又偽為左右都司空上林中都官詔獄(逮)書[逮]諸侯太子幸臣
また偽(いつわ)って、左右都司空、上林中都官の詔獄(天子の命をうけて罪人をとりしらべたところ)の書を作り、諸侯、太子、幸臣をとらえさせます。
如此則民怨諸侯懼即使辯武隨而說之儻可徼幸什得一乎
この如(ごと)くすれば、民は怨(うら)み、諸侯は懼(おそ)れ、すなわち弁士、武士をしてしたがわせてこれを説けば、もしくは、まぐれあたりの幸福を十に一つは得ることができるでしょうか」と。
王曰此可也雖然吾以為不至若此於是王乃令官奴入宮
淮南王劉安曰く、「これはよい。然りと雖(いえど)も、吾(われ)はこのごとくに至らないと思う」と。ここに於いて淮南王劉安はすなわち官奴に令(れい)して宮に入らせ、
作皇帝璽丞相御史大將軍軍吏中二千石都官令丞印
皇帝の璽(じ 印),丞相、御史、大將軍、軍吏、中二千石、都官令、都官丞の印、
及旁近郡太守都尉印漢使節法冠欲如伍被計
及びかたわらの近郡の太守、都尉の印、漢使の旗(はた)、法冠(ほうかん)を作らせて、伍被の計(はか)りごとの如(ごと)くすることを欲した。
使人偽得罪而西事大將軍丞相一日發兵
人をして偽(いつわ)って罪を得(え)さしめて、西に、漢大将軍衛青、漢丞相に仕(つか)えさせ、ある日、兵を発したら、
使人即刺殺大將軍青而說丞相下之如發蒙耳
人をしてすなわち漢大将軍衛青を殺さしめ、しこうして漢丞相を説(と)いてこれを下(くだ)させれば、物のおおいを取り去るが如(ごと)くであるのみと。
王欲發國中兵恐其相二千石不聽王乃與伍被謀先殺相二千石
淮南王劉安は国中の兵を発っそうと欲し、その(淮南の)相、二千石が聴(き)きいれないことを恐れ、
淮南王劉安はそこで伍被と、先(さき)んじて相、二千石を殺すことを謀(はか)った。
偽失火宮中相二千石救火至即殺之計未決又欲令人衣求盜衣
宮中で失火(しっか)をよそおって、相、二千石が火を消そうとしたら、そこでこれを殺すに至ろうとした。計(はか)りごとが未(ま)だ決まらないうちに、また、人に令(れい)して求盗の衣(ころも)を着せ、
持羽檄從東方來呼曰南越兵入界欲因以發兵
羽檄(うげき 将軍が出す至急の命令文)を持たせ、東方より来させて、さけばせて曰く「南越の兵が国境に入った」と。因(よ)りて兵を発するを以ってすることを欲した。
乃使人至廬江會稽為求盜未發王問伍被曰
そこで人をつかわし廬江、會稽に至らせて求盗と為さしめようとした。未(ま)だ(計を)発さないうちに、淮南王劉安は伍被に問うた、曰く、
吾舉兵西鄉諸侯必有應我者即無應柰何被曰
「吾(われ)が兵を挙(あ)げて西に向えば、諸侯は必ず我(われ)に応ずる者があるだろう。もし応じなければ、どうしたらよいか?」と。伍被曰く、
南收衡山以擊廬江有尋陽之船守下雉之城結九江之浦
「南に衡山を収(おさ)めて、廬江を撃つを以ってし、尋陽の船を有(ゆう)して、下雉の城を守り、
九江の浦に交(まじ)わり、
絕豫章之口彊弩臨江而守以禁南郡之下東收江都會稽
豫章の口を絶(た)って、彊弩(おおゆみ)は江に臨(のぞ)んで守り、南の郡の下(くだ)るのを禁ずるを以ってし、東に江都、会稽を収(おさ)め、
南通勁越屈彊江淮猶可得延歲月之壽
南に強い越に通じ、江淮の間で屈強(くっきょう)になれば、猶(なお)、歳月(さいげつ)を延(の)ばすことの長命を得ることができるでしょう」と。
王曰善無以易此急則走越耳
淮南王劉安曰く、「善(よ)い、これにかえるものは無し。さしせまれば、越に逃走するのみ」と。
