於是乎離宮別館彌山跨谷
ここに於いてや、離宮、別館は山を繕(つくろ)い谷をまたいで、
高廊四注重坐曲閣
高い廊下が四方に注(そそ)がれ、柵(さく 坐(さ)=柤(さ)?)を重(かさ)ねて、架け橋を曲(ま)げ、
華榱璧璫輦道纚屬
璧、璫でたるきを美しくいろどり、輦道(天子のてぐるまの通る道)は纚属とつらなりつづき、
步櫩周流長途中宿
路地を歩いてあまねくさすらうは、長く途中で宿さなくてはなりません。
夷嵏筑堂纍臺成
峰々が高くそびえている山を平らげて堂を築き、高楼を増成してつなぎ、
巖穾洞房俛杳眇而無見
巌(いわ)の奥深いほら穴は、うつむけば、遠くかすんで、なにも見えず、
仰攀橑而捫天奔星更於閨闥
仰(あお)むけば、たるきによじのぼって、天をつかみ、流星は閨闥(上方が円形の門)をよぎり、
宛虹拖於楯軒青虯蚴蟉於東箱
虹(にじ)は欄干(らんかん)にかかります。青いみづちが東の沼(箱(しょう)=沼(しょう)?)にくねくねとうねって行き、
象輿婉蟬於西清靈圉燕於觀
象(ぞう)の輿(こし)は西の沼(清(しょう)=沼(しょう)?)にしなやかに連なります。精霊が静かな物見台で守りくつろぎ、
偓佺之倫暴於南榮醴泉涌於清室
偓佺(伝説上の仙人の名)のたぐいが南の沼沢地(栄(えい)=瀛(えい)?)にあらわれ、甘くうまい泉が沼(清(しょう)=沼(しょう)?)のむろから涌(わ)き、
通川過乎中庭槃石裖崖
川を通して中庭を過ぎていきます。へり(裖=袗(しん)?)に石をめぐらして崖(がけ)にし、
嵚巖倚傾嵯峨磼礏
嵚巖倚傾として岩石がけわしくそびえ、もたれ傾(かたむ)き、嵯峨磼礏と山が高くけわしく高大なさまにして、
刻削崢玫瑰碧琳
刻削崢とするどくそびえ、玫瑰(赤色の美しい玉)、碧琳(青色の美しい玉)、
珊瑚叢生瑉玉旁唐
珊瑚(さんご)が群生(ぐんせい)し、瑉玉(玉のように美しい石)が堤(つつみ)にゆきわたり、
璸斒文鱗赤瑕駁犖
璸斒文鱗と、鱗(うろこ)のようなもように色がまじりあって美しく、赤みのある玉がまだらにいりまじって、
雜臿其垂綏琬琰和氏出焉
その間にさしはさまれて雑(ま)じり、美しい玉を降(ふ)らせたようで、和氏(かし)が現われることでしょう。
ここに於いてや、離宮、別館は山を繕(つくろ)い谷をまたいで、
高廊四注重坐曲閣
高い廊下が四方に注(そそ)がれ、柵(さく 坐(さ)=柤(さ)?)を重(かさ)ねて、架け橋を曲(ま)げ、
華榱璧璫輦道纚屬
璧、璫でたるきを美しくいろどり、輦道(天子のてぐるまの通る道)は纚属とつらなりつづき、
步櫩周流長途中宿
路地を歩いてあまねくさすらうは、長く途中で宿さなくてはなりません。
夷嵏筑堂纍臺成
峰々が高くそびえている山を平らげて堂を築き、高楼を増成してつなぎ、
巖穾洞房俛杳眇而無見
巌(いわ)の奥深いほら穴は、うつむけば、遠くかすんで、なにも見えず、
仰攀橑而捫天奔星更於閨闥
仰(あお)むけば、たるきによじのぼって、天をつかみ、流星は閨闥(上方が円形の門)をよぎり、
宛虹拖於楯軒青虯蚴蟉於東箱
虹(にじ)は欄干(らんかん)にかかります。青いみづちが東の沼(箱(しょう)=沼(しょう)?)にくねくねとうねって行き、
象輿婉蟬於西清靈圉燕於觀
象(ぞう)の輿(こし)は西の沼(清(しょう)=沼(しょう)?)にしなやかに連なります。精霊が静かな物見台で守りくつろぎ、
偓佺之倫暴於南榮醴泉涌於清室
偓佺(伝説上の仙人の名)のたぐいが南の沼沢地(栄(えい)=瀛(えい)?)にあらわれ、甘くうまい泉が沼(清(しょう)=沼(しょう)?)のむろから涌(わ)き、
通川過乎中庭槃石裖崖
川を通して中庭を過ぎていきます。へり(裖=袗(しん)?)に石をめぐらして崖(がけ)にし、
嵚巖倚傾嵯峨磼礏
嵚巖倚傾として岩石がけわしくそびえ、もたれ傾(かたむ)き、嵯峨磼礏と山が高くけわしく高大なさまにして、
刻削崢玫瑰碧琳
刻削崢とするどくそびえ、玫瑰(赤色の美しい玉)、碧琳(青色の美しい玉)、
珊瑚叢生瑉玉旁唐
珊瑚(さんご)が群生(ぐんせい)し、瑉玉(玉のように美しい石)が堤(つつみ)にゆきわたり、
璸斒文鱗赤瑕駁犖
璸斒文鱗と、鱗(うろこ)のようなもように色がまじりあって美しく、赤みのある玉がまだらにいりまじって、
雜臿其垂綏琬琰和氏出焉
その間にさしはさまれて雑(ま)じり、美しい玉を降(ふ)らせたようで、和氏(かし)が現われることでしょう。