何曰王計必欲東能用信
何曰王計必欲東能用信 漢丞相蕭何曰く、「王(漢王劉邦)の計(はか)りごとが必ず東に進むことを欲し、韓信を用いることができれば、 信即留不能用信終亡耳王曰 韓信はすなわち留(とど)まり、用いることができなければ、韓信は終(つい)には逃げるだけです」と。漢王劉邦曰く、 吾為公以為將何曰雖為將 「吾(われ)はおまえの為に将軍と為すを以ってしよう」と。漢丞相蕭何曰く、「将軍に為ったと雖(いえど)も、...
View Article信再拜賀曰惟信亦為大王不如也
信再拜賀曰惟信亦為大王不如也 漢大将韓信は再拝してよろこんで曰く、「これ、わたしもまた大王(漢王劉邦)は及ばないと思います。 然臣嘗事之請言項王之為人也 然(しか)るにわたしは嘗(かつ)てこれに仕(つか)えたことがあり、項王(西楚覇王項籍(項羽)) の人と為りを言わせてください。 項王喑噁叱千人皆廢然不能任屬賢將 項王(西楚覇王項籍(項羽))は大声で叱(しか)ると...
View Article且三秦王為秦將將秦子弟數歲矣
且三秦王為秦將將秦子弟數歲矣 且(か)つ三秦の王が秦将であったとき、秦の子弟を率いて数年、 所殺亡不可勝計又欺其眾降諸侯 殺したり逃亡させた所、すべて計(はか)ることができず、また、その衆を欺(あざ)むいて諸侯に降(くだ)り、 至新安項王詐阬秦降卒二十餘萬 新安に至ると、項王(西楚覇王項籍(項羽))は偽(いつわ)って秦の降(くだ)った歩兵二十余万人を穴埋(あなう)めし、 唯獨邯欣翳得脫秦父兄怨此三人...
View Article八月漢王舉兵東出陳倉定三秦
八月漢王舉兵東出陳倉定三秦 漢元年八月、漢王劉邦は兵を挙(あ)げて東に、三秦を平定しに陳倉に行った。 漢二年出關收魏河南韓殷王皆降 漢二年、関を出て魏(西魏王魏豹 項羽により河東に移され西魏王と為った 都は平陽)を収(おさ)め、河南王瑕丘申陽(前の楚将)韓王鄭昌(前の呉令) 殷王司馬卬(前の趙將)は皆(みな)降(くだ)った。 合齊趙共擊楚四月至彭城漢兵敗散而還...
View Article漢王遣張耳與信俱引兵東北擊趙代
漢王遣張耳與信俱引兵東北擊趙代 漢王劉邦は張耳を遣(つか)わし、漢左丞相韓信大将軍とともにつれだって、兵を引き東北に進み、趙、代を撃(う)った。 後九月破代兵禽夏說閼與 九ヶ月後、代兵を破り、夏説(代宰相)を閼与で禽囚(きんしゅう)にし、 信之下魏破代漢輒使人收其精兵詣滎陽以距楚...
View Article成安君儒者也常稱義兵不用詐謀奇計
成安君儒者也常稱義兵不用詐謀奇計 成安君陳余(代王趙傅陳余)は儒者(じゅしゃ)であり、常(つね)に正義の戦いを称(たた)え、偽(いつわ)りの謀(はかりごと)、奇計(きけい)は用(もち)いず、 曰吾聞兵法十則圍之倍則戰 曰く、「吾(われ)は聞きます、兵法(ひょうほう)では(兵力が)十倍ならばこれを包囲し、二倍ならば戦う、と。 今韓信兵號數萬其實不過數千...
View Article趙軍望見而大笑
趙軍望見而大笑 趙軍は望(のぞ)み見て、大いに笑った。 平旦信建大將之旗鼓鼓行出井陘口 明け方、漢左丞相韓信大将軍は大将の旗(はた)太鼓(たいこ)を建(た)てて、太鼓をうちながら行き井陘口を出た。 趙開壁擊之大戰良久 趙はとりでの壁(かべ)を開いてこれを撃(う)ち、ややしばらく大いに戦った。 於是信張耳詳棄鼓旗走水上軍...
