趙軍望見而大笑
趙軍は望(のぞ)み見て、大いに笑った。
平旦信建大將之旗鼓鼓行出井陘口
明け方、漢左丞相韓信大将軍は大将の旗(はた)太鼓(たいこ)を建(た)てて、太鼓をうちながら行き井陘口を出た。
趙開壁擊之大戰良久
趙はとりでの壁(かべ)を開いてこれを撃(う)ち、ややしばらく大いに戦った。
於是信張耳詳棄鼓旗走水上軍
ここに於いて漢左丞相韓信大将軍、張耳は偽(いつわ)って太鼓、旗を棄(す)て、川のほとりの漢軍に逃げるふりをした。
水上軍開入之復疾戰
川のほとりの漢軍は開いてこれを入れ、ふたたびはげしい戦いをしようとした。
趙果空壁爭漢鼓旗逐韓信張耳
趙は果(は)たしてとりでを空(から)にして漢の(棄てた)太鼓、旗をとりあい、漢左丞相韓信大将軍、張耳を追いかけた。
韓信張耳已入水上軍軍皆殊死戰不可敗
漢左丞相韓信大将軍、張耳はすでに川のほとりの漢軍に入り、漢軍は皆(みな)敗(やぶ)れるべきではないと死ぬ覚悟で戦った。
信所出奇兵二千騎共候趙空壁逐利
漢左丞相韓信大将軍が出した所の騎兵二千騎は、共(とも)に趙の空(から)のとりでをうかがい、
則馳入趙壁皆拔趙旗立漢赤幟二千
すなわち、馬を馳(は)せて趙のとりでに入り、皆(みな)趙の旗(はた)を抜(ぬ)いて、漢の赤いのぼり旗二千本を立てた。
趙軍已不勝不能得信等欲還歸壁
趙軍がすでに勝たず漢左丞相韓信大将軍らをつかまえることができず、とりでに帰還(きかん)することを欲した。
壁皆漢赤幟而大驚以為漢皆已得趙王將矣
とりでは皆(みな)漢の赤いのぼり旗になっており、大いに驚(おどろ)いて、漢は皆(みな)すでに趙王、将軍たちをつかまえたと思った。
兵遂亂遁走趙將雖斬之不能禁也
趙兵は遂(つい)に乱(みだ)れ遁走(とんそう)した。趙将軍がこれを斬(き)ろうとしたと雖(いえど)も、禁ずることはできなかったのである。
於是漢兵夾擊大破虜趙軍
ここに於いて、漢兵は挟(はさ)み撃(う)ちして、趙軍を大破(たいは)して虜(とりこ)にし、
斬成安君泜水上禽趙王歇
成安君(代王趙傅陳余)を泜水(川名)のほとりで斬(き)り、趙王趙歇を生け捕(ど)りにした。
趙軍は望(のぞ)み見て、大いに笑った。
平旦信建大將之旗鼓鼓行出井陘口
明け方、漢左丞相韓信大将軍は大将の旗(はた)太鼓(たいこ)を建(た)てて、太鼓をうちながら行き井陘口を出た。
趙開壁擊之大戰良久
趙はとりでの壁(かべ)を開いてこれを撃(う)ち、ややしばらく大いに戦った。
於是信張耳詳棄鼓旗走水上軍
ここに於いて漢左丞相韓信大将軍、張耳は偽(いつわ)って太鼓、旗を棄(す)て、川のほとりの漢軍に逃げるふりをした。
水上軍開入之復疾戰
川のほとりの漢軍は開いてこれを入れ、ふたたびはげしい戦いをしようとした。
趙果空壁爭漢鼓旗逐韓信張耳
趙は果(は)たしてとりでを空(から)にして漢の(棄てた)太鼓、旗をとりあい、漢左丞相韓信大将軍、張耳を追いかけた。
韓信張耳已入水上軍軍皆殊死戰不可敗
漢左丞相韓信大将軍、張耳はすでに川のほとりの漢軍に入り、漢軍は皆(みな)敗(やぶ)れるべきではないと死ぬ覚悟で戦った。
信所出奇兵二千騎共候趙空壁逐利
漢左丞相韓信大将軍が出した所の騎兵二千騎は、共(とも)に趙の空(から)のとりでをうかがい、
則馳入趙壁皆拔趙旗立漢赤幟二千
すなわち、馬を馳(は)せて趙のとりでに入り、皆(みな)趙の旗(はた)を抜(ぬ)いて、漢の赤いのぼり旗二千本を立てた。
趙軍已不勝不能得信等欲還歸壁
趙軍がすでに勝たず漢左丞相韓信大将軍らをつかまえることができず、とりでに帰還(きかん)することを欲した。
壁皆漢赤幟而大驚以為漢皆已得趙王將矣
とりでは皆(みな)漢の赤いのぼり旗になっており、大いに驚(おどろ)いて、漢は皆(みな)すでに趙王、将軍たちをつかまえたと思った。
兵遂亂遁走趙將雖斬之不能禁也
趙兵は遂(つい)に乱(みだ)れ遁走(とんそう)した。趙将軍がこれを斬(き)ろうとしたと雖(いえど)も、禁ずることはできなかったのである。
於是漢兵夾擊大破虜趙軍
ここに於いて、漢兵は挟(はさ)み撃(う)ちして、趙軍を大破(たいは)して虜(とりこ)にし、
斬成安君泜水上禽趙王歇
成安君(代王趙傅陳余)を泜水(川名)のほとりで斬(き)り、趙王趙歇を生け捕(ど)りにした。