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Channel: 倭人伝を解く
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悤悤疾疾通而不相擇

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悤悤疾疾通而不相擇妖孽數見傳為單薄

悤悤疾疾とあわただしく速く、通じて相(あい)区別せず、奇怪なひこばえがたびたび現われ、受継いでも単弱(たんじゃく)と為ります。

聖人別其生使無相獲禽獸有牝牡置之山原

聖人がその生命を別(わ)けて、相(あい)奪い取ること無くさしめ、禽獣(きんじゅう)には牝(めす)牡(おす)を有(ゆう)し、山、原にこれを置き、

鳥有雌雄布之林澤有介之蟲置之谿谷

鳥には雌(めす)雄(おす)を有(ゆう)し、林、沢にこれを布(し)き、甲羅(こうら)を虫に有(ゆう)して、これを渓谷(けいこく)に置きました。

故牧人民為之城郭內經閭術外為阡陌

故(ゆえ)に人民をおさめてこの城郭(じょうかく)をつくり、内(うち)に陣(じん)の組み方をおさめ、外(そと)に阡陌(南北のあぜ道と東西のあぜ道)をつくりました。

夫妻男女賦之田宅列其室屋

夫妻の男女は田宅を与(あた)えられ、その家屋を分(わ)けました。

為之圖籍別其名族立官置吏勸以爵祿

この図籍をつくり、その名族を別(わ)け、官を立てて役人を置き、勧(すす)めるに爵禄(しゃくろく)を以ってし、

衣以桑麻養以五穀耕之耰之鉏之耨之

衣(ころも)は桑(くわ おそらく絹)麻(あさ)を以ってし、養うに五穀(ごこく)を以ってしました。耕して土をならし、鍬(くわ)で雑草をとり、

口得所嗜目得所美身受其利

口は好きなものを得て、目は美しいものを得て、身(み)はその利(り)を受けます。

以是觀之非彊不至故曰田者不彊囷倉不盈

これを以ってこれを観(み)るに、強くなければ至りません。故(ゆえ)に曰く、耕す者が強くなければ、囷倉(きんそう 穀物を入れる倉)は満たされず、

商賈不彊不得其贏婦女不彊布帛不精

商人が強くなければ、その利益を得られず、婦女が強くなければ、織物は美しくなく、

官御不彊其勢不成大將不彊卒不使令

官(役所)の統治が強くなければ、その勢いは成(な)らず、大将が強くなければ、兵は命令に使われず、

侯王不彊沒世無名故云彊者

侯、王が強くなければ、世に没して名声はありません。故(ゆえ)に云(い)う、強いとは、

事之始也分之理也物之紀也

事の始まりであり、本分(ほんぶん)の道理(どうり)であり、物(もの)のすじ道であります。

所求於彊無不有也王以為不然

強に於いて求めるところは、有さないものはありません。王はそうではないと為すを以ってしますが、

王獨不聞玉櫝隻雉出於昆山

王はただ聞いていませんか、宝石の箱、独特な雉(きじ)が昆山より産出し、

明月之珠出於四海鐫石拌蚌傳賣於市

名月の珠(貝の珠(たま))は四方の海より産出し、石を切って、蚌(からすがいの一種)を割(さ)き、市(いち)に於いて広く売られていることを。

聖人得之以為大寶大寶所在乃為天子

聖人はこれを得て、大宝と為すを以ってします。大宝の在(あ)るところは、すなわち天子に為ります。

今王自以為暴不如拌蚌於海也

今、王は自らを暴と為すを以ってしましたが、海で蚌(からす貝の一種)を割(さ)くにこしたことはありません。

自以為彊不過鐫石於昆山也

自らを強と為すを以ってしましたが、昆山で石を切りだすに過ぎません。

取者無咎寶者無患今龜使來抵網

取っても咎(とが)は無く、宝(たから)にしても患(うれ)いはありません。今、亀の使(つか)いが網(あみ)にかかって来て、

而遭漁者得之見夢自言是國之寶也王何憂焉

しこうして、漁者がこれを得るに遭(あ)い、夢を見させて自ら言うは、これ、国の宝であり、王はどうして憂(うれ)えるのでしょうか』と。

元王曰不然寡人聞之諫者福也諛者賊也

宋元王曰く、「そうではない。わたしはこれを聞く、諌(いさ)めるとは福(ふく)であり、謗(そし)るとは害(がい)であると。

人主聽諛是愚惑也雖然禍不妄至福不徒來

人主が謗(そし)りを聴き入れれば、これ、愚(おろ)かな惑(まど)いであるが、然(しか)りと雖(いえど)も、禍(わざわい)はみだりに至らず、福(ふく)はむだには来ない。

天地合氣以生百財陰陽有分不離四時

天地が気(き)を合わせ、多くの財物を生じさせるを以ってし、陰陽(いんよう)には分(ぶ)が有って、四季にそむかず、

十有二月日至為期聖人徹焉身乃無災

十と二月に、日はまる一年に至る。聖人はつらぬきとおして、身(み)はすなわち災(わざわ)いが無くなる。

明王用之人莫敢欺故云福之至也人自生之

明王がこれを用いれば、人の敢(あ)えて欺(あざむ)く者はなくなる。故(ゆえ)に云う、福(ふく)が至るは、人が自(みずか)らこれを生じさせ、

禍之至也人自成之禍與福同刑與雙

禍(わざわい)が至るは、人が自(みずか)らこれを成(な)し、禍(わざわい)は福(ふく)と同じであり、刑罰は恩徳と対(つい)であると。

聖人察之以知吉凶桀紂之時與天爭功擁遏鬼神使不得通

聖人はこれを察して、吉凶を知るを以ってする。夏桀王、殷紂王の時、天と手柄を争(あらそ)い、鬼神をおさえとどめて、通(かよ)うを得ないようにさせた。

是固已無道矣諛臣有眾桀有諛臣名曰趙梁

これ、固(もと)よりすでに無道(むどう)であり、謗(そし)る臣下が多く有(ゆう)される。夏桀王は謗(そし)る臣下を有(ゆう)し、名は趙梁といった。

教為無道勸以貪狼系湯夏臺殺關龍逢

無道(むどう)に為ることを教え、勧(すす)めるに貪欲(どんよく)な狼(おおかみ)を以ってした。
殷湯王を夏台につなぎ、関龍逢を殺した。

左右恐死偷諛於傍國危於累卵皆曰無傷

左右は死を恐れ、傍(かたわ)らでかりそめに謗(そし)った。国は卵(たまご)を積み重ねるより危(あや)うくなり、皆(みな)曰く、傷(きず)つけることなかれ、と。

稱樂萬歲或曰未央蔽其耳目與之詐狂

楽しく万歳(ばんざい)を称(とな)えたが、或(あ)る者は曰く、未(ま)だ調和していない、と。
その耳、目を蔽(おお)って、ともに狂(くる)ったふりをした。

湯卒伐桀身死國亡聽其諛臣身獨受殃

殷湯王はとうとう夏桀王を征伐(せいばつ)し、身(み)は死んで国は亡(ほろ)びた。その謗(そし)る臣下を聴き入れて、身(み)はただ、とがめを受けただけだった。

春秋著之至今不忘紂有諛臣名為左彊

春秋がこれを著(あらわ)して、今に至っても忘られない。殷紂王も謗(そし)る臣下を有(ゆう)し、名は左彊といった。

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