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建元二年郎中令王臧以文學獲罪

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建元二年郎中令王臧以文學獲罪

建元二年、漢郎中令王臧が文学を以って罪を獲(え)た。

皇太后以為儒者文多質少今萬石君家不言而躬行

皇太后(太皇太后竇氏)は儒者はうわべをかざることが多く、質正さが少なく、今、万石君(石奮)家は
言わずして自分みずから行うと思い、

乃以長子建為郎中令少子慶為內史

そこで、長男の石建を以って漢郎中令と為し、末子の石慶を漢内史と為した。

建老白首萬石君尚無恙建為郎中令

漢郎中令石建は老(お)いて白髪頭になったが、万石君(石奮)は尚(なお)つつがなかった。石建が漢郎中令に為ると、

每五日洗沐歸謁親入子舍竊問侍者

五日ごとに足を洗(あら)い、髪(かみ)を洗(あら)って、帰り親(おや)に謁見し、子(こ)の家に入るとき、ひそかに侍者に問(と)い、

取親中帬廁牏身自浣滌復與侍者

親(おや)のもすそ、はだじゅばんを取(と)らせ、身(み)自(みずか)ら洗(あら)いすすぎ、また侍者に与(あた)え、

不敢令萬石君知以為常建為郎中令

敢(あ)えて万石君(石奮)に知られないようにして、常(つね)に為すを以ってした。石建が漢郎中令と為って、

事有可言屏人恣言極切

事(こと)に言うべきが有れば、人ばらいして思うままに言い、極(きわ)めて切実(せつじつ)で、

至廷見如不能言者是以上乃親尊禮之

朝廷に至って見(まみ)えるときは、言うことができない者の如(ごと)くであった。ここに上(漢孝武帝劉徹)を以ってすなわちみずから尊(とうと)びこれに礼(れい)した。

萬石君徙居陵裏內史慶醉歸入外門不下車

万石君(石奮)は居(きょ)を陵里に移(うつ)した。漢内史石慶が酔(よ)って帰り、外門に入ったとき車から下(お)りなかった。

萬石君聞之不食慶恐肉袒請罪不許

万石君(石奮)はこれを聞いて、食事をとらなかった。漢内史石慶は恐(おそ)れ、肌脱ぎして罪を請(こ)うたが許(ゆる)されなかった。

舉宗及兄建肉袒萬石君讓曰

一族及び兄の漢郎中令石建を挙(あ)げて肌脱ぎすると、万石君(石奮)はしかり責めて曰く、

內史貴人入閭里里中長老皆走匿

「内史は貴人で、村里に入れば、里中の長老(ちょうろう)が皆(みな)走って伏(ふ)せ隠(かく)れるというのに、

而內史坐車中自如固當

しこうして内史が車の中に座(すわ)ったまま平気でいるのは、どうして(固=胡?)適(かな)うだろうか」と。

乃謝罷慶慶及諸子弟入里門趨至家

そこで、漢内史石慶を許(ゆる)し退(しりぞ)かせた。漢内史石慶及び諸(もろもろ)の子弟(してい)は、里の門に入るときには、小走りして家に至った。

萬石君以元朔五年中卒

万石君(石奮)は元朔五年中を以って亡くなった。

長子郎中令建哭泣哀思扶杖乃能行

長男の漢郎中令石建は号泣(ごうきゅう)して哀(かな)しみ思い、杖(つえ)に寄りかかってすなわち歩くことができた。

歲餘建亦死諸子孫咸孝

一年余りして、漢郎中令石建もまた死んだ。諸(もろもろ)の子、孫はあまねく孝行(こうこう)であったが、

然建最甚甚於萬石君

然(しか)るに漢郎中令石建が最(もっと)も甚(はなは)だ孝行(こうこう)で、万石君(石奮)に於いて非常に孝行(こうこう)であった。

建為郎中令書奏事事下建讀之曰

石建が漢郎中令に為ると、奏上する事(こと)を書いて、事(こと)が下(くだ)され、漢郎中令石建がこれを読み、曰く、

誤書馬者與尾當五

「文字が誤(あやま)っている。馬、とは尾(お)とともに五つ有るべきで、

今乃四不足一上譴死矣

今、すなわち四で、一つ不足(ふそく)している。上が死をとがめるだろう」と。

甚惶恐其為謹慎雖他皆如是

甚(はなは)だ恐れかしこまった。その謹慎(きんしん)と為すは、他(ほか)のことと雖(いえど)も皆(みな)この如(ごと)くであった。

萬石君少子慶為太仆御出

万石君(石奮)の末子の石慶は漢太僕と為って、御(ぎょ)して出るとき、

上問車中幾馬慶以策數馬畢舉手曰

上(漢孝武帝劉徹)が車中で幾(いく)ばくの馬かを問うたとき、漢太僕石慶は馬のむちを以って馬を数え、終わると、手を挙(あ)げて曰く、

六馬慶於諸子中最為簡易矣然猶如此

「六頭の馬です」と。漢太僕石慶は諸(もろもろ)の子の中に於いて最も簡易(かんい)を為したが、然(しか)るに猶(なお)この如(ごと)くであった。

為齊相舉齊國皆慕其家行

(石慶は)斉相と為って、斉国を挙(あ)げて皆(みな)その家の行いを慕(した)い、

不言而齊國大治為立石相祠

言わなくても斉国は大いに治(おさ)まり、石相(斉相石慶)の祠(ほこら)をつくり立てた。

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