傳曰取前足臑骨穿佩之取龜置室西北隅懸之
伝曰く、前足の骨を取って穴をあけてこれを佩（お）びて、亀を取って部屋の西北の隅（すみ）にこれを懸（か）けて置けば、
以入深山大林中不惑
深山、大林の中に入るを以ってしたとき、惑（まど）わない、と。
臣為郎時見萬畢石朱方傳曰
わたしが郎（官名）だった時、万畢の石朱方に見（まみ）え、伝えて曰く、
有神龜在江南嘉林中嘉林者獸無虎狼
『神亀の江南の嘉林の中にいるものが有る。嘉林とは、獣（けもの）は虎（とら）狼（おおかみ）がおらず、
鳥無鴟梟草無毒螫野火不及斧斤不至是為嘉林
鳥はふくろうがおらず、草は毒や棘（とげ）がなく、野火は及ばず、おの、まさかりは至らず、ここに嘉林と為した。
龜在其中常巢於芳蓮之上左脅書文曰
亀はその中にいて、常（つね）に芳（かんば）しい蓮（はす）の上に巣（す）くっている。左脅書の文に曰く、
甲子重光得我者匹夫為人君有土正諸侯得我為帝王
甲子（きのえね）の年は立派な天子が次々に世に出て、我（われ）を得た者は匹夫（ひっぷ）でも人君に為り、土地を有して正し、諸侯が我（われ）を得れば帝王に為る、と。
求之於白蛇蟠杅林中者齋戒以待譺然
山桑の林の中の白蛇（しろへび）がとぐろを巻いているところでこれを求める者は、齋戒（さいかい ものいみすること）して待（ま）つを以ってし、譺然となぞらえて、
狀如有人來告之因以醮酒佗發求之三宿而得
人がここに告げに来るものが有るが如（ごと）くのようすにして、因（よ）りて酒その他を祭（まつ）るを以って発し、これを求めるは三日宿泊して得られる』と。
由是觀之豈不偉哉笔龜可不敬與
是（これ）由（よ）りこれを観（み）るに、どうして立派ではないだろうかな。すぐれた亀（笔＝筆（聿いつ）＝逸（いつ）？）は敬（うやま）わないべきか？
南方老人用龜支床足行二十餘歲
南方に老人が亀を用いて寝台の足を支（ささ）え、行くこと二十余年、
老人死移床龜尚生不死
老人が死んで、寝台を移すと、亀は尚（なお）死なずに生きていた。
龜能行氣導引問者曰龜至神若此
亀は導引（一種の深呼吸）して気（き）を行うことができる。問う者が曰く、亀はこのごとく神に至るというのに、
然太卜官得生龜何為輒殺取其甲乎
然（しか）るに太卜官は生きた亀を得て、どうしてことごとく殺してその甲羅（こうら）を取ることをするのか？、と。
近世江上人有得名龜畜置之家因大富
近世、江のほとりの人に名亀を得た者が有り、これを飼（か）って置くと、家は因（よ）りて大いに富（と）んだ。
與人議欲遣去人教殺之勿遣遣之破人家
人と議（ぎ）して、送り去らせようと欲した。人はこれを殺し、送ることなかれ、これを送れば人の家は破滅すると教えた。
龜見夢曰送我水中無殺吾也
亀は夢を見て曰く、我（われ）を川の中に送って、吾（われ）を殺すことなかれ、と。
其家終殺之殺之后身死家不利
その家はとうとうこれを殺した。これを殺した後、身（み）は死に、家には利（り）さなかった。
人民與君王者異道人民得名龜其狀類不宜殺也
人民と君王とは道が異（こと）なる。人民が名亀を得たら、その状況は宜（よろ）しく殺すべきではない類（たぐい）なのであるが、
以往古故事言之古明王聖主皆殺而用之
むかしの故事（こじ）を以ってこれを言うと、古（いにしえ）の明王、聖王は皆（みな）殺してこれを用いた。
宋元王時得龜亦殺而用之
宋元王の時、亀を得て、また殺してこれを用いた。
謹連其事於左方令好事者觀擇其中焉
謹（つつし）んでその事を左方に連（つら）ねたので、事を好む者にその中（あ）てるを考え択（えら）ばせしむ。
宋元王二年江使神龜使於河
宋元王二年、江の使者の神亀が河に使（つか）いし、
至於泉陽漁者豫且舉網得而囚之
泉陽に至ると、漁者の豫且が網（あみ）を挙（あ）げてつかまえてこれを囚（とら）え、
置之籠中夜半龜來見夢於宋元王曰
これを籠（かご）の中に置いた。夜半に、亀が宋元王の夢枕に立ち、曰く
我為江使於河而幕網當吾路
我（われ）は江の使者として河に行き、しこうして幕網が吾（われ）の往く手に当（あ）たり、
泉陽豫且得我我不能去身在患中莫可告語
泉陽の豫且が我（われ）をつかまえ、我（われ）は去ることができない。身（み）は患（うれ）いの中に在（あ）り、話しを告げるべきものがいない。
王有義故來告訴元王然而悟
王は徳、義が有り、故（ゆえ）に訴えを告げに来た、と。宋元王は然（てきぜん）としてびくびくと恐れて悟（さと）った。
