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其後二百餘年秦有優旃

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其後二百餘年秦有優旃

その二百余年後、秦に優旃がいた。

優旃者秦倡侏儒也

優旃という者は秦の芸人の小人である。

善為笑言然合於大道秦始皇時

善(よ)く、笑いばなしをしたが、然(しか)るに大道(人のふみおこなうべき真の道)において合致していた。秦の始皇帝嬴政の時、

置酒而天雨陛楯者皆沾寒

酒宴を催(もよお)し、天気は雨になり、きざはし(宮殿の階段)の護衛者が皆(みな)濡(ぬ)れてこごえていた。

優旃見而哀之謂之曰汝欲休乎

優旃は見てこれを哀(あわ)れみ、これに謂(い)った、曰く、「汝(なんじ)らは休みたいか?」と。

陛楯者皆曰幸甚優旃曰

きざはし(宮殿の階段)の護衛者は皆(みな)いわく、「幸いなること甚(はなは)だであります」と。優旃曰く、

我即呼汝汝疾應曰諾

「我(われ)がすなわち汝(なんじ)らを呼んだら、汝(なんじ)らはすばやく応(こた)えて「はい」というのです」と。

居有頃殿上上壽呼萬歲

しばらくして、宮殿の上で、寿(ことほ)ぎを申し上げて万歳(ばんざい)をさけんだ。

優旃臨檻大呼曰陛楯郎

優旃は階段の欄干(らんかん)を見下ろして大声で叫(さけ)んだ、曰く、「きざはし(宮殿の階段)の護衛官」と。

郎曰諾優旃曰

郎(官名)たちは曰く、「はい」と。優旃曰く、

汝雖長何益幸雨立

「汝(なんじ)らは背が高いと雖(いえど)も、何に益(えき)するのか、幸いにも雨の中に立っているのか?

我雖短也幸休居

我(われ)は背が低いといえども、幸いにも休んですわっているのに」と。(「雨」と「休」は韻が同じで、おそらく駄洒落を言った? また長と短、立と居(すわる)も対義語関係)

於是始皇使陛楯者得半相代

ここに於いて秦始皇帝嬴政はきざはしの護衛者をして半分にすることを得て互いに代(か)わらせた。

始皇嘗議欲大苑囿東至函谷關西至雍陳倉

秦始皇帝嬴政は嘗(かつ)て、東に函谷関に至り,西に雍、陳倉に至る大きな苑囿(えんゆう)を欲して議(ぎ)したことがある。

優旃曰善多縱禽獸於其中

優旃曰く、「よいです。その中に鳥、獣を多く放(はな)せば、

寇從東方來令麋鹿觸之足矣

外敵が東方から来たとき、大鹿や鹿に令してこれを角(つの)であたらせれば、足(た)りるでしょう (寇は囿と韻が同じ)」と。

始皇以故輟止

秦始皇帝嬴政は故(ゆえ)を以ってやめた。

二世立又欲漆其城

秦二世皇帝嬴胡亥が立ち、またその城壁に漆(うるし)をぬることを欲した。

優旃曰善主上雖無言臣固將請之

優旃曰く、「よいです。主上は言わなかったと雖(いえど)も、わたしは固(もと)よりまさにこれを請(こ)わんとしていました。

漆城雖於百姓愁費然佳哉

漆(うるし)の城壁は百姓に於いて費用を心配すると雖(いえど)も、然(しか)るに美しいかな。

漆城蕩蕩寇來不能上

漆の城壁は蕩蕩(とうとう)と平らで、外敵が来ても上(あ)がることができないでしょう。

即欲就之易為漆耳顧難為蔭室

そこで、これに就(つ)くことを欲するのですが、漆(うるし)をぬることだけは簡単でしょうが、顧(かえり)みて、おおって日陰にする部屋をつくるのは難(むずか)しいでしょう (漆と室が韻をふんでいる)」と。

於是二世笑之以其故止

ここに於いて秦二世皇帝嬴胡亥はこれを笑い、その故(ゆえ)を以って止(や)めた。

居無何二世殺死優旃歸漢數年而卒

しばらくして、秦二世皇帝嬴胡亥は殺されて死に、優旃は漢に帰属して、数年して亡くなった。

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