使者曰烏謂此邪必若所云
使者曰く、『どうしてこのように謂(い)われるのか?もしも云(い)うところのごとくならば、
則是蜀不變服而巴不化俗也
すなわちここに蜀は服を変えずして、巴は俗を教化しない。
余尚惡聞若說然斯事體大固非觀者之所覯也
わたしは尚(なお)かくのごとくの説(せつ)を聞くことをにくむ。然(しか)るにこの事(こと)のあらまし(大体)は、まことに全体をみない者の構成するところである。
余之行急其詳不可得聞已請為大夫粗陳其略
わたしの行くは急いでいるので、その詳細は申し上げることを得られないだけであるので、大夫たちの為(ため)にその要点を大雑把(おおざっぱ)に述(の)べることを請(こ)う。
蓋世必有非常之人然後有非常之事
思うに世間には必ず非常の人が有り、然(しか)る後に非常の事(こと)が有る、
有非常之事然後有非常之功
非常の事(こと)が有れば、然(しか)る後に非常の功(こう)が有る。
非常者固常[人]之所異也
非常とは、固(もと)より普通の異なる所である。
故曰非常之原黎民懼焉
故(ゆえ)に曰く、非常のもともとは、庶民が懼(おそ)れるが、
及臻厥成天下晏如也
その成すにいたるに及んで、天下はやすらかになるのである、と。
昔者鴻水浡出氾濫衍溢
昔、鴻水があふれ出て、氾濫(はんらん)し衍溢(えんいつ)といっぱいにあふれ、
民人登降移徙陭區而不安
民の人々は登ったり降(お)りたりして移り、所をかえ、陭区(きく)としてこせこせとして不安だった。
夏后氏戚之乃堙鴻水決江疏河
夏后氏がこれに心をいため、そこで鴻水に土を積みあげて、江(鴻?)の堤(つつみ)をきって河に通(とお)し、
漉沈贍菑東歸之於海而天下永寧
くみ出してしずめ、開墾したばかりの田にめぐみ、東にこれを海に帰(き)し、しこうして天下は永(なが)く落ち着いた。
當斯之勤豈唯民哉
この勤(つと)めに当たって、どうして唯(ただ)民(たみ)のみであるだろうかな。
心煩於慮而身親其勞躬胝無胈膚不生毛
心は慮(おもんばか)りによりて煩(わずら)いて、身はその労をみずからにして、からだにはたこができ、ももの毛が無くなり、皮膚(ひふ)は毛が生(は)えなくなる。
故休烈顯乎無窮聲稱浹乎于茲
故(ゆえ)にすぐれた手柄が顕(あきら)かになるは窮(きわ)まりが無く、立派な評判がすみずみまで行き渡るは、ますますである。
且夫賢君之踐位也豈特委瑣握嚙
まさにそれ、賢君の地位をふんで、どうしてただに、こせこせと(握嚙=齷齪(あくさく)?)小さなものにやすんじ、
拘文牽俗循誦習傳當世取說云爾哉
はなやかさにこだわり俗(ぞく)にかかわり、ほめたたえたものをなで、伝(いいつたえ)を習(なら)い、世(よ)に当(あ)たって悦(よろこ)びを取ってかくかくであるだろうかな。
必將崇論閎議創業垂統為萬世規
必ずまさに論をかさね議を大きくし、新しく事業をはじめ、天下統治の基礎を定めて子孫に伝え、万世の手本と為らんとするだろう。
故馳騖乎兼容并包而勤思乎參天貳地
故(ゆえ)に走り回るや、兼容并包とあわせ入れ、しこうして謹(つつし)んで思うや、天をおがみ地をはらい清める(貳(じ)=除(じ)の参(三)に対応した替え字?)のである。
且詩不云乎普天之下莫非王土率土之濱莫非王臣
まさに詩に云(い)わないか、あまねく天の下(した)は、王の領土で非(あら)ざるはなく、
地の続く限りのすべてのところは、王の臣下で非(あら)ざるはなし、と。
