を得ており、固(もと)より趙にそむこうと欲していたが、
未決因此怒遣人追殺王姊道中
未(ま)だ決めないうちに、このように怒(おこ)るに因(よ)りて、人を遣(つか)わして追いかけさせ趙王武臣の姉を道中で殺した。
乃遂將其兵襲邯鄲邯鄲不知竟殺武臣邵騷
そこで、遂(つい)にその兵を率(ひき)いて邯鄲(趙の都)を襲(おそ)った。邯鄲(趙の都)は知らず、とうとう趙王武臣、趙左丞相邵騷を殺した。
趙人多為張耳陳餘耳目者
趙人は趙右丞相張耳、趙大将軍陳余の為(ため)に、耳、目となる者が多く、
以故得脫出收其兵得數萬人客有說張耳曰
脱出をかたく得るを以ってした。その兵を収(おさ)め、数万人を得た。食客の有る者が趙右丞相張耳に説(と)いた、曰く、
兩君羈旅而欲附趙難獨立趙後
「両君(趙王武臣、趙左丞相邵騷)は旅(たび)して趙を附(つ)けることを欲したが難(むずか)しかった。単に旧趙の子孫(しそん)を立てていれば、
扶以義可就功乃求得趙歇
助け支(ささ)えるに義(ぎ)を以ってし、功(こう)に就(つ)くことができただろうに」と。
そこで趙歇(旧趙国の王(趙氏)の子孫)を得ることを求め、
立為趙王居信都李良進兵擊陳餘
立てて趙王と為し、信都に居(きょ)した。趙将李良は兵を進め、趙大将軍陳余を撃(う)ったが、
陳餘敗李良李良走歸章邯
趙大将軍陳余は趙将李良を破(やぶ)り、趙将李良は秦将章邯に走り帰属(きぞく)した。