漢四年遂皆降平齊
漢四年、遂(つい)に皆(みな)斉を降(くだ)し平(たいら)げた。
使人言漢王曰齊偽詐多變反覆之國也
人をつかわし漢王劉邦に言わせた、曰く、「斉は偽(いつわ)りあざむき変事が多く、うらぎりの国でり、
南邊楚不為假王以鎮之其勢不定
南は楚にとなりあい、仮(かり)の(斉の)王となってこれを鎮(しず)めるを以ってしなければ、その勢(いきお)いは安定しません。
願為假王便當是時楚方急圍漢王於滎陽
願わくは、仮(かり)の王と為して便(べん)をはかってください」と。ちょうどこの時、楚はまさに急いで漢王劉邦を栄陽に於いて包囲(ほうい)せんとしていたときだった。
韓信使者至發書漢王大怒罵曰
漢相国韓信大将軍の使者(ししゃ)が至り、書状を開くと、漢王劉邦は大いに怒(おこ)り罵(ののし)って曰く、
吾困於此旦暮望若來佐我乃欲自立為王
「吾(われ)はこれよりて困窮(こんきゅう)して、朝も夕もなんじが我(われ)を助けに来ることを望(のぞ)んでいたのに、自(みずか)ら立って王に為(な)ることを欲していたのか」と。
張良陳平躡漢王足因附耳語曰
張良、陳平が漢王劉邦の足をおさえて、因(よ)りて耳(みみ)に附(つ)けて語(かた)った、曰く、
漢方不利寧能禁信之王乎不如因而立善遇之使自為守不然變生
「漢はまさに不利(ふり)であり、どうして漢相国韓信大将軍の斉王になることを禁(きん)ずることができましょうか。因(よ)りて立てて、これを善遇(ぜんぐう)し、自(みずか)らをして守(まも)りを為さしめるにこしたことはありません。そうしなければ、変事が生(しょう)ずるでしょう」と。
漢王亦悟因復罵曰大丈夫定諸侯
漢王劉邦もまた悟(さと)り、因(よ)りてまた罵(ののし)って曰く、「大丈夫(だいじょうふ)が諸侯を平定すれば
即為真王耳何以假為
すなわち真(まこと)の王と為すのみ。どうして仮(かり)を以ってして(王と)為そうか」と。
乃遣張良往立信為齊王徵其兵擊楚
そこで、張耳を遣(つか)わし往(ゆ)かせ、漢相国韓信大将軍を立てて斉王と為さしめ、その兵を徴集(ちょうしゅう)して楚を撃(う)たせた。
漢四年、遂(つい)に皆(みな)斉を降(くだ)し平(たいら)げた。
使人言漢王曰齊偽詐多變反覆之國也
人をつかわし漢王劉邦に言わせた、曰く、「斉は偽(いつわ)りあざむき変事が多く、うらぎりの国でり、
南邊楚不為假王以鎮之其勢不定
南は楚にとなりあい、仮(かり)の(斉の)王となってこれを鎮(しず)めるを以ってしなければ、その勢(いきお)いは安定しません。
願為假王便當是時楚方急圍漢王於滎陽
願わくは、仮(かり)の王と為して便(べん)をはかってください」と。ちょうどこの時、楚はまさに急いで漢王劉邦を栄陽に於いて包囲(ほうい)せんとしていたときだった。
韓信使者至發書漢王大怒罵曰
漢相国韓信大将軍の使者(ししゃ)が至り、書状を開くと、漢王劉邦は大いに怒(おこ)り罵(ののし)って曰く、
吾困於此旦暮望若來佐我乃欲自立為王
「吾(われ)はこれよりて困窮(こんきゅう)して、朝も夕もなんじが我(われ)を助けに来ることを望(のぞ)んでいたのに、自(みずか)ら立って王に為(な)ることを欲していたのか」と。
張良陳平躡漢王足因附耳語曰
張良、陳平が漢王劉邦の足をおさえて、因(よ)りて耳(みみ)に附(つ)けて語(かた)った、曰く、
漢方不利寧能禁信之王乎不如因而立善遇之使自為守不然變生
「漢はまさに不利(ふり)であり、どうして漢相国韓信大将軍の斉王になることを禁(きん)ずることができましょうか。因(よ)りて立てて、これを善遇(ぜんぐう)し、自(みずか)らをして守(まも)りを為さしめるにこしたことはありません。そうしなければ、変事が生(しょう)ずるでしょう」と。
漢王亦悟因復罵曰大丈夫定諸侯
漢王劉邦もまた悟(さと)り、因(よ)りてまた罵(ののし)って曰く、「大丈夫(だいじょうふ)が諸侯を平定すれば
即為真王耳何以假為
すなわち真(まこと)の王と為すのみ。どうして仮(かり)を以ってして(王と)為そうか」と。
乃遣張良往立信為齊王徵其兵擊楚
そこで、張耳を遣(つか)わし往(ゆ)かせ、漢相国韓信大将軍を立てて斉王と為さしめ、その兵を徴集(ちょうしゅう)して楚を撃(う)たせた。