張湯者杜人也
張湯という者は杜の人である。
其父為長安丞出湯為兒守舍
その父は長安丞と為り、出かけたとき、張湯は家で子守をした。
還而鼠盜肉其父怒笞湯
還(かえ)って鼠(ねずみ)が肉を盗んでいたので、その父は怒り、張湯をむちうった。
湯掘窟得盜鼠及餘肉劾鼠掠治
張湯はほら穴を掘(ほ)って、盗んだ鼠、及び残った肉を得て、鼠をむちうって(掠治(りゃくち)=掠笞(りゃくち)?)苦しめて、
傳爰書訊鞫論報并取鼠與肉具獄磔堂下
爰書(えんしょ 確定裁判の判決書)をわたし、罪を調べたずねて報告(爰書は裁判の書類を交換して調べたことから)を論(ろん)じ、合わせて、鼠(ねずみ)と肉を取って、裁判を具(つぶさ)にして、堂の下に磔(はりつけ)にした。
其父見之視其文辭如老獄吏大驚遂使書獄
その父はこれを見て、その文辞(ぶんじ)が、老練な獄吏の如(ごと)くであると視(み)て、大いに驚き、遂(つい)に罪状を書かせるようにした。
父死后湯為長安吏久之
父の死後、張湯は長安吏に為り、これを久しくした。
周陽侯始為諸卿時嘗系長安湯傾身為之
周陽侯由は以前、諸(もろもろ)の卿に為っていた時、嘗(かつ)て長安につながれ、張湯が身を傾(かたむ)けてこれの為(ため)にした。
及出為侯大與湯交遍見湯貴人
出て侯に為るに及んで、大いに張湯と交(まじ)わり、遍(あまね)く張湯が貴人であると見た。
湯給事內史為寧成掾以湯為無害
張湯は事を内史に給(たま)わり、寧成を属官と為し、張湯を以って無害と為し、
言大府調為茂陵尉治方中
大府に言って、選ばれて茂陵尉と為さしめ、法を治(おさ)めて中(あ)てた。
武安侯為丞相徵湯為史時薦言之天子
武安侯田蚡が丞相に為ると、張湯を召して史と為さしめ、この時、これを天子(漢孝武帝劉徹)に薦言(せんげん)し、
補御史使案事
御史に補(おぎな)い、事(こと)を案(あん)じさせた。
治陳皇后蠱獄深竟黨與
陳皇后の蠱(まじないをして人を殺す)の獄事を取り調べ、深くして党与(組を作っている仲間)をきわめた。
於是上以為能稍遷至太中大夫
ここに於いて上(漢孝武帝劉徹は能力があると思い、次第に遷(うつ)して太中大夫に至らしめた。
與趙禹共定諸律令務在深文拘守職之吏
趙禹と諸(もろもろ)の律令を共定し、深い法文に在(あ)ることに務(つと)め、守職の役人に拘(かか)わった。
已而趙禹遷為中尉徙為少府而張湯為廷尉
しばらくして、趙禹が遷(うつ)されて中尉と為り、移って少府と為り、しこうして、張湯は廷尉と為り、
兩人交驩而兄事禹禹為人廉倨
両人はよろこんで交(まじ)わり、しこうして漢少府趙禹に兄のように仕(つか)えた。漢少府趙禹の人と為りは廉潔(れんけつ)でまっすぐだった。
張湯という者は杜の人である。
其父為長安丞出湯為兒守舍
その父は長安丞と為り、出かけたとき、張湯は家で子守をした。
還而鼠盜肉其父怒笞湯
還(かえ)って鼠(ねずみ)が肉を盗んでいたので、その父は怒り、張湯をむちうった。
湯掘窟得盜鼠及餘肉劾鼠掠治
張湯はほら穴を掘(ほ)って、盗んだ鼠、及び残った肉を得て、鼠をむちうって(掠治(りゃくち)=掠笞(りゃくち)?)苦しめて、
傳爰書訊鞫論報并取鼠與肉具獄磔堂下
爰書(えんしょ 確定裁判の判決書)をわたし、罪を調べたずねて報告(爰書は裁判の書類を交換して調べたことから)を論(ろん)じ、合わせて、鼠(ねずみ)と肉を取って、裁判を具(つぶさ)にして、堂の下に磔(はりつけ)にした。
其父見之視其文辭如老獄吏大驚遂使書獄
その父はこれを見て、その文辞(ぶんじ)が、老練な獄吏の如(ごと)くであると視(み)て、大いに驚き、遂(つい)に罪状を書かせるようにした。
父死后湯為長安吏久之
父の死後、張湯は長安吏に為り、これを久しくした。
周陽侯始為諸卿時嘗系長安湯傾身為之
周陽侯由は以前、諸(もろもろ)の卿に為っていた時、嘗(かつ)て長安につながれ、張湯が身を傾(かたむ)けてこれの為(ため)にした。
及出為侯大與湯交遍見湯貴人
出て侯に為るに及んで、大いに張湯と交(まじ)わり、遍(あまね)く張湯が貴人であると見た。
湯給事內史為寧成掾以湯為無害
張湯は事を内史に給(たま)わり、寧成を属官と為し、張湯を以って無害と為し、
言大府調為茂陵尉治方中
大府に言って、選ばれて茂陵尉と為さしめ、法を治(おさ)めて中(あ)てた。
武安侯為丞相徵湯為史時薦言之天子
武安侯田蚡が丞相に為ると、張湯を召して史と為さしめ、この時、これを天子(漢孝武帝劉徹)に薦言(せんげん)し、
補御史使案事
御史に補(おぎな)い、事(こと)を案(あん)じさせた。
治陳皇后蠱獄深竟黨與
陳皇后の蠱(まじないをして人を殺す)の獄事を取り調べ、深くして党与(組を作っている仲間)をきわめた。
於是上以為能稍遷至太中大夫
ここに於いて上(漢孝武帝劉徹は能力があると思い、次第に遷(うつ)して太中大夫に至らしめた。
與趙禹共定諸律令務在深文拘守職之吏
趙禹と諸(もろもろ)の律令を共定し、深い法文に在(あ)ることに務(つと)め、守職の役人に拘(かか)わった。
已而趙禹遷為中尉徙為少府而張湯為廷尉
しばらくして、趙禹が遷(うつ)されて中尉と為り、移って少府と為り、しこうして、張湯は廷尉と為り、
兩人交驩而兄事禹禹為人廉倨
両人はよろこんで交(まじ)わり、しこうして漢少府趙禹に兄のように仕(つか)えた。漢少府趙禹の人と為りは廉潔(れんけつ)でまっすぐだった。