此其章章尤異者也皆非有爵邑奉祿弄法犯姦而富
これらはその章章(しょうしょう)と明らかに最もすぐれた者である。皆(みな)爵邑、奉祿が有って、法をもてあそび不正を犯して富(と)んだのではなく、
盡椎埋去就與時俯仰獲其贏利以末致財
去就(きょしゅう)を推理(すいり 椎埋=推理?)し尽くして、時とともに俯(うつむ)いたり仰(あお)むいたりして、その利益を獲(え)たのである。商を以って財を成し遂げれば、
用本守之以武一切用文持之變化有概故足術也
農を用いてこれを守り、武(ぶ)を以って一切(いっさい)をすれば、文(ぶん)を用いてこれを助け、
変化にはあらましが有って、故(ゆえ)に術(すべ)とするに足(た)るのである。
若至力農畜工虞商賈為權利以成富
農、畜、工、虞(山林沼沢)、商賈にはげみ権利を為すに至るがごとく富(とみ)を成すを以ってし、
大者傾郡中者傾縣下者傾鄉里者不可勝數
大者の郡を帰服させた者、中者の県を帰服させた者、下者の郷里者を帰服させた者はすべて数えあげることはできない。
夫纖嗇筋力治生之正道也而富者必用奇勝
それ、つつしんで倹約し勤労するは、生を治(おさ)める正道であるが、しこうして、富者は必ず奇(き)を用いて勝つ。
田農掘業而秦揚以蓋一州
田農は掘る仕事であるが、秦楊はおおむね一州を以ってした。
掘冢姦事也而田叔以起
墳墓を掘るは、不正な事であるが、田叔は身を起こすを以ってした。
博戲惡業也而桓發用富
博打(ばくち)は悪しき仕事であるが、桓発は富(とみ)に用いた。
行賈丈夫賤行也而雍樂成以饒
行商は、丈夫(一人前の男子)の賎(いや)しい行いであるが、雍の楽成は豊かになるを以ってした。
販脂辱處也而雍伯千金
脂(あぶら)を販売するは、辱(はずかし)められる処(ところ)であるが、雍伯は千金になった。
賣漿小業也而張氏千萬
漿(こんず)を売るはとるに足らない仕事であるが、張氏は千万になった。
灑削薄技也而郅氏鼎食
灑削はとるに足らない技(わざ)であるが、郅氏は贅沢な暮らしをした。
胃脯簡微耳濁氏連騎
胃脯は手軽で粗末なだけであるが、濁氏は騎士を連(つら)ねた。
馬醫淺方張裏擊鐘此皆誠壹之所致
馬医は浅い医術であるが、張裏は鐘(かね)を撃った。これらは皆(みな)誠(まこと)に専一(せんいつ)にして成し遂げたところである。
由是觀之富無經業則貨無常主能者輻湊不肖者瓦解
これに由(よ)りこれを観(み)るに、富(とみ)には一定の仕事は無ければ、貨には常(つね)の主(あるじ)は無く、能力のある者には物が四方からより集まり、不肖(ふしょう)者は瓦(かわら)がくだけるように物事があっけなくこわれる、と。
千金之家比一都之君巨萬者乃與王者同樂
千金の家は一つの都市の君になぞらえ、巨万者はすなわち王者と楽しみを同じにする。
豈所謂素封者邪非也
どうして所謂(いわゆる)素封者ではないだろうか(素封者にちがいない)。
今日で史記 貨殖列伝は終わりです。明日からは史記 太史公自序に入ります。
これらはその章章(しょうしょう)と明らかに最もすぐれた者である。皆(みな)爵邑、奉祿が有って、法をもてあそび不正を犯して富(と)んだのではなく、
盡椎埋去就與時俯仰獲其贏利以末致財
去就(きょしゅう)を推理(すいり 椎埋=推理?)し尽くして、時とともに俯(うつむ)いたり仰(あお)むいたりして、その利益を獲(え)たのである。商を以って財を成し遂げれば、
用本守之以武一切用文持之變化有概故足術也
農を用いてこれを守り、武(ぶ)を以って一切(いっさい)をすれば、文(ぶん)を用いてこれを助け、
変化にはあらましが有って、故(ゆえ)に術(すべ)とするに足(た)るのである。
若至力農畜工虞商賈為權利以成富
農、畜、工、虞(山林沼沢)、商賈にはげみ権利を為すに至るがごとく富(とみ)を成すを以ってし、
大者傾郡中者傾縣下者傾鄉里者不可勝數
大者の郡を帰服させた者、中者の県を帰服させた者、下者の郷里者を帰服させた者はすべて数えあげることはできない。
夫纖嗇筋力治生之正道也而富者必用奇勝
それ、つつしんで倹約し勤労するは、生を治(おさ)める正道であるが、しこうして、富者は必ず奇(き)を用いて勝つ。
田農掘業而秦揚以蓋一州
田農は掘る仕事であるが、秦楊はおおむね一州を以ってした。
掘冢姦事也而田叔以起
墳墓を掘るは、不正な事であるが、田叔は身を起こすを以ってした。
博戲惡業也而桓發用富
博打(ばくち)は悪しき仕事であるが、桓発は富(とみ)に用いた。
行賈丈夫賤行也而雍樂成以饒
行商は、丈夫(一人前の男子)の賎(いや)しい行いであるが、雍の楽成は豊かになるを以ってした。
販脂辱處也而雍伯千金
脂(あぶら)を販売するは、辱(はずかし)められる処(ところ)であるが、雍伯は千金になった。
賣漿小業也而張氏千萬
漿(こんず)を売るはとるに足らない仕事であるが、張氏は千万になった。
灑削薄技也而郅氏鼎食
灑削はとるに足らない技(わざ)であるが、郅氏は贅沢な暮らしをした。
胃脯簡微耳濁氏連騎
胃脯は手軽で粗末なだけであるが、濁氏は騎士を連(つら)ねた。
馬醫淺方張裏擊鐘此皆誠壹之所致
馬医は浅い医術であるが、張裏は鐘(かね)を撃った。これらは皆(みな)誠(まこと)に専一(せんいつ)にして成し遂げたところである。
由是觀之富無經業則貨無常主能者輻湊不肖者瓦解
これに由(よ)りこれを観(み)るに、富(とみ)には一定の仕事は無ければ、貨には常(つね)の主(あるじ)は無く、能力のある者には物が四方からより集まり、不肖(ふしょう)者は瓦(かわら)がくだけるように物事があっけなくこわれる、と。
千金之家比一都之君巨萬者乃與王者同樂
千金の家は一つの都市の君になぞらえ、巨万者はすなわち王者と楽しみを同じにする。
豈所謂素封者邪非也
どうして所謂(いわゆる)素封者ではないだろうか(素封者にちがいない)。
今日で史記 貨殖列伝は終わりです。明日からは史記 太史公自序に入ります。