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優孟曰若無遠有所之

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優孟曰若無遠有所之

優孟曰く、「なんじは遠く無く行くところが有るでしょう」と。

即為孫叔敖衣冠抵掌談語

そこで、孫叔敖の衣冠(いかん)をつくり、ぽんと手をうってうちとけて話しをした。

歲餘像孫叔敖楚王及左右不能別也

一年余りして、孫叔敖のものまねをして、楚荘王熊侶及び左右は識別することができなかったのである。

莊王置酒優孟前為壽莊王大驚

楚荘王熊侶は酒宴を用意し、優孟は前に進み出て寿(ことほ)ぎを為した。楚荘王熊侶は大いに驚き、

以為孫叔敖復生也欲以為相優孟曰

孫叔敖が生きかえったと思い、相にしようと欲した。優孟曰く、

請歸與婦計之三日而為相

「帰って妻とともにこれを計(はか)ることを請(こ)う、三日したら相に為ります」と。

莊王許之三日後優孟復來

楚荘王熊侶はこれを聞入れた。三日後、優孟がまた来た。

王曰婦言謂何孟曰

楚荘王熊侶曰く、「婦人の言(げん)は何と謂(い)ったのか?」と。優孟曰く、

婦言慎無為楚相不足為也

「妻は慎(つつし)んで為(な)ることなかれ、楚相は為るに足(た)らないのであります。

如孫叔敖之為楚相盡忠為廉以治楚楚王得以霸

孫叔敖の楚相と為るが如(ごと)くは、忠を尽くして廉正を為して、楚を治(おさ)める以ってし、楚王は諸侯の旗頭(はたがしら)となることができました。

今死其子無立錐之地貧困負薪以自飲食

今、死んで、その子は錐(きり)を立てることのできるわずかな土地さえ無く、貧困して薪(まき)を背負い自ら生計を立てるを以ってしています。

必如孫叔敖不如自殺因歌曰

必ず孫叔敖の如(ごと)くであれば、自殺するにこしたことはありませんと言いました」と。因(よ)りて歌って曰く、

山居耕田苦難以得食起而為吏身貪鄙者餘財

「山に住み田を耕して苦労しても、食を得ることは難(むずか)しい。身を起こして役人に為れば、身(み)みずから田舎者を貪(むさぼ)って、財(ざい)を残し、

不顧恥辱身死家室富又恐受賕枉法

恥辱(ちじょく)を顧(かえり)みず。身は死んでも家族は富(と)むが、また恐(おそ)らく賄賂(わいろ)を受けて、法を無視し、

為姦觸大罪身死而家滅貪吏安可為也

不正を為せば大罪に触(ふ)れ、身(み)は死んで、家は滅(ほろ)ぶ。貪欲な役人にどうして為るものだろうか。

念為廉吏奉法守職竟死不敢為非廉吏安可為也

廉正な役人に為ることを念(ねん)じ、法を奉(たてまつ)って、職務を守り、とうとう死ぬまで
敢(あ)えて不正を為さず。廉正な役人にどうして為るものだろうか。

楚相孫叔敖持廉至死方今妻子窮困負薪而食不足為也

楚相の孫叔敖は廉正を維持して死に至り、まさに今、妻子は困窮して薪(まき)を背負って生計をたてている。(楚相に)為(な)るには足(た)らないのである」と。

於是莊王謝優孟乃召孫叔敖子

ここに於いて楚荘王熊侶は優孟に謝(しゃ)して、そこで孫叔敖の子を召(め)して、

封之寢丘四百戶以奉其祀

これに寝丘四百戸を封じ、その祭祀を奉(たてまつ)るを以ってした。

后十世不絕此知可以言時矣

後十世は絶えなかった。これ、好機に言うを以ってするべきであることを知っていたのである。

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