漢王遣張耳與信俱引兵東北擊趙代
漢王劉邦は張耳を遣(つか)わし、漢左丞相韓信大将軍とともにつれだって、兵を引き東北に進み、趙、代を撃(う)った。
後九月破代兵禽夏說閼與
九ヶ月後、代兵を破り、夏説(代宰相)を閼与で禽囚(きんしゅう)にし、
信之下魏破代漢輒使人收其精兵詣滎陽以距楚
漢左丞相韓信大将軍の西魏を下(くだ)し、代を破(やぶ)り、漢はそのたびごとに人をしてその精兵(せいへい)を収(おさ)めさせ、栄陽に詣(もう)でて、楚と対峙(たいじ)した。
信與張耳以兵數萬欲東下井陘擊趙
漢左丞相韓信大将軍は張耳と兵数万人を以って、東に井陘を下(くだ)り趙を撃(う)つことを欲した。
趙王成安君陳餘聞漢且襲之也
趙王趙歇、成安君陳余(代王趙傅陳余)は漢がまさにこれを襲(おそ)わんとしていると聞き、
聚兵井陘口號稱二十萬
兵を(趙の)井陘の入り口に集め、号して二十万と称した。
廣武君李左車說成安君曰
広武君李左車が成安君陳余(代王趙傅陳余)を説いて曰く、
聞漢將韓信涉西河虜魏王禽夏說
「漢将韓信が西河を渉(わた)り、西魏王魏豹を虜(とりこ)にして、夏説(代宰相)を禽囚(きんしゅう)にしたと聞きます。
新喋血閼與今乃輔以張耳議欲下趙
新たに(趙の)閼与で血を啜(すす)って盟約し、今、すなわち輔佐(ほさ)は張耳を以ってし、
議(ぎ)して趙を下(くだ)すことを欲し、
此乘勝而去國遠鬬其鋒不可當
これ、勝ちに乗(じょう)じて、国を去ること遠く闘(たたか)い、その切っ先を当(あ)てるべきではありません。
臣聞千里餽糧士有饑色樵蘇後爨師不宿飽
わたしは聞きます、千里の食糧運搬は士に餓(う)えの色を有(ゆう)すると。木をきり草を刈って後(のち)、炊飯(すいはん)し、軍は長い間腹いっぱいに食べていません。
今井陘之道車不得方軌騎不得成列
今、井陘の道は、車はわだちを並べることが得られず、騎兵は列(れつ)を成(な)すことが得られず、
行數百里其勢糧食必在其後
数百里(一里150m換算で約30~45km)行けば、その連隊の食糧は必ずその後(うし)ろに在(あ)るでしょう。
願足下假臣奇兵三萬人從道絕其輜重
願わくは、足下(代王趙傅陳余)はわたしに奇兵(きへい)三万人を与(あた)えてください。ぬけ道からその荷車(にぐるま)を絶(た)ち、
足下深溝高壘堅營勿與戰
足下(代王趙傅陳余)は堀(ほり)を深くし塁壁(るいへき)を高くして、堅(かた)く守ってともに戦うことなかれ。
彼前不得鬬退不得還吾奇兵絕其後
彼らが前進しても闘(たたか)うことができず、退(しりぞ)いても還(かえ)えることができません。
吾(わ)が奇兵がその後(うし)ろを絶ち切り、
使野無所掠,不至十日而兩將之頭可致於戲下
荒野(こうや)をして掠(かす)めるところ無く、十日もたたないうちにして、両将(漢左丞相韓信大将軍、張耳)の頭(あたま)は旗(はた)の下(もと)に招(まね)くことができます。
願君留意臣之計否必為二子所禽矣
願わくは、君にはわたしの計の意(い)をお留(とど)めください。そうしないと、必ず二人の禽囚(きんしゅう)するところと為るでしょう」と。
漢王劉邦は張耳を遣(つか)わし、漢左丞相韓信大将軍とともにつれだって、兵を引き東北に進み、趙、代を撃(う)った。
後九月破代兵禽夏說閼與
九ヶ月後、代兵を破り、夏説(代宰相)を閼与で禽囚(きんしゅう)にし、
信之下魏破代漢輒使人收其精兵詣滎陽以距楚
漢左丞相韓信大将軍の西魏を下(くだ)し、代を破(やぶ)り、漢はそのたびごとに人をしてその精兵(せいへい)を収(おさ)めさせ、栄陽に詣(もう)でて、楚と対峙(たいじ)した。
信與張耳以兵數萬欲東下井陘擊趙
漢左丞相韓信大将軍は張耳と兵数万人を以って、東に井陘を下(くだ)り趙を撃(う)つことを欲した。
趙王成安君陳餘聞漢且襲之也
趙王趙歇、成安君陳余(代王趙傅陳余)は漢がまさにこれを襲(おそ)わんとしていると聞き、
聚兵井陘口號稱二十萬
兵を(趙の)井陘の入り口に集め、号して二十万と称した。
廣武君李左車說成安君曰
広武君李左車が成安君陳余(代王趙傅陳余)を説いて曰く、
聞漢將韓信涉西河虜魏王禽夏說
「漢将韓信が西河を渉(わた)り、西魏王魏豹を虜(とりこ)にして、夏説(代宰相)を禽囚(きんしゅう)にしたと聞きます。
新喋血閼與今乃輔以張耳議欲下趙
新たに(趙の)閼与で血を啜(すす)って盟約し、今、すなわち輔佐(ほさ)は張耳を以ってし、
議(ぎ)して趙を下(くだ)すことを欲し、
此乘勝而去國遠鬬其鋒不可當
これ、勝ちに乗(じょう)じて、国を去ること遠く闘(たたか)い、その切っ先を当(あ)てるべきではありません。
臣聞千里餽糧士有饑色樵蘇後爨師不宿飽
わたしは聞きます、千里の食糧運搬は士に餓(う)えの色を有(ゆう)すると。木をきり草を刈って後(のち)、炊飯(すいはん)し、軍は長い間腹いっぱいに食べていません。
今井陘之道車不得方軌騎不得成列
今、井陘の道は、車はわだちを並べることが得られず、騎兵は列(れつ)を成(な)すことが得られず、
行數百里其勢糧食必在其後
数百里(一里150m換算で約30~45km)行けば、その連隊の食糧は必ずその後(うし)ろに在(あ)るでしょう。
願足下假臣奇兵三萬人從道絕其輜重
願わくは、足下(代王趙傅陳余)はわたしに奇兵(きへい)三万人を与(あた)えてください。ぬけ道からその荷車(にぐるま)を絶(た)ち、
足下深溝高壘堅營勿與戰
足下(代王趙傅陳余)は堀(ほり)を深くし塁壁(るいへき)を高くして、堅(かた)く守ってともに戦うことなかれ。
彼前不得鬬退不得還吾奇兵絕其後
彼らが前進しても闘(たたか)うことができず、退(しりぞ)いても還(かえ)えることができません。
吾(わ)が奇兵がその後(うし)ろを絶ち切り、
使野無所掠,不至十日而兩將之頭可致於戲下
荒野(こうや)をして掠(かす)めるところ無く、十日もたたないうちにして、両将(漢左丞相韓信大将軍、張耳)の頭(あたま)は旗(はた)の下(もと)に招(まね)くことができます。
願君留意臣之計否必為二子所禽矣
願わくは、君にはわたしの計の意(い)をお留(とど)めください。そうしないと、必ず二人の禽囚(きんしゅう)するところと為るでしょう」と。