元王慨然而嘆曰夫逆人之使絕人之謀是不暴乎
宋元王は慨然(がいぜん)となげいてため息をつき、曰く、『それ、人の使(つか)いに逆(さか)らい、人の謀(はかりごと)を絶(た)つは、これ暴挙(ぼうきょ)ではないか?
取人之有以自為寶是不彊乎
人の有するものを取って、自らの宝(たから)と為すは、これ強引(ごういん)ではないか?
寡人聞之暴得者必暴亡彊取者必后無功
わたしはこれを聞く、荒々しく得た者は必ず荒々しく亡(ほろ)び、強引に取った者は必ず後(のち)に手柄がなくなる、と。
桀紂暴彊身死國亡今我聽子是無仁義之名而有暴彊之道
夏桀王、殷紂王は暴強で、身(み)は死んで国は亡(ほろ)びた。今、我(われ)がなんじを聴き入れれば、これ仁義の名声を無くして暴強の道を有(ゆう)する。
江河為湯武我為桀紂未見其利恐離其咎
江、河が殷湯王、周武王とするなら、我(われ)は夏桀王、殷紂王と為る。未(ま)だその利(り)を見ないうちに、恐(おそ)らくその咎(とが)にあうだろう。
寡人狐疑安事此寶趣駕送龜勿令久留
わたしはひどく疑(うたが)う、どうしてこの宝(たから)につとめるのかを。馬車を趣(おもむ)かせて亀を送り、久しく留(とど)めさしめることなかれ』と。
衛平對曰不然王其無患
宋博士衛平は応(こた)えて曰く、『そうではありません。王はその患(うれ)えることなかれ。
天地之累石為山高而不壞地得為安
天と地の間は、石を積み重ねて山ができます。高くして壊(こわ)れなければ、地は安んずるを為すことができます。
故云物或危而顧安或輕而不可遷
故(ゆえ)に云(い)う、物の或(あ)るものは危(あや)うくてもかえって安(やす)んじ、
物の或(あ)るものは軽くても遷(うつ)すことができず、
人或忠信而不如誕謾或醜惡而宜大官或美好佳麗而為眾人患
人の或(あ)るものは忠信でも誕謾(たんまん みだりに大きな事を言って真実性がないこと)にすぎず、人の或(あ)るものは醜悪でも大官にふさわしく、人の或(あ)るものは美好佳麗でも衆人の患(うれ)と為る、と。
非神聖人莫能盡言春秋冬夏或暑或寒
神、聖人で非(あら)ざれば、言い尽くすことができるものはいません。春秋冬夏は、或(あ)るものは暑(あつ)く、或(あ)るものは寒いです。
寒暑不和賊氣相奸同歲異節其時使然
寒暑は調和せず、賊気(ぞくき)は互いに侵(おか)します。同じ歳(とし)に季節を異(こと)にして、その四季にそのようにさせ、
故令春生夏長秋收冬藏
故(ゆえ)に春に芽生(めば)えさせ、夏に生長させ、秋に収穫させ、冬に蔵(くら)に納めるのです。
或為仁義或為暴彊暴彊有鄉仁義有時
或(あ)るものは仁義を為して、或(あ)るものは暴強に為ります。暴強は郷(さと)を有(ゆう)し、仁義は治( 時(じ)=治(じ)?)を有します。
萬物盡然不可勝治大王聽臣臣請悉言之
万物がことごとく然(しか)りで、すべて治(おさ)めることはできません。
大王がわたしを聴き入れれば、わたしはことごとくこれを言うことを請(こ)う。
天出五色以辨白地生五穀以知善惡
天は五色(青、黄、赤、白、黒)を出して、白黒を区別するを以ってし、土地は五穀(ごこく)を生(は)やして、善悪を知るを以ってし、
人民莫知辨也與禽獸相若谷居而穴處不知田作
人民が区別を知らなければ、禽獣(きんじゅう)と相(あい)類似して、谷間に居住して穴(あな)に処(ところ)し、耕作(こうさく)を知らず、
天下禍亂陰陽相錯
天下は禍(わざわ)い乱(みだ)れ、陰陽(いんよう)は相(あい)交錯(こうさく)します。
宋元王は慨然(がいぜん)となげいてため息をつき、曰く、『それ、人の使(つか)いに逆(さか)らい、人の謀(はかりごと)を絶(た)つは、これ暴挙(ぼうきょ)ではないか?
