問楚地之有無者願聞大國之風烈先生之餘論也
楚地の有るもの無いものを問うたのは、大国の教化と事業、先生の余論(本論以外の付け加えた議論)を
聞くことを願ったからなのです。
今足下不稱楚王之厚而盛推雲夢以為高
今、足下は楚王の徳孝を称(たた)えずして、しこうして、雲夢を盛んに推(お)し進めて気高いと為すを以ってし、
奢言淫樂而顯侈靡竊為足下不取也
奢(おご)って、度を越した楽しみを言い、そしておごりみだりがましさを顕(あきら)かにし、
ひそかに、足下の為(ため)によいとしないのです。
必若所言固非楚國之美也
必ずしも言ったところのごとくは、けっして楚国の美ではないのであります。
有而言之是章君之惡
有ってこれを言ったのであれば、これ、君の悪を章(あきら)かにし、
無而言之是害足下之信
無くてこれを言ったのであれば、これ、足下の信用を害(がい)するのです。
章君之惡而傷私義二者無一可
君の悪を章(あきら)かにして、個人的な義(ぎ)を傷(きず)つけ、二者は一つもよいものはありません。
而先生行之必且輕於齊而累於楚矣
しこうして、先生はこれを行い、必ずまさに斉に於いて軽んじられんとし、そして楚に於いて繋(つな)がれんとすることでしょう。
且齊東陼巨海南有瑯邪
まさに斉の東は、大きな海をかきねにし、南は瑯邪が有り、
觀乎成山射乎之罘浮勃澥
観(み)るは成山、射(い)るは之罘、勃海に船を浮かべ、
游孟諸邪與肅慎為鄰右以湯谷為界
孟諸を巡り、瑯邪と肅慎は隣(となり)あい、右は湯谷を以って境界と為し、
秋田乎青丘傍偟乎海外吞若雲夢者八九
秋の狩りは青丘で、いきつもどりつするは海の外で、雲夢のごとくの者、八、九個を呑(の)みこんでも、
其於胸中曾不蔕芥若乃俶儻瑰偉
その胸の中に於いてすなわち、からし菜の蔕(へた)にもなりません。すなわち才気が高く、すぐれて大きく、
異方殊類珍怪鳥獸萬端鱗萃
外国の殊(こと)なる類、珍怪な鳥獣、種々さまざまな魚、野草、
充仞其中者不可勝記禹不能名契不能計
その中に満ちる者のごとくは、すべて記(しる)すことはできません。禹(夏王朝の始祖)でも名づけることはできず、契(殷王朝の始祖)でも勘定することはできません。
然在諸侯之位不敢言游戲之樂苑囿之大
然(しか)るに諸侯の地位に在(あ)って、敢(あ)えて遊戯の楽しみ、苑囿の大を言わず、
先生又見客是以王辭而不復何為無用應哉
先生もまた客とされ、ここに、王の言葉を以って繰り返さなかったのであり、どうして
返事をしなかったと思われたのでしょうかな』と。
無是公聽然而笑曰楚則失矣齊亦未為得也
無是公は聴(き)いて然(しか)しながら笑って曰く、『楚はすなわち気ままであり、斉もまた未(ま)だ徳(とく)を為してはいないのです。
夫使諸侯納貢者非為財幣所以述職也
それ、諸侯をして年貢を納(おさ)めさせるのは、財幣の為ではなく、職務の報告を以ってするところなのであります。
封疆畫界者非為守御所以禁淫也
封じて界を区切るのは、守御の為ではなく、不正を禁ずるを以ってするところなのであります。
今齊列為東藩而外私肅慎捐國踰限
今、斉は東の藩として並び、しこうして、外(そと)に肅慎に利をはかり、領地を捨(す)てて限りを越(こ)え、
越海而田其於義故未可也
海を越(こ)えて狩りをし、その義(ぎ)故(ゆえ)に於いて未(ま)だよくありません。
且二君之論不務明君臣之義而正諸侯之禮
まさに二君の論(ろん)は、君臣の義(ぎ)を明らかにして、諸侯の礼を正(ただ)すことに務(つと)めず、
徒事爭游獵之樂苑囿之大欲以奢侈相勝
ただ、遊猟の楽しみ、苑囿の大を争うことを事(こと)として、奢侈(しゃし)を以って勝(まさ)るをみて、
荒淫相越此不可以揚名發譽而適足以貶君自損也
酒や遊びに心を奪われることを以ってまさるをみることを欲し、これは、誉(ほまれ)を発して名を揚(あ)げるを以ってするによくなく、しこうして、君を貶(おとし)め自らを損(そこ)ねるを以ってするに足るに適(かな)うだけなのであります。
且夫齊楚之事又焉足道邪
まさにそれ、斉、楚の事はまたどうして語るに足るでしょうか。
君未睹夫巨麗也獨不聞天子之上林乎
君が未(ま)だかの大きく麗(うるわ)しいものを見ていないのは、単に天子の上林を聞いていないだけなのですか?