伝曰く、前足の骨を取って穴をあけてこれを佩（お）びて、亀を取って部屋の西北の隅（すみ）にこれを懸（か）けて置けば、
以入深山大林中不惑
深山、大林の中に入るを以ってしたとき、惑（まど）わない、と。
臣為郎時見萬畢石朱方傳曰
わたしが郎（官名）だった時、万畢の石朱方に見（まみ）え、伝えて曰く、
有神龜在江南嘉林中嘉林者獸無虎狼
『神亀の江南の嘉林の中にいるものが有る。嘉林とは、獣（けもの）は虎（とら）狼（おおかみ）がおらず、
鳥無鴟梟草無毒螫野火不及斧斤不至是為嘉林
鳥はふくろうがおらず、草は毒や棘（とげ）がなく、野火は及ばず、おの、まさかりは至らず、ここに嘉林と為した。
龜在其中常巢於芳蓮之上左脅書文曰
亀はその中にいて、常（つね）に芳（かんば）しい蓮（はす）の上に巣（す）くっている。左脅書の文に曰く、
甲子重光得我者匹夫為人君有土正諸侯得我為帝王
甲子（きのえね）の年は立派な天子が次々に世に出て、我（われ）を得た者は匹夫（ひっぷ）でも人君に為り、土地を有して正し、諸侯が我（われ）を得れば帝王に為る、と。
求之於白蛇蟠杅林中者齋戒以待譺然
山桑の林の中の白蛇（しろへび）がとぐろを巻いているところでこれを求める者は、齋戒（さいかい ものいみすること）して待（ま）つを以ってし、譺然となぞらえて、
狀如有人來告之因以醮酒佗發求之三宿而得
人がここに告げに来るものが有るが如（ごと）くのようすにして、因（よ）りて酒その他を祭（まつ）るを以って発し、これを求めるは三日宿泊して得られる』と。
由是觀之豈不偉哉笔龜可不敬與
是（これ）由（よ）りこれを観（み）るに、どうして立派ではないだろうかな。すぐれた亀（笔＝筆（聿いつ）＝逸（いつ）？）は敬（うやま）わないべきか？
南方老人用龜支床足行二十餘歲
南方に老人が亀を用いて寝台の足を支（ささ）え、行くこと二十余年、
老人死移床龜尚生不死
老人が死んで、寝台を移すと、亀は尚（なお）死なずに生きていた。
龜能行氣導引問者曰龜至神若此
亀は導引（一種の深呼吸）して気（き）を行うことができる。問う者が曰く、亀はこのごとく神に至るというのに、
然太卜官得生龜何為輒殺取其甲乎
然（しか）るに太卜官は生きた亀を得て、どうしてことごとく殺してその甲羅（こうら）を取ることをするのか？、と。
近世江上人有得名龜畜置之家因大富
近世、江のほとりの人に名亀を得た者が有り、これを飼（か）って置くと、家は因（よ）りて大いに富（と）んだ。
與人議欲遣去人教殺之勿遣遣之破人家
人と議（ぎ）して、送り去らせようと欲した。人はこれを殺し、送ることなかれ、これを送れば人の家は破滅すると教えた。
龜見夢曰送我水中無殺吾也
亀は夢を見て曰く、我（われ）を川の中に送って、吾（われ）を殺すことなかれ、と。
其家終殺之殺之后身死家不利
その家はとうとうこれを殺した。これを殺した後、身（み）は死に、家には利（り）さなかった。
人民與君王者異道人民得名龜其狀類不宜殺也
人民と君王とは道が異（こと）なる。人民が名亀を得たら、その状況は宜（よろ）しく殺すべきではない類（たぐい）なのであるが、
以往古故事言之古明王聖主皆殺而用之
むかしの故事（こじ）を以ってこれを言うと、古（いにしえ）の明王、聖王は皆（みな）殺してこれを用いた。
宋元王時得龜亦殺而用之
宋元王の時、亀を得て、また殺してこれを用いた。
謹連其事於左方令好事者觀擇其中焉
謹（つつし）んでその事を左方に連（つら）ねたので、事を好む者にその中（あ）てるを考え択（えら）ばせしむ。
宋元王二年江使神龜使於河
宋元王二年、江の使者の神亀が河に使（つか）いし、
至於泉陽漁者豫且舉網得而囚之
泉陽に至ると、漁者の豫且が網（あみ）を挙（あ）げてつかまえてこれを囚（とら）え、
置之籠中夜半龜來見夢於宋元王曰
これを籠（かご）の中に置いた。夜半に、亀が宋元王の夢枕に立ち、曰く
我為江使於河而幕網當吾路
我（われ）は江の使者として河に行き、しこうして幕網が吾（われ）の往く手に当（あ）たり、
泉陽豫且得我我不能去身在患中莫可告語
泉陽の豫且が我（われ）をつかまえ、我（われ）は去ることができない。身（み）は患（うれ）いの中に在（あ）り、話しを告げるべきものがいない。
王有義故來告訴元王然而悟
王は徳、義が有り、故（ゆえ）に訴えを告げに来た、と。宋元王は然（てきぜん）としてびくびくと恐れて悟（さと）った。