Quantcast
Channel: 倭人伝を解く
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2176

壺遂曰孔子之時

$
0
0
壺遂曰孔子之時上無明君下不得任用

漢上大夫壷遂曰く、「孔子の時、上(うえ)には明君が無く、下(した)には任用できるものがなく、

故作春秋垂空文以斷禮義當一王之法

故(ゆえ)に春秋を作り、空(むな)しい文を垂(た)れて礼、義(ぎ)を断(だん)ずるを以って、一(いつ)に王の法に当(あ)てた。

今夫子上遇明天子下得守職萬事既具

今、あなたは上(うえ)に賢明な天子に遇(あ)い、下(した)に職を守るを得て、万(よろず)の事はすでに備(そな)わっており、

咸各序其宜夫子所論欲以何明

あまねく各(おのおの)がその宜(よろ)しきを順序だてられているのに、あなたが論ずるところは何を以って明らかにしたいと欲するのか?」と。

太史公曰唯唯否否不然

太史公司馬遷曰く、「はいはい、いえいえ、そうではありません。

余聞之先人曰伏羲至純厚作易八卦

わたしはこれを聞く、先人曰く、『伏羲(帝王の名)は純厚(じゅんこう たいそう手厚いこと)に至ってから、易(えき)の八卦(はっけ)を作った。

堯舜之盛尚書載之禮樂作焉

堯帝、舜帝が盛んな時を、尚書はこれを載(の)せて、礼、楽が作られた。

湯武之隆詩人歌之春秋采善貶惡

殷湯王、周武王の隆盛(りゅうせい)の時を、詩人はこれを歌った。春秋は善(ぜん)を彩(いろど)り、悪(あく)を貶(おとし)め、

推三代之褒周室非獨刺譏而已也

三代(夏、殷、周)の徳を推(お)しすすめ、周室を褒(ほ)めたたえ、ただなじりそしるみのではないのである』と。

漢興以來至明天子獲符瑞封禪

漢が興(おこ)って以来、賢明な天子に至り、符瑞(ふずい めでたいしるし)を獲(え)て、封禅(ほうぜん)をおこない、

改正朔易服色受命於穆清澤流罔極

暦(こよみ)を改正し、服色を替(か)え、天命を穆清に授(さず)かり、恩沢が流れてきわまりがなく、

海外殊俗重譯款塞請來獻見者不可勝道

海外は俗(ぞく)を殊(こと)にし、通訳を重(かさ)ねて塞(とりで)にのぞみ、来献(らいけん)を請(こ)うて見(まみ)える者は、すべて語ることはできない。

臣下百官力誦聖猶不能宣盡其意

臣下、百官は聖徳を力をこめてとなえても、猶(なお)ことごとくその意(い)を広めることができない。

且士賢能而不用有國者之恥

まさに士が賢能であって用いられずは、国を有(ゆう)する者の恥(はじ)で、

主上明聖而不布聞有司之過也

主上が明聖であって徳が評判を布(し)かないのは、有司(官職名)の過(あやま)ちである。

且余嘗掌其官廢明聖盛不載

まさにわたしはその官を嘗(な)めつかさどり、明聖盛を廃(はい)して載(の)せず、

滅功臣世家賢大夫之業不述墮先人所言罪莫大焉

功臣、世家、賢大夫の業を滅ぼして述(の)べなければ、先人の言うところをおこたって、罪は莫大(ばくだい)である。

余所謂述故事整齊其世傳

わたしは所謂(いわゆる)故事(こじ)を述(の)べ、その世伝をととのえるのであって、

非所謂作也而君比之於春秋謬矣

所謂(いわゆる)作るのではないのであり、君がこれを春秋に比(くら)べるのは、あやまりなのである」と。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2176

Trending Articles