灌夫為人剛直使酒不好面諛
灌夫の人と為りは剛直(ごうちょく)で酒をしておべっかを使うことを好まなかった。
貴戚諸有勢在己之右不欲加禮必陵
貴戚(王と同族の親戚)、諸(もろもろ)の勢いの有る者が己(おのれ)の右に在(あ)っても、礼(れい)を加えることを欲さず、必ず軽くみた。
諸士在己之左愈貧賤尤益敬與鈞
諸(もろもろ)の士が己(おのれ)の左に在(あ)れば、愈々(いよいよ)貧賤(ひんせん)であれば、はなはだ益々(ますます)敬(うやま)い、ともに均(ひと)しくした。
稠人廣眾薦寵下輩士亦以此多之
多くの人が広く集まり、下々の輩(やから)を推薦してひいきにした。士もまたこれを以ってこれを多(た)とした。
夫不喜文學好任俠已然諾
灌夫は文学を喜ばず、男気を好み、然諾(ぜんだく 承知する)を以ってした。
諸所與交通無非豪桀大猾
諸(もろもろ)のともに交わり通(かよ)うところ、豪傑(ごうけつ)、大いに悪賢い者で非(あら)ずは無かった。
家累數千萬食客日數十百人
家は数千万を積み重ね、食客は毎日数十百人が来た。
陂池田園宗族賓客為權利於潁川
ため池、田園は、一族、賓客が権利を為し、潁川に於いてほしままにした。
潁川兒乃歌之曰潁水清灌氏寧潁水濁灌氏族
潁川の子供たちはそこでこれを歌った、曰く、「潁水が清らかであれば、灌氏はしずかである、潁水が濁(にご)っていれば、灌氏は(土地を)そこなっている(族=賊?)」と。
灌夫家居雖富然失勢卿相侍中賓客益衰
灌夫は隠居し富んでいると雖(いえど)も、然るに勢いを失い、卿相、侍中、賓客は益々(ますます)
衰(おとろ)えた。
及魏其侯失勢亦欲倚灌夫引繩批根生平慕之後棄之者
魏其侯竇嬰が勢いを失うに及んで、また灌夫をたよることを欲し、平慕の後にこれ(魏其侯竇嬰)を棄てた者
の本性を批判(ひはん)して一線を引いた。
灌夫亦倚魏其而通列侯宗室為名高
灌夫もまた魏其侯竇嬰をたよって、列侯の宗室に通(かよ)って名高く為った。
兩人相為引重其游如父子然
二人は相(あい)重いものを引きあって、その遊ぶは父子のようであるが如(ごと)くであった。
相得驩甚無厭恨相知晚也
相(あい)喜びを得ること甚(はなは)だで、厭(いと)わず、相(あい)晩年を知ることを恨(うら)めしく思ったのである。
灌夫の人と為りは剛直(ごうちょく)で酒をしておべっかを使うことを好まなかった。
貴戚諸有勢在己之右不欲加禮必陵
貴戚(王と同族の親戚)、諸(もろもろ)の勢いの有る者が己(おのれ)の右に在(あ)っても、礼(れい)を加えることを欲さず、必ず軽くみた。
諸士在己之左愈貧賤尤益敬與鈞
諸(もろもろ)の士が己(おのれ)の左に在(あ)れば、愈々(いよいよ)貧賤(ひんせん)であれば、はなはだ益々(ますます)敬(うやま)い、ともに均(ひと)しくした。
稠人廣眾薦寵下輩士亦以此多之
多くの人が広く集まり、下々の輩(やから)を推薦してひいきにした。士もまたこれを以ってこれを多(た)とした。
夫不喜文學好任俠已然諾
灌夫は文学を喜ばず、男気を好み、然諾(ぜんだく 承知する)を以ってした。
諸所與交通無非豪桀大猾
諸(もろもろ)のともに交わり通(かよ)うところ、豪傑(ごうけつ)、大いに悪賢い者で非(あら)ずは無かった。
家累數千萬食客日數十百人
家は数千万を積み重ね、食客は毎日数十百人が来た。
陂池田園宗族賓客為權利於潁川
ため池、田園は、一族、賓客が権利を為し、潁川に於いてほしままにした。
潁川兒乃歌之曰潁水清灌氏寧潁水濁灌氏族
潁川の子供たちはそこでこれを歌った、曰く、「潁水が清らかであれば、灌氏はしずかである、潁水が濁(にご)っていれば、灌氏は(土地を)そこなっている(族=賊?)」と。
灌夫家居雖富然失勢卿相侍中賓客益衰
灌夫は隠居し富んでいると雖(いえど)も、然るに勢いを失い、卿相、侍中、賓客は益々(ますます)
衰(おとろ)えた。
及魏其侯失勢亦欲倚灌夫引繩批根生平慕之後棄之者
魏其侯竇嬰が勢いを失うに及んで、また灌夫をたよることを欲し、平慕の後にこれ(魏其侯竇嬰)を棄てた者
の本性を批判(ひはん)して一線を引いた。
灌夫亦倚魏其而通列侯宗室為名高
灌夫もまた魏其侯竇嬰をたよって、列侯の宗室に通(かよ)って名高く為った。
兩人相為引重其游如父子然
二人は相(あい)重いものを引きあって、その遊ぶは父子のようであるが如(ごと)くであった。
相得驩甚無厭恨相知晚也
相(あい)喜びを得ること甚(はなは)だで、厭(いと)わず、相(あい)晩年を知ることを恨(うら)めしく思ったのである。