使者曰く、『どうしてこのように謂(い)われるのか?もしも云(い)うところのごとくならば、
則是蜀不變服而巴不化俗也
すなわちここに蜀は服を変えずして、巴は俗を教化しない。
余尚惡聞若說然斯事體大固非觀者之所覯也
わたしは尚(なお)かくのごとくの説(せつ)を聞くことをにくむ。然(しか)るにこの事(こと)のあらまし(大体)は、まことに全体をみない者の構成するところである。
余之行急其詳不可得聞已請為大夫粗陳其略
わたしの行くは急いでいるので、その詳細は申し上げることを得られないだけであるので、大夫たちの為(ため)にその要点を大雑把(おおざっぱ)に述(の)べることを請(こ)う。
蓋世必有非常之人然後有非常之事
思うに世間には必ず非常の人が有り、然(しか)る後に非常の事(こと)が有る、
有非常之事然後有非常之功
非常の事(こと)が有れば、然(しか)る後に非常の功(こう)が有る。
非常者固常[人]之所異也
非常とは、固(もと)より普通の異なる所である。
故曰非常之原黎民懼焉
故(ゆえ)に曰く、非常のもともとは、庶民が懼(おそ)れるが、
及臻厥成天下晏如也
その成すにいたるに及んで、天下はやすらかになるのである、と。
昔者鴻水浡出氾濫衍溢
昔、鴻水があふれ出て、氾濫(はんらん)し衍溢(えんいつ)といっぱいにあふれ、
民人登降移徙陭區而不安
民の人々は登ったり降(お)りたりして移り、所をかえ、陭区(きく)としてこせこせとして不安だった。
夏后氏戚之乃堙鴻水決江疏河
夏后氏がこれに心をいため、そこで鴻水に土を積みあげて、江(鴻?)の堤(つつみ)をきって河に通(とお)し、
漉沈贍菑東歸之於海而天下永寧
くみ出してしずめ、開墾したばかりの田にめぐみ、東にこれを海に帰(き)し、しこうして天下は永(なが)く落ち着いた。
當斯之勤豈唯民哉
この勤(つと)めに当たって、どうして唯(ただ)民(たみ)のみであるだろうかな。
心煩於慮而身親其勞躬胝無胈膚不生毛
心は慮(おもんばか)りによりて煩(わずら)いて、身はその労をみずからにして、からだにはたこができ、ももの毛が無くなり、皮膚(ひふ)は毛が生(は)えなくなる。
故休烈顯乎無窮聲稱浹乎于茲
故(ゆえ)にすぐれた手柄が顕(あきら)かになるは窮(きわ)まりが無く、立派な評判がすみずみまで行き渡るは、ますますである。
且夫賢君之踐位也豈特委瑣握嚙
まさにそれ、賢君の地位をふんで、どうしてただに、こせこせと(握嚙=齷齪(あくさく)?)小さなものにやすんじ、
拘文牽俗循誦習傳當世取說云爾哉
はなやかさにこだわり俗(ぞく)にかかわり、ほめたたえたものをなで、伝(いいつたえ)を習(なら)い、世(よ)に当(あ)たって悦(よろこ)びを取ってかくかくであるだろうかな。
必將崇論閎議創業垂統為萬世規
必ずまさに論をかさね議を大きくし、新しく事業をはじめ、天下統治の基礎を定めて子孫に伝え、万世の手本と為らんとするだろう。
故馳騖乎兼容并包而勤思乎參天貳地
故(ゆえ)に走り回るや、兼容并包とあわせ入れ、しこうして謹(つつし)んで思うや、天をおがみ地をはらい清める(貳(じ)=除(じ)の参(三)に対応した替え字?)のである。
且詩不云乎普天之下莫非王土率土之濱莫非王臣
まさに詩に云(い)わないか、あまねく天の下(した)は、王の領土で非(あら)ざるはなく、
地の続く限りのすべてのところは、王の臣下で非(あら)ざるはなし、と。