View Article信乃令軍中毋殺廣武君有能生得者購千金
信乃令軍中毋殺廣武君有能生得者購千金 漢左丞相韓信大将軍はそこで軍中に令(れい)した、広武君李左車を殺すことなかれ、生きたままつかまえることができた者が有れば、千金を購(あがな)う、と。 於是有縛廣武君而致戲下者信乃解其縛 ここに於いて、広武君李左車を縛(しば)って旗下に連れてきた者が有り、漢左丞相韓信大将軍はそこで、その縄(なわ)を解(と)き、 東鄉坐西鄉對師事之諸將效首虜...
View Article於是信問廣武君曰仆欲北攻燕
於是信問廣武君曰仆欲北攻燕 ここに於いて漢左丞相韓信大将軍は広武君李左車に問(と)うた曰く、「わたしは北に燕を攻め、 東伐齊何若而有功廣武君辭謝曰 東に斉を討(う)ちたいと欲するが、どのようなごとくすれば功が有るだろうか?」と。広武君李左車は辞(じ)して謝(しゃ)して曰く、 臣聞敗軍之將不可以言勇 「わたしは聞きます、敗軍(はいぐん)の将軍は、勇(いさ)ましさを言うことは不可(ふか)で、...
View Article故曰狂夫之言聖人擇焉
故曰狂夫之言聖人擇焉 故(ゆえ)に曰く、愚(おろ)かな男の言(げん)でも、聖人はよいものを選び取る、と。 顧恐臣計未必足用願效愚忠 顧(かえり)みて恐(おそ)らくわたしの計(はか)りごとは未(ま)だ必ずしも用いるに足(た)りませんが、願わくは愚か者の誠意(せいい)をつくさせてください。 夫成安君有百戰百勝之計一旦而失之...
View Article臣愚竊以為亦過矣
臣愚竊以為亦過矣 わたしは愚かですが、ひそかにまた過(あやま)ちだと思います。 故善用兵者不以短擊長而以長擊短 故(もと)より兵を善(よ)く用いるとは短所を以って長所を撃(う)たずして、長所を以って短所を撃(う)つのです」と。 韓信曰然則何由廣武君對曰 漢左丞相韓信大将軍曰く、「然(しか)らば何(なに)に由(よ)るのか?」と。広武君李左車は応(こた)えて曰く、 方今為將軍計莫如案甲休兵...
View Article韓信曰善從其策發使使燕燕從風而靡
韓信曰善從其策發使使燕燕從風而靡 韓信曰く、「よろしい」と。その策(さく)に従(したが)い、使者を発して燕に使(つか)いさせ、 燕は風にして靡(なび)くように従(したが)った。 乃遣使報漢因請立張耳為趙王以鎮撫其國 そおで使者を遣(つか)わし漢に報告させ、因(よ)りて張耳を立てて趙王と為し、その国を鎮撫(ちんぶ)するを以ってすることを請(こ)うた。 漢王許之乃立張耳為趙王...
View Article信耳起乃知漢王來大驚
信耳起乃知漢王來大驚 漢左丞相韓信大将軍、趙王張耳が起(お)きてすなわち、漢王劉邦が来たことを知り、大いに驚(おどろ)いた。 漢王奪兩人軍即令張耳備守趙地 漢王劉邦は二人の軍を奪(うば)い、すぐに趙王張耳に令(れい)して趙地を守備(しゅび)させた。 拜韓信為相國收趙兵未發者擊齊 漢左丞相韓信大将軍に官をさずけて漢相国と為し、趙兵の未(ま)だ発されてない者を収めて斉を撃(う)たせた。 信引兵東未渡平原...
