太史公曰洋洋美乎
太史公曰く、「洋洋(ようよう)と満ちあふれるような美徳であろうか。
宰制萬物役使群眾豈人力也哉
万物をきりもりして、群衆を使役(しえき)させ、どうして人の力であるだろうかな。
余至大行禮官觀三代損益乃知緣人情而制禮
わたしは大行礼官に至って、三代(夏、殷、周)の減らしたり加えたりしたものを観(み)て、
すなわち人の情によりて礼を制(せい)し、
依人性而作儀其所由來尚矣
人の性に依(よ)りて儀を作り、その由来するところはひさしいと知ったのである。
人道經緯萬端規矩無所不貫誘進以仁義
人道は万(よろず)の端々(はしばし)にまでいりくんで、規矩(コンパスとものさし)が貫(つらぬ)かないところは無く、誘(さそ)い進めるに仁義を以ってし、
束縛以刑罰故厚者位尊
束縛するに刑罰を以ってし、故(ゆえ)に徳の厚(あつ)い者は位が尊(とうと)くなり、
祿重者寵榮所以總一海內而整齊萬民也
禄(ろく)の重い者は寵愛があって栄(さか)え、海内を一(いつ)にまとめて万民をととのえる所以(ゆえん)である。
人體安駕乘為之金輿錯衡以繁其飾
人体は馬車に安(やす)んずるので、これの為(ため)に金の輿(こし)、模様のある横木でその飾りを豪華にするを以ってする。
目好五色為之黼黻文章以表其能
目は五色を好むので、これの為(ため)に、刺繍(ししゅう)、かざりでその才能を表すを以ってする。
耳樂鐘磬為之調諧八音以蕩其心
耳は鐘磬(しょうけい)を楽しみ、これの為(ため)に八音をやわらぎ整え、その心を平(たいら)かにするを以ってする。
口甘五味為之庶羞酸咸以致其美
口は五味をうまいとするので、これの為(ため)に砂糖(庶=蔗?)、辛(羞=辛?)、酸、塩で、その美味に致(いた)すを以ってする。
情好珍善為之琢磨圭璧以通其意
情は珍しくて善いものを好むので、これの為(ため)に、圭(氷のような棒状に結晶する鉱物?例えば水晶など?)、璧(宝石)をみがいて、その意に通じるを以ってする。
太史公曰く、「洋洋(ようよう)と満ちあふれるような美徳であろうか。
宰制萬物役使群眾豈人力也哉
万物をきりもりして、群衆を使役(しえき)させ、どうして人の力であるだろうかな。
余至大行禮官觀三代損益乃知緣人情而制禮
わたしは大行礼官に至って、三代(夏、殷、周)の減らしたり加えたりしたものを観(み)て、
すなわち人の情によりて礼を制(せい)し、
依人性而作儀其所由來尚矣
人の性に依(よ)りて儀を作り、その由来するところはひさしいと知ったのである。
人道經緯萬端規矩無所不貫誘進以仁義
人道は万(よろず)の端々(はしばし)にまでいりくんで、規矩(コンパスとものさし)が貫(つらぬ)かないところは無く、誘(さそ)い進めるに仁義を以ってし、
束縛以刑罰故厚者位尊
束縛するに刑罰を以ってし、故(ゆえ)に徳の厚(あつ)い者は位が尊(とうと)くなり、
祿重者寵榮所以總一海內而整齊萬民也
禄(ろく)の重い者は寵愛があって栄(さか)え、海内を一(いつ)にまとめて万民をととのえる所以(ゆえん)である。
人體安駕乘為之金輿錯衡以繁其飾
人体は馬車に安(やす)んずるので、これの為(ため)に金の輿(こし)、模様のある横木でその飾りを豪華にするを以ってする。
目好五色為之黼黻文章以表其能
目は五色を好むので、これの為(ため)に、刺繍(ししゅう)、かざりでその才能を表すを以ってする。
耳樂鐘磬為之調諧八音以蕩其心
耳は鐘磬(しょうけい)を楽しみ、これの為(ため)に八音をやわらぎ整え、その心を平(たいら)かにするを以ってする。
口甘五味為之庶羞酸咸以致其美
口は五味をうまいとするので、これの為(ため)に砂糖(庶=蔗?)、辛(羞=辛?)、酸、塩で、その美味に致(いた)すを以ってする。
情好珍善為之琢磨圭璧以通其意
情は珍しくて善いものを好むので、これの為(ため)に、圭(氷のような棒状に結晶する鉱物?例えば水晶など?)、璧(宝石)をみがいて、その意に通じるを以ってする。