楚地の有るもの無いものを問うたのは、大国の教化と事業、先生の余論(本論以外の付け加えた議論)を
聞くことを願ったからなのです。
今足下不稱楚王之厚而盛推雲夢以為高
今、足下は楚王の徳孝を称(たた)えずして、しこうして、雲夢を盛んに推(お)し進めて気高いと為すを以ってし、
奢言淫樂而顯侈靡竊為足下不取也
奢(おご)って、度を越した楽しみを言い、そしておごりみだりがましさを顕(あきら)かにし、
ひそかに、足下の為(ため)によいとしないのです。
必若所言固非楚國之美也
必ずしも言ったところのごとくは、けっして楚国の美ではないのであります。
有而言之是章君之惡
有ってこれを言ったのであれば、これ、君の悪を章(あきら)かにし、
無而言之是害足下之信
無くてこれを言ったのであれば、これ、足下の信用を害(がい)するのです。
章君之惡而傷私義二者無一可
君の悪を章(あきら)かにして、個人的な義(ぎ)を傷(きず)つけ、二者は一つもよいものはありません。
而先生行之必且輕於齊而累於楚矣
しこうして、先生はこれを行い、必ずまさに斉に於いて軽んじられんとし、そして楚に於いて繋(つな)がれんとすることでしょう。
且齊東陼巨海南有瑯邪
まさに斉の東は、大きな海をかきねにし、南は瑯邪が有り、
觀乎成山射乎之罘浮勃澥
観(み)るは成山、射(い)るは之罘、勃海に船を浮かべ、
游孟諸邪與肅慎為鄰右以湯谷為界
孟諸を巡り、瑯邪と肅慎は隣(となり)あい、右は湯谷を以って境界と為し、
秋田乎青丘傍偟乎海外吞若雲夢者八九
秋の狩りは青丘で、いきつもどりつするは海の外で、雲夢のごとくの者、八、九個を呑(の)みこんでも、
其於胸中曾不蔕芥若乃俶儻瑰偉
その胸の中に於いてすなわち、からし菜の蔕(へた)にもなりません。すなわち才気が高く、すぐれて大きく、
異方殊類珍怪鳥獸萬端鱗萃
外国の殊(こと)なる類、珍怪な鳥獣、種々さまざまな魚、野草、
充仞其中者不可勝記禹不能名契不能計
その中に満ちる者のごとくは、すべて記(しる)すことはできません。禹(夏王朝の始祖)でも名づけることはできず、契(殷王朝の始祖)でも勘定することはできません。
然在諸侯之位不敢言游戲之樂苑囿之大
然(しか)るに諸侯の地位に在(あ)って、敢(あ)えて遊戯の楽しみ、苑囿の大を言わず、
先生又見客是以王辭而不復何為無用應哉
先生もまた客とされ、ここに、王の言葉を以って繰り返さなかったのであり、どうして
返事をしなかったと思われたのでしょうかな』と。
無是公聽然而笑曰楚則失矣齊亦未為得也
無是公は聴(き)いて然(しか)しながら笑って曰く、『楚はすなわち気ままであり、斉もまた未(ま)だ徳(とく)を為してはいないのです。
夫使諸侯納貢者非為財幣所以述職也
それ、諸侯をして年貢を納(おさ)めさせるのは、財幣の為ではなく、職務の報告を以ってするところなのであります。
封疆畫界者非為守御所以禁淫也
封じて界を区切るのは、守御の為ではなく、不正を禁ずるを以ってするところなのであります。
今齊列為東藩而外私肅慎捐國踰限
今、斉は東の藩として並び、しこうして、外(そと)に肅慎に利をはかり、領地を捨(す)てて限りを越(こ)え、
越海而田其於義故未可也
海を越(こ)えて狩りをし、その義(ぎ)故(ゆえ)に於いて未(ま)だよくありません。
且二君之論不務明君臣之義而正諸侯之禮
まさに二君の論(ろん)は、君臣の義(ぎ)を明らかにして、諸侯の礼を正(ただ)すことに務(つと)めず、
徒事爭游獵之樂苑囿之大欲以奢侈相勝
ただ、遊猟の楽しみ、苑囿の大を争うことを事(こと)として、奢侈(しゃし)を以って勝(まさ)るをみて、
荒淫相越此不可以揚名發譽而適足以貶君自損也
酒や遊びに心を奪われることを以ってまさるをみることを欲し、これは、誉(ほまれ)を発して名を揚(あ)げるを以ってするによくなく、しこうして、君を貶(おとし)め自らを損(そこ)ねるを以ってするに足るに適(かな)うだけなのであります。
且夫齊楚之事又焉足道邪
まさにそれ、斉、楚の事はまたどうして語るに足るでしょうか。
君未睹夫巨麗也獨不聞天子之上林乎
君が未(ま)だかの大きく麗(うるわ)しいものを見ていないのは、単に天子の上林を聞いていないだけなのですか?