View Article齊王廣龍且并軍與信戰未合
齊王廣龍且并軍與信戰未合 斉王田広、楚将龍且は軍を併(あ)わせて漢相国韓信大将軍とともに戦おうとしたが、未(ま)だ合(あ)わないうちに、 人或說龍且曰漢兵遠鬬窮戰 人の或(あ)る者が楚将龍且に説(と)いて曰く、「漢兵は遠く闘(たたか)い、戦いを窮(きわ)め、 其鋒不可當齊楚自居其地戰 その切っ先(きっさき)は当(あ)てるべきではありません。斉、楚は自(みずか)らをその地に居(い)て戦い、...
View Article漢四年遂皆降平齊
漢四年遂皆降平齊 漢四年、遂(つい)に皆(みな)斉を降(くだ)し平(たいら)げた。 使人言漢王曰齊偽詐多變反覆之國也 人をつかわし漢王劉邦に言わせた、曰く、「斉は偽(いつわ)りあざむき変事が多く、うらぎりの国でり、 南邊楚不為假王以鎮之其勢不定 南は楚にとなりあい、仮(かり)の(斉の)王となってこれを鎮(しず)めるを以ってしなければ、その勢(いきお)いは安定しません。...
View Article楚已亡龍且
楚已亡龍且項王恐使盱眙人武涉往說齊王信曰 楚はすでに楚将龍且を亡(な)くし、項王(項羽)は恐れ、盱眙人の武涉をして往(ゆ)かせ、斉王韓信を説(と)かせた、曰く、 天下共苦秦久矣相與力擊秦秦已破計功割地 「天下は共(とも)に秦に苦しむこと久(ひさ)しく、相(あい)ともに力をつくして秦を撃(う)った。秦はすでに破(やぶ)れ、功績を計(はか)り、地を割(さ)き、 分土而王以休士卒...
View Article足下與項王有故何不反漢與楚連和參分天下王之
足下與項王有故何不反漢與楚連和參分天下王之 足下(斉王韓信)は項王(項羽)と故(ゆえ)が有り、どうして漢に叛(そむ)いて楚と連和(れんわ)して、天下を三分して王とならないのか? 今釋此時而自必於漢以擊楚且為智者固若此乎 今、この時をすてれば、しこうして自(おのず)から漢に於いて楚を撃(う)つを以ってするのは必至だ。まさに智者は固(もと)よりこの如(ごと)くを為すだろうか」と。...
View Article武涉已去齊人蒯通知天下權在韓信
武涉已去齊人蒯通知天下權在韓信 武涉はすでに去(さ)り、斉人の蒯通は天下のおもりが斉王韓信に在(あ)ることを知り、 欲為奇策而感動之以相人說韓信曰 奇策(きさく)をつくってこれを心動かせようと欲し、人相(にんそう)を見るを以って斉王韓信を説(と)いた、曰く、 仆嘗受相人之術韓信曰 「わたしはかつて人相見の術を受けました」と。斉王韓信曰く、 先生相人何如對曰...
View Article然兵困於京索之迫西山而不能進者
然兵困於京索之迫西山而不能進者 然(しか)るに兵は京、索の間に於いて困窮し、西山に迫(せま)って前進することができず、 三年於此矣漢王將數十萬之眾 ここに於いて三年。漢王劉邦は数十万人の衆を率(ひき)いて、 距鞏雒阻山河之險一日數戰 鞏、雒に山や河の険(けん)を阻(はば)んで対峙(たいじ)し、一日たびたび戦い、 無尺寸之功折北不救敗滎陽傷成皋...
View Article誠能聽臣之計莫若兩利而俱存之
誠能聽臣之計莫若兩利而俱存之 誠(まこと)にわたしの計(はか)りごとを聴き入れることができるなら、二つの利(り)にしてともにこれを存(ながら)えさせ、 參分天下鼎足而居其勢莫敢先動 天下を三分して、鼎(かなえ)の足(あし 鼎は三脚)のように居(お)るにこしたことはありません。その勢いは敢(あ)えて先(さき)に動こうとしないでしょう。 夫以足下之賢聖有甲兵之眾據彊齊...
View Article