取人之有以自為寶是不彊乎
人の有するものを取って、自らの宝(たから)と為すは、これ強引(ごういん)ではないか?
寡人聞之暴得者必暴亡彊取者必后無功
わたしはこれを聞く、荒々しく得た者は必ず荒々しく亡(ほろ)び、強引に取った者は必ず後(のち)に手柄がなくなる、と。
桀紂暴彊身死國亡今我聽子是無仁義之名而有暴彊之道
夏桀王、殷紂王は暴強で、身(み)は死んで国は亡(ほろ)びた。今、我(われ)がなんじを聴き入れれば、これ仁義の名声を無くして暴強の道を有(ゆう)する。
江河為湯武我為桀紂未見其利恐離其咎
江、河が殷湯王、周武王とするなら、我(われ)は夏桀王、殷紂王と為る。未(ま)だその利(り)を見ないうちに、恐(おそ)らくその咎(とが)にあうだろう。
寡人狐疑安事此寶趣駕送龜勿令久留
わたしはひどく疑(うたが)う、どうしてこの宝(たから)につとめるのかを。馬車を趣(おもむ)かせて亀を送り、久しく留(とど)めさしめることなかれ』と。
衛平對曰不然王其無患
宋博士衛平は応(こた)えて曰く、『そうではありません。王はその患(うれ)えることなかれ。
天地之累石為山高而不壞地得為安
天と地の間は、石を積み重ねて山ができます。高くして壊(こわ)れなければ、地は安んずるを為すことができます。
故云物或危而顧安或輕而不可遷
故(ゆえ)に云(い)う、物の或(あ)るものは危(あや)うくてもかえって安(やす)んじ、
物の或(あ)るものは軽くても遷(うつ)すことができず、
人或忠信而不如誕謾或醜惡而宜大官或美好佳麗而為眾人患
人の或(あ)るものは忠信でも誕謾(たんまん みだりに大きな事を言って真実性がないこと)にすぎず、人の或(あ)るものは醜悪でも大官にふさわしく、人の或(あ)るものは美好佳麗でも衆人の患(うれ)と為る、と。
非神聖人莫能盡言春秋冬夏或暑或寒
神、聖人で非(あら)ざれば、言い尽くすことができるものはいません。春秋冬夏は、或(あ)るものは暑(あつ)く、或(あ)るものは寒いです。
寒暑不和賊氣相奸同歲異節其時使然
寒暑は調和せず、賊気(ぞくき)は互いに侵(おか)します。同じ歳(とし)に季節を異(こと)にして、その四季にそのようにさせ、
故令春生夏長秋收冬藏
故(ゆえ)に春に芽生(めば)えさせ、夏に生長させ、秋に収穫させ、冬に蔵(くら)に納めるのです。
或為仁義或為暴彊暴彊有鄉仁義有時
或(あ)るものは仁義を為して、或(あ)るものは暴強に為ります。暴強は郷(さと)を有(ゆう)し、仁義は治( 時(じ)=治(じ)?)を有します。
萬物盡然不可勝治大王聽臣臣請悉言之
万物がことごとく然(しか)りで、すべて治(おさ)めることはできません。
大王がわたしを聴き入れれば、わたしはことごとくこれを言うことを請(こ)う。
天出五色以辨白地生五穀以知善惡
天は五色(青、黄、赤、白、黒)を出して、白黒を区別するを以ってし、土地は五穀(ごこく)を生(は)やして、善悪を知るを以ってし、
人民莫知辨也與禽獸相若谷居而穴處不知田作
人民が区別を知らなければ、禽獣(きんじゅう)と相(あい)類似して、谷間に居住して穴(あな)に処(ところ)し、耕作(こうさく)を知らず、
天下禍亂陰陽相錯
天下は禍(わざわ)い乱(みだ)れ、陰陽(いんよう)は相(あい)交錯(こうさく)します。