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布之初反謂其將曰

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布之初反謂其將曰

淮南王英布(黥布)の叛(そむ)いたばかりのとき、その将軍に謂(い)った、曰く、

上老矣厭兵必不能來使諸將

「上(漢高帝劉邦)は老(お)いて戦いを厭(いと)い、必ず来ることはできないだろう。諸(もろもろ)の将軍をつかわしても、

諸將獨患淮陰彭越今皆已死餘不足畏也

諸(もろもろ)の将軍はただ、淮陰侯韓信、梁王彭越を患(うれ)えただけで、今ふたりともすでに死んでしまい、他(ほか)の者は畏(おそ)れるに足(た)りない」と。

故遂反果如薛公籌之東擊荊

故(ゆえ)に遂(つい)に叛(そむ)いた。果(は)たして元楚令尹の薛公のはかりごとの如(ごと)く、東に荊を撃(う)ち、

荊王劉賈走死富陵盡劫其兵

荊王劉賈は逃走して富陵で死んだ。ことごとくその兵を強奪(ごうだつ)して、

渡淮擊楚楚發兵與戰徐僮為三軍

淮を渡(わた)り楚を撃った。楚は兵を発してともに徐、僮間に戦い、三軍をつくって、

欲以相救為奇或說楚將曰

相(あい)救(すく)いあうを以ってするに奇計を為(な)そうと欲した。或(あ)る者が楚将軍に説(と)いた曰く、

布善用兵民素畏之且兵法

「英布(黥布)は用兵(ようへい)にすぐれ、民(たみ)は素(もと)よりこれを畏(おそ)れています。且(か)つ兵法(ひょうほう)では、

諸侯戰其地為散地今別為三彼敗吾一軍

諸侯がその地で戦えば、(諸侯は)権勢(けんせい)の無い立場と為(な)る、と。今、別(わ)けて三つの軍をつくり、彼が吾(わ)が一軍を敗(やぶ)れば、

餘皆走安能相救不聽

残りの軍は皆(みな)逃げ走り、どうして相(あい)救(すく)うことができましょうか」と。(楚将は)聞き入れなかった。

布果破其一軍其二軍散走

淮南王英布(黥布)は果たしてその一軍を破(やぶ)り、その二軍は散じて逃げ走った。

遂西與上兵遇蘄西會甀

遂(つい)に西へ進み、上(漢高帝劉邦)の兵と蘄の西の会甀で遭遇(そうぐう)した。

布兵精甚上乃壁庸城望布軍置陳如項籍軍

淮南王英布(黥布)の兵は精鋭ぞろいで、上(漢高帝劉邦)はそこで庸城で防御し、淮南王英布(黥布)軍が項籍(項羽)軍の如く並べ置かれているのを望(のぞ)み見て、

上惡之與布相望見遙謂布曰

上(漢高帝劉邦)はこれを憎(にく)んだ。淮南王英布(黥布)と互いに望(のぞ)み見て、遙(はる)か向こうの淮南王英布(黥布)に謂(い)った、曰く、

何苦而反布曰欲為帝耳

「何を苦しんで叛(そむ)いたのか」と。曰く淮南王英布(黥布)、「皇帝に為ることを欲しただけだ」と。

上怒罵之遂大戰布軍敗走渡淮

上(漢高帝劉邦)はこれを怒(おこ)り罵(ののし)り、遂に大いに戦った。淮南王英布(黥布)軍は敗走し、淮を渡って、

數止戰不利與百餘人走江南

たびたび戦いを止(と)めた。、不利(ふり)になり、百余人とともに江南に逃げ走った。

布故與番君婚以故長沙哀王使人紿布

淮南王英布(黥布)は以前、番君吳芮と縁組をした(番君吳芮の娘を娶った)ので、故(ゆえ)を以ってして、長沙哀王呉回(番君吳芮の孫)は人をつかわして淮南王英布(黥布)をあざむかせ、
  
偽與亡誘走越故信而隨之番陽

偽(いつわ)ってともに逃げ、越(えつ)に走ろうと誘(さそ)った。故(ゆえ)に信じ、番陽について行った。

番陽人殺布茲鄉民田舍遂滅黥布

番陽人が 淮南王英布(黥布)を茲鄉(村名)の民(たみ)のいなか家で殺して、遂(つい)に黥布(淮南王英布)を滅(ほろ)ぼした。

立皇子長為淮南王封賁赫為期思侯

皇帝の子の劉長を立てて淮南王と為(な)し、漢将軍賁赫(もと淮南中大夫賁赫)を封じて期思侯と為した。

諸將率多以功封者

諸(もろもろ)の将軍の率(ひき)いて、功を以って封ぜられた者は多かった。

太史公曰英布者其先豈春秋所見楚滅英六皋陶之後哉

太史公曰く、「英布(黥布)とは、その先祖(せんぞ)はなんと春秋に見られるところの、楚が英、六を滅ぼしたとあり、皋陶(人名)の子孫かな?

身被刑法何其拔興之暴也

身(み)みずから刑法を被(こうむ)りながら、なんとそのきわだって盛んになることの速かったことか。

項氏之所阬殺人以千萬數而布常為首虐

項氏の人を殺して穴埋めにするところは千、万を以って数(かぞ)えたが、英布(黥布)は常(つね)に首虐(しゅぎゃく 悪人のかしら)と為った。

功冠諸侯用此得王亦不免於身為世大僇

功績は諸侯に冠(かん)し、これによって王になるを得たが、また、身(み)みずからに於いて世(よ)の大いなるはずかしめと為るを免(まぬか)れなかった。

禍之興自愛姬殖妒媢生患竟以滅國!

禍(わざわい)の寵愛する姫(ひめ)より興(おこ)って増殖(ぞうしょく)するは、ねたみが患(うれ)いを生(う)み、とうとう国を滅(ほろ)ぼすを以ってした」と。

今日で史記 黥布列伝は終わりです。明日からは史記 淮陰侯列伝に入ります。

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