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丞相嘗使籍福請魏其城南田

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丞相嘗使籍福請魏其城南田

漢丞相武安侯田蚡は嘗(かつ)て籍福をして魏其侯竇嬰の城南の田を請(こ)わせた。

魏其大望曰老僕雖棄將軍雖貴寧可以勢奪乎

魏其侯竇嬰は大いに恨(うら)んで曰く、「老いぼれのわたしが棄てられたと雖(いえど)も、将軍が地位が高いと雖(いえど)も、よもや勢いを以って奪うことができるのか」と。

不許灌夫聞怒罵籍福籍福惡兩人有郤乃謾自好謝丞相曰

聞き入れなかった。灌夫は聞き、怒り、籍福を罵(ののし)った。籍福は二人が仲たがいするとよくないと思い、そこで、 いつわって 自らを好くして丞相田蚡に謝して曰く、

魏其老且死易忍且待之

「魏其侯は老いてまさに死は忍ぶるに易く、まさにこれを待たんとす」と。

已而武安聞魏其灌夫實怒不予田亦怒曰

しばらくして武安侯田蚡は魏其侯竇嬰、灌夫がまことは怒って田を与えなかったと聞き、また怒って曰く、

魏其子嘗殺人蚡活之蚡事魏其無所不可何愛數頃田

「魏其侯の子が嘗(かつ)て人を殺し、わたしはこれを活(い)かした。わたしは魏其侯に事してできなかったところは無く、どうして数頃(頃=面積の単位)の田を惜(お)しむのか。

且灌夫何與也吾不敢複求田

且つ灌夫はどうして関与するのか。吾(われ)は敢(あ)えて田を重(かさ)ねて求めない」と。
  
武安由此大怨灌夫魏其

漢丞相武安侯田蚡はこれに由(よ)り大いに灌夫、魏其侯竇嬰を怨(うら)んだ。

元光四年春丞相言灌夫家在潁川甚民苦之

元光四年春、漢丞相武安侯田蚡は灌夫の家が潁川に在り、おもうままにすること甚(はなは)だで、民がこれに苦しめられていると言上した。

請案上曰此丞相事何請

取調べを請(こ)うた。上(漢孝武帝劉徹)曰く、「これは丞相の事でどうして請(こ)うのか」と。

灌夫亦持丞相陰事為奸利受淮南王金與語言

灌夫もまた漢丞相武安侯田蚡がひそかに不正な利(り)を為し、淮南王の金を受け取ってともに話しをした事をにぎっていた。

賓客居間遂止俱解

賓客が二者の間に立って尽力し、遂(つい)に止(や)み、ともに解(と)いた。

夏,丞相取燕王女為夫人,有太后詔,召列侯宗室皆往賀。

元光四年夏、漢丞相武安侯田蚡が燕王の娘を娶(めと)って夫人と為し、王太后の詔(みことのり)が
有り、列侯の一族を召し寄せて、皆(みな)賀(が)しに往(い)った。

魏其侯過灌夫欲與俱夫謝曰

魏其侯竇嬰は灌夫に立ち寄って、ともにすることを欲した。灌夫は謝(しゃ)して曰く、

夫數以酒失得過丞相丞相今者又與夫有郤

「わたしはたびたび酒を以ってわからなくなり丞相に過(あやま)ちを得て、丞相は今また、わたしと仲たがいしています」と。

魏其曰事已解彊與俱

魏其侯竇嬰曰く、「事はすでに解(と)かれたのだ」と。強(し)いてともにした。

飲酒酣武安起為壽坐皆避席伏

酒を飲んでたけなわになり、漢丞相武安侯田蚡が立ち上がって寿(ことほ)ぎを為し、座の皆(みな)は席をしりぞいて伏(ふ)した。

已魏其侯為壽獨故人避席耳餘半膝席

魏其侯竇嬰が寿(ことほ)ぎを為し終わると、ただ古くからの知り合いだけが席を退いただけで、残りの半分が席に膝(ひざ)をついた。

灌夫不起行酒至武安武安膝席曰

灌夫は悦(よろこ)ばなかった。立ち上がって酒をつぎに行き、漢丞相武安侯田蚡に至ると、漢丞相武安侯田蚡は席に膝をついて曰く、

不能滿觴夫因嘻笑曰

「さかずきを満たしても飲めない」と。灌夫は因(よ)りて作り笑いをして曰く、

將軍貴人也屬之時武安不肯

「将軍は貴人でありますから、これをすすめるのです」と。時に漢丞相武安侯田蚡はよしとしなかった。

行酒次至臨汝侯臨汝侯方與程不識耳語又不避席

酒を順次つぎに行き、臨汝侯に至ると、臨汝侯はまさに程不識とひそひそ話しをしており、また席をしりぞかなかった。

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