また偽(いつわ)って、左右都司空、上林中都官の詔獄(天子の命をうけて罪人をとりしらべたところ)の書を作り、諸侯、太子、幸臣をとらえさせます。
如此則民怨諸侯懼即使辯武隨而說之儻可徼幸什得一乎
この如(ごと)くすれば、民は怨(うら)み、諸侯は懼(おそ)れ、すなわち弁士、武士をしてしたがわせてこれを説けば、もしくは、まぐれあたりの幸福を十に一つは得ることができるでしょうか」と。
王曰此可也雖然吾以為不至若此於是王乃令官奴入宮
淮南王劉安曰く、「これはよい。然りと雖(いえど)も、吾(われ)はこのごとくに至らないと思う」と。ここに於いて淮南王劉安はすなわち官奴に令(れい)して宮に入らせ、
作皇帝璽丞相御史大將軍軍吏中二千石都官令丞印
皇帝の璽(じ 印),丞相、御史、大將軍、軍吏、中二千石、都官令、都官丞の印、
及旁近郡太守都尉印漢使節法冠欲如伍被計
及びかたわらの近郡の太守、都尉の印、漢使の旗(はた)、法冠(ほうかん)を作らせて、伍被の計(はか)りごとの如(ごと)くすることを欲した。
使人偽得罪而西事大將軍丞相一日發兵
人をして偽(いつわ)って罪を得(え)さしめて、西に、漢大将軍衛青、漢丞相に仕(つか)えさせ、ある日、兵を発したら、
使人即刺殺大將軍青而說丞相下之如發蒙耳
人をしてすなわち漢大将軍衛青を殺さしめ、しこうして漢丞相を説(と)いてこれを下(くだ)させれば、物のおおいを取り去るが如(ごと)くであるのみと。
王欲發國中兵恐其相二千石不聽王乃與伍被謀先殺相二千石
淮南王劉安は国中の兵を発っそうと欲し、その(淮南の)相、二千石が聴(き)きいれないことを恐れ、
淮南王劉安はそこで伍被と、先(さき)んじて相、二千石を殺すことを謀(はか)った。
偽失火宮中相二千石救火至即殺之計未決又欲令人衣求盜衣
宮中で失火(しっか)をよそおって、相、二千石が火を消そうとしたら、そこでこれを殺すに至ろうとした。計(はか)りごとが未(ま)だ決まらないうちに、また、人に令(れい)して求盗の衣(ころも)を着せ、
持羽檄從東方來呼曰南越兵入界欲因以發兵
羽檄(うげき 将軍が出す至急の命令文)を持たせ、東方より来させて、さけばせて曰く「南越の兵が国境に入った」と。因(よ)りて兵を発するを以ってすることを欲した。
乃使人至廬江會稽為求盜未發王問伍被曰
そこで人をつかわし廬江、會稽に至らせて求盗と為さしめようとした。未(ま)だ(計を)発さないうちに、淮南王劉安は伍被に問うた、曰く、
吾舉兵西鄉諸侯必有應我者即無應柰何被曰
「吾(われ)が兵を挙(あ)げて西に向えば、諸侯は必ず我(われ)に応ずる者があるだろう。もし応じなければ、どうしたらよいか?」と。伍被曰く、
南收衡山以擊廬江有尋陽之船守下雉之城結九江之浦
「南に衡山を収(おさ)めて、廬江を撃つを以ってし、尋陽の船を有(ゆう)して、下雉の城を守り、
九江の浦に交(まじ)わり、
絕豫章之口彊弩臨江而守以禁南郡之下東收江都會稽
豫章の口を絶(た)って、彊弩(おおゆみ)は江に臨(のぞ)んで守り、南の郡の下(くだ)るのを禁ずるを以ってし、東に江都、会稽を収(おさ)め、
南通勁越屈彊江淮猶可得延歲月之壽
南に強い越に通じ、江淮の間で屈強(くっきょう)になれば、猶(なお)、歳月(さいげつ)を延(の)ばすことの長命を得ることができるでしょう」と。
王曰善無以易此急則走越耳
淮南王劉安曰く、「善(よ)い、これにかえるものは無し。さしせまれば、越に逃走するのみ」と。