已而試補縣亭長數廢為吏以治獄至廷史
しばらくして県の亭長の試補(見習い)となって、たびたび廃(はい)された。役人に為って、獄事を取り調べ、廷史に至った。
事張湯遷為御史督盜賊殺傷甚多稍遷至廣平都尉
張湯に仕(つか)え、遷(うつ)されて御史と為った。盗賊を見張り、殺傷は甚(はなは)だ多く、次第に遷(うつ)されて広平都尉に至った。
擇郡中豪敢任吏十餘人以為爪牙皆把其陰重罪
郡中の豪強を択(えら)んで、敢(あ)えて役人に任ずること十余人、爪牙と為さしめるを以って、皆(みな)その陰(かげ)の重罪(じゅうざい)を把握(はあく)し、
而縱使督盜賊快其意所欲得
しこうしてゆるして盗賊を見張らせ、そのつかまえたいと欲するところの意を快(こころよ)くすれば、
此人雖有百罪弗法即有避因其事夷之亦滅宗
この人に百の罪が有ると雖(いえど)も法にかけず、すなわち避(さ)けることが有れば、その事に因(よ)りてこれを滅ぼし、また一族を滅ぼした。
以其故齊趙之郊盜賊不敢近廣平廣平聲為道不拾遺
その故(ゆえ)を以って、斉、趙の町外れの盗賊は敢(あ)えて広平に近づかず、広平の評判は道で落し物を拾わないとうわさされた。
上聞遷為河內太守
上(漢孝武帝劉徹)は聞いて、遷(うつ)して河内太守と為さしめた。
素居廣平時皆知河內豪姦之家及往九月而至
素(もと)より広平に住んでいた時から、河内の豪姦の家を皆(みな)知っており、河内に往くに及んで、九月にして至った。
令郡具私馬五十匹為驛自河內至長安
郡に令(れい)して、私馬五十頭を用意させ、駅次にさせて河内より長安に至った。
部吏如居廣平時方略捕郡中豪猾郡中豪猾相連坐千餘家
広平に居(い)た時の方略(ほうりゃく)の如(ごと)く、役人を部分けして、河内郡中の豪猾を捕(と)らえた。郡中の豪猾者はつぎつぎと連座(れんざ)すること一千余家だった。
上書請大者至族小者乃死家盡沒入償臧
上書して、大者は族刑に至り、小者はすなわち死刑で、家はことごとく賞金、賄賂(わいろ)を没収(ぼっしゅう)することを請(こ)うた。
奏行不過二三日得可事論報至流血十餘里
奏上の行いをして二、三日を過ぎず、事(こと)すべきを得た。報(罪人をさばくこと)を論じ、流血に至るは十余里におよんだ。
河內皆怪其奏以為神速
河内はその奏上を皆(みな)怪(あや)しみ、神のように速(はや)いと思った。
盡十二月郡中毋聲毋敢夜行野無犬吠之盜
十二月終わり、郡中に声無く、敢(あ)えて夜行はなく、野には犬吠(いぬぼ)えの盗賊が無くなった。
しばらくして県の亭長の試補(見習い)となって、たびたび廃(はい)された。役人に為って、獄事を取り調べ、廷史に至った。
事張湯遷為御史督盜賊殺傷甚多稍遷至廣平都尉
張湯に仕(つか)え、遷(うつ)されて御史と為った。盗賊を見張り、殺傷は甚(はなは)だ多く、次第に遷(うつ)されて広平都尉に至った。
擇郡中豪敢任吏十餘人以為爪牙皆把其陰重罪
郡中の豪強を択(えら)んで、敢(あ)えて役人に任ずること十余人、爪牙と為さしめるを以って、皆(みな)その陰(かげ)の重罪(じゅうざい)を把握(はあく)し、
而縱使督盜賊快其意所欲得
しこうしてゆるして盗賊を見張らせ、そのつかまえたいと欲するところの意を快(こころよ)くすれば、
此人雖有百罪弗法即有避因其事夷之亦滅宗
この人に百の罪が有ると雖(いえど)も法にかけず、すなわち避(さ)けることが有れば、その事に因(よ)りてこれを滅ぼし、また一族を滅ぼした。
以其故齊趙之郊盜賊不敢近廣平廣平聲為道不拾遺
その故(ゆえ)を以って、斉、趙の町外れの盗賊は敢(あ)えて広平に近づかず、広平の評判は道で落し物を拾わないとうわさされた。
上聞遷為河內太守
上(漢孝武帝劉徹)は聞いて、遷(うつ)して河内太守と為さしめた。
素居廣平時皆知河內豪姦之家及往九月而至
素(もと)より広平に住んでいた時から、河内の豪姦の家を皆(みな)知っており、河内に往くに及んで、九月にして至った。
令郡具私馬五十匹為驛自河內至長安
郡に令(れい)して、私馬五十頭を用意させ、駅次にさせて河内より長安に至った。
部吏如居廣平時方略捕郡中豪猾郡中豪猾相連坐千餘家
広平に居(い)た時の方略(ほうりゃく)の如(ごと)く、役人を部分けして、河内郡中の豪猾を捕(と)らえた。郡中の豪猾者はつぎつぎと連座(れんざ)すること一千余家だった。
上書請大者至族小者乃死家盡沒入償臧
上書して、大者は族刑に至り、小者はすなわち死刑で、家はことごとく賞金、賄賂(わいろ)を没収(ぼっしゅう)することを請(こ)うた。
奏行不過二三日得可事論報至流血十餘里
奏上の行いをして二、三日を過ぎず、事(こと)すべきを得た。報(罪人をさばくこと)を論じ、流血に至るは十余里におよんだ。
河內皆怪其奏以為神速
河内はその奏上を皆(みな)怪(あや)しみ、神のように速(はや)いと思った。
盡十二月郡中毋聲毋敢夜行野無犬吠之盜
十二月終わり、郡中に声無く、敢(あ)えて夜行はなく、野には犬吠(いぬぼ)えの盗賊が無くなった。