今夫趙女鄭姬設形容揳鳴琴揄長袂
今、それ趙女、鄭姫は顔かたちをこしえら、琴(こと)を打ち鳴らし、長い袂(たもと)をひき、
躡利屣目挑心招出不遠千里不擇老少者奔富厚也
履(利(り)=履(り)?)をふみつけてつっかけて歩き、目は挑発(ちょうはつ)し心は誘(さそ)い、出かけるは千里も遠いとせず、老、少を択(えら)ばないのは、富厚(ふこう)に奔走(ほんそう)するからである。
游公子飾冠劍連車騎亦為富貴容也
あたりを巡(めぐ)る公子は、冠、剣を飾り、車騎を連(つら)ね、また富貴の容(かたち)をつくるのである。
弋射漁獵犯晨夜冒霜雪馳阬谷
弋射(よくしゃ)、漁猟して朝から夜まで犯(おか)し、霜(しも)雪にも強引に進み、谷間を馳(は)せ、
不避猛獸之害為得味也
猛獣の害を避(さ)けずは、味を得る為にするのである。
博戲馳逐鬬雞走狗作色相矜必爭勝者重失負也
博打(ばくち)、競馬、闘鶏(とうけい)、走狗(競犬)では色(いろ)をなして相(あい)そばだち、
必ず勝ちを争うのは、失い負けることをおそれるからである。
醫方諸食技術之人焦神極能為重糈也
医術、諸(もろもろ)の技術に食(は)む人も、精神を焦(こ)がし、能力を極(きわ)めるのは、
重い糧(かて)の為(ため)である。
吏士舞文弄法刻章偽書不避刀鋸之誅者沒於賂遺也
吏士が文章を舞(ま)わせて法に奔走(ほんそう)し、印章を刻(きざ)み、書を偽(いつわ)り、
刀鋸(かたなとのこぎり)の誅(ちゅう)も避(さ)けないのは、賄賂(わいろ)に溺(おぼ)れているからである。
農工商賈畜長固求富益貨也
農、工、商賈、畜産は固(もと)より益々(ますます)金、物を富(と)ませることを求めるのである。
此有知盡能索耳終不餘力而讓財矣
これは、知識を有(ゆう)し能力を尽くして求めるのみで、終(しま)いには力を余(あま)さずして財(ざい)を譲渡(じょうと)するのである。
諺曰百里不販樵千里不販糴
諺(ことわざ)に曰く、「百里の遠くでは薪(たきぎ)を販売しない、千里の遠くでは穀物を販売しない」と。
居之一歲種之以穀十歲樹之以木
ここに居(きょ)して一年で、ここに種(たね)をまくに穀物を以ってし、十年居(きょ)すれば、ここに植えるに木を以ってし、
百歲來之以者人物之謂也
百年居(きょ)すれば、ここに来るに徳(とく)を以ってする。徳(とく)とは人や物を謂(い)うのである。
今有無秩祿之奉爵邑之入而樂與之比者
今、秩禄(ちつろく)の奉(ほう)、爵邑の収入の無いものが有って、これと並んで楽しむ者は、
命曰素封封者食租稅歲率戶二百
命名して曰く、素封、と。封とは食糧の租税であり、一年の率(りつ)は一戸に二百で、
千戶之君則二十萬朝覲聘享出其中
千戸の君であれば二十万、朝見してその中から出して献上する。
庶民農工商賈率亦歲萬息二千
庶民の農、工、商賈の率(りつ)もまた一年で一万人口で二千人、
百萬之家則二十萬而更傜租賦出其中
百万人の人口ならば二十万人にして傜(徭)租賦を改めて、その中から出した。
衣食之欲恣所好美矣
衣食は思うままに好み美味しいところを欲した。
故曰陸地牧馬二百蹄牛蹄角千千足羊
故(ゆえ)に曰く、陸地には放牧した馬が二百の蹄(ひづめ)(二百頭)、牛の蹄(ひづめ)角(つの)は千(千頭)、千足(千匹)の羊(ひつじ)、
澤中千足彘水居千石魚陂山居千章之材
沢の中には千足(千匹)の豕(いのこ)、川には千の石の鱗(うろこ 魚=鱗?)のような模様の堤(つつみ)があり、山には千の樟(くすのき)の材木がある、と。
