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Channel: 倭人伝を解く
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及至秦王蠶食

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及至秦王蠶食天下并吞戰國稱號曰皇帝主海內之政

秦王に至るに及んで、天下を蚕食し、戦国を併呑(へいどん)し、号を称(とな)えて曰く、皇帝と。海内の政治をつかさどり、

壞諸侯之城銷其兵鑄以為鐘虡示不復用元元黎民得免於戰國

諸侯の城を壊し、その武器を溶(と)かして、鋳(い)るに鐘と鐘かけの台をつくるを以ってし、ふたたび用いないことを示しました。愛すべき庶民は戦国から免(まぬか)れるを得て、

逢明天子人人自以為更生向使秦緩其刑罰薄賦斂省繇役

明天子をむかえ、人々は自(みずか)ら、新しい生き方を為すを以ってしました。対して、秦をしてその刑罰を緩(ゆる)め、賦斂(租税を割り当てて取り立てること)を少なくし、徭役(ようえき)を省(はぶ)き、

貴仁義賤權利上篤厚下智巧變風易俗化於海內則世世必安矣

仁義を貴び、権利を賤(いや)しめ、篤厚をとうとび、智巧を見下げ、情勢を変え、俗をあらため、海内を教化すれば、すなわち代々必ず安んずるのです。

秦不行是風而修其故俗為智巧權利者進篤厚忠信者退

秦はこの情勢を行わずして、その古い俗を修(おさ)め、智巧、権利を為す者が進み、篤厚、忠信を為す者が退(しりぞ)き、

法嚴政峻諂諛者眾日聞其美意廣心軼欲肆威海外

法は厳(おごそ)かで、政治はきびしく、へつらいおもねる者が多く、毎日その甘言を聞き、気持ちは大きく心はなくなっていきました。海外に威(い)をひろめることを欲し、

乃使蒙恬將兵以北攻胡辟地進境戍於北河蜚芻芻粟以隨其后

そこで、蒙恬をつかわして兵を率(ひき)いさせて北に胡を攻(せ)めるを以ってし、地を開拓し、境(さかい)を進め、北河に於いて国境警備をし、飛蝗(ばった)が趨趨(すうすう)と粟(あわ)を
追いかけ、その後につき従うを以ってしました。

又使尉[佗]屠睢將樓船之士南攻百越使監祿鑿渠運糧深入越越人遁逃

また、尉(官職名)屠睢をつかわし、楼船の士を率(ひき)いさせて南に進み、百越を攻めさせ、監祿鑿渠をつかわして食糧を運ばせ、越に深く入り、越人は逃げました。

曠日持久糧食絕乏越人擊之秦兵大敗秦乃使尉佗將卒以戍越

むだに日をすごして同じ状態を長く続け、食糧は絶(た)えて乏(とぼ)しくなり、越人はこれを撃(う)ち、秦兵は大敗しました。秦はそこで尉趙佗をつかわし兵を率(ひき)いさせて越の国境警備を以ってさせました。

當是時秦禍北構於胡南掛於越宿兵無用之地進而不得退

ちょうどこの時、秦の禍(わざわい)は北に胡(匈奴)に於いて構(かま)え、南に越に於いて掛(か)かり、戦いを無用(むよう)の地に宿(やど)し、進んでも退くことができませんでした。

行十餘年丁男被甲丁女轉輸苦不聊生自經於道樹死者相望

行うこと十余年、一人前の男子は鎧(よろい)を被(かぶ)り、一人前の女子は転輸して、苦しんで生きることをたのしまず、自ら道の樹(き)に首をくくり、死者はつぎつぎと望まれました。

及秦皇帝崩天下大叛陳勝吳廣舉陳武臣張耳舉趙

秦皇帝が崩ずるに及んで、天下は大いに叛(そむ)きました。陳勝、呉広が陳(楚の旧都)を挙(あ)げ、武臣、張耳が趙を挙(あ)げました。

項梁舉吳田儋舉齊景駒舉郢周市舉魏韓廣舉燕

項梁が呉を挙(あ)げ、田儋が斉を挙(あ)げ、景駒が郢を挙(あ)げ、周市が魏を挙(あ)げ、韓広が燕を挙(あ)げ、

窮山通谷豪士并起不可勝載也然皆非公侯之后非長官之吏也

山を調べ谷(たに)を通(とお)し、豪士はならび起(お)こり、残らず記載(きさい)することは
できませんでした。然(しか)るに皆(みな)公、侯の子孫ではなく、長官の役人でもありませんでした。

無尺寸之勢起閭巷杖棘矜應時而皆動不謀而俱起

尺寸(せきすん)の権力も無く、村里に起(お)こり、棘(いばら)のほこを杖(つえ)にして、時に応じて皆(みな)動くは、謀(はか)らずしてともに立ち上がり、


不約而同會壤長地進至于霸王時教使然也

約さずして会同(かいどう)し、領土は広がり地は進み、覇王に至りました。 時勢が教化してそのようにせしめたのであります。

秦貴為天子富有天下滅世絕祀者窮兵之禍也

秦は天子と為って貴ばれ、富(とみ)は天下を有(ゆう)したのに、代を滅ぼし祭祀(さいし)を絶(た)ったのは、戦いを窮(きわ)めたことの禍(わざわい)であります。

故周失之弱秦失之彊不變之患也

故(ゆえ)に周は弱まって失い、秦は強まって失い、あらためなかったことのわざわいであります。

今欲招南夷朝夜郎降羌僰略濊州

今、南夷を招(まね)き、夜郎に朝させ、羌僰を降(くだ)し、濊州を略取し、

建城邑深入匈奴燔其蘢城議者美之

城邑を建て、匈奴に深く入り、その蘢城を焼くことを欲し、議(ぎ)する者はこれをほめたたえます。

此人臣之利也非天下之長策也

これは、人の臣下の利(り)であり、天下のすぐれた策では非(あら)ざるなり。

今中國無狗吠之驚而外累於遠方之備靡敝國家非所以子民也

今、中国には犬吼えの警備が無く、そして外(そと)に遠方の備(そな)えを累積(るいせき)し、国家を疲弊(ひへい)させ、民(たみ)をわが子のように愛するを以ってするところであ非(あら)ざるなり。

行無窮之欲甘心快意結怨於匈奴非所以安邊也

窮(きわ)まることの無い欲(よく)を思いのままに気持ちよく行い、怨(うら)みを匈奴に結(むす)び、辺境を安んずるを以ってするところでは非(あら)ざるなり。

禍結而不解兵休而復起近者愁苦遠者驚駭非所以持久也

禍(わざわい)は結(むす)ばれて解(と)けず、戦いが止むと、また起こり、近くの者は愁(うれ)い苦しみ、遠くの者は驚(おどろ)きおびえ、同じ状態を長く続けるを以ってするところでは非(あら)ざるなり。

今天下鍛甲砥劍橋箭累弦轉輸運糧未見休時此天下之所共憂也

今、天下は鎧(よろい)を鍛(きた)え、剣を砥(と)ぎ、矢をまっすぐにただし、弓のつるを結(むす)び、転輸して糧(かて)を運び、未(いま)だ休まる時を見ず、これ、天下の憂(うれ)いを共(とも)にするところであります。

夫兵久而變起事煩而慮生

それ、戦いが久しくなれば、変事が起こり、事が煩(わず)らわしくなれば、憂慮(ゆうりょ)が
生(しょう)じます。

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