今、それ趙女、鄭姫は顔かたちをこしえら、琴(こと)を打ち鳴らし、長い袂(たもと)をひき、
躡利屣目挑心招出不遠千里不擇老少者奔富厚也
履(利(り)=履(り)?)をふみつけてつっかけて歩き、目は挑発(ちょうはつ)し心は誘(さそ)い、出かけるは千里も遠いとせず、老、少を択(えら)ばないのは、富厚(ふこう)に奔走(ほんそう)するからである。
游公子飾冠劍連車騎亦為富貴容也
あたりを巡(めぐ)る公子は、冠、剣を飾り、車騎を連(つら)ね、また富貴の容(かたち)をつくるのである。
弋射漁獵犯晨夜冒霜雪馳阬谷
弋射(よくしゃ)、漁猟して朝から夜まで犯(おか)し、霜(しも)雪にも強引に進み、谷間を馳(は)せ、
不避猛獸之害為得味也
猛獣の害を避(さ)けずは、味を得る為にするのである。
博戲馳逐鬬雞走狗作色相矜必爭勝者重失負也
博打(ばくち)、競馬、闘鶏(とうけい)、走狗(競犬)では色(いろ)をなして相(あい)そばだち、
必ず勝ちを争うのは、失い負けることをおそれるからである。
醫方諸食技術之人焦神極能為重糈也
医術、諸(もろもろ)の技術に食(は)む人も、精神を焦(こ)がし、能力を極(きわ)めるのは、
重い糧(かて)の為(ため)である。
吏士舞文弄法刻章偽書不避刀鋸之誅者沒於賂遺也
吏士が文章を舞(ま)わせて法に奔走(ほんそう)し、印章を刻(きざ)み、書を偽(いつわ)り、
刀鋸(かたなとのこぎり)の誅(ちゅう)も避(さ)けないのは、賄賂(わいろ)に溺(おぼ)れているからである。
農工商賈畜長固求富益貨也
農、工、商賈、畜産は固(もと)より益々(ますます)金、物を富(と)ませることを求めるのである。
此有知盡能索耳終不餘力而讓財矣
これは、知識を有(ゆう)し能力を尽くして求めるのみで、終(しま)いには力を余(あま)さずして財(ざい)を譲渡(じょうと)するのである。
諺曰百里不販樵千里不販糴
諺(ことわざ)に曰く、「百里の遠くでは薪(たきぎ)を販売しない、千里の遠くでは穀物を販売しない」と。
居之一歲種之以穀十歲樹之以木
ここに居(きょ)して一年で、ここに種(たね)をまくに穀物を以ってし、十年居(きょ)すれば、ここに植えるに木を以ってし、
百歲來之以者人物之謂也
百年居(きょ)すれば、ここに来るに徳(とく)を以ってする。徳(とく)とは人や物を謂(い)うのである。
今有無秩祿之奉爵邑之入而樂與之比者
今、秩禄(ちつろく)の奉(ほう)、爵邑の収入の無いものが有って、これと並んで楽しむ者は、
命曰素封封者食租稅歲率戶二百
命名して曰く、素封、と。封とは食糧の租税であり、一年の率(りつ)は一戸に二百で、
千戶之君則二十萬朝覲聘享出其中
千戸の君であれば二十万、朝見してその中から出して献上する。
庶民農工商賈率亦歲萬息二千
庶民の農、工、商賈の率(りつ)もまた一年で一万人口で二千人、
百萬之家則二十萬而更傜租賦出其中
百万人の人口ならば二十万人にして傜(徭)租賦を改めて、その中から出した。
衣食之欲恣所好美矣
衣食は思うままに好み美味しいところを欲した。
故曰陸地牧馬二百蹄牛蹄角千千足羊
故(ゆえ)に曰く、陸地には放牧した馬が二百の蹄(ひづめ)(二百頭)、牛の蹄(ひづめ)角(つの)は千(千頭)、千足(千匹)の羊(ひつじ)、
澤中千足彘水居千石魚陂山居千章之材
沢の中には千足(千匹)の豕(いのこ)、川には千の石の鱗(うろこ 魚=鱗?)のような模様の堤(つつみ)があり、山には千の樟(くすのき)の材木がある、と。