樂者聖人之所樂也而可以善民心
音楽とは、聖人の楽しむところであり、そして民心を善くするを以ってすることができる。
其感人深其風移俗易故先王著其教焉
その人に感じさせるは深く、その風習は移り俗は替(か)わり、故(ゆえ)に先王はその教えをあきらかにしたのである。
夫人有血氣心知之性而無哀樂喜怒之常
それ、人には血気、心知の性が有り、しこうして、哀楽喜怒の情(常=情?)が無くても、
應感起物而動然後心術形焉
感に応じて物に起こして動かし、然(しか)る後に心の術(すべ)が形づくる。
是故志微焦衰之音作而民思憂
この故(ゆえ)に志微、焦衰の音(曲?)が作られれば、しこうして、民は思い憂(うれ)え、
啴緩慢易繁文簡節之音作而民康樂
啴緩(のびやかで緩やか)慢易(まんい ばかにする、あなどる)、繁文(豪華な文(あや))、簡節(節(せつ)を簡略にする)の音(曲?)が作られれば、しこうして、民は広大に楽しむ。
粗猛起奮末廣賁之音作而民剛毅
粗(粗(あら)く激しい)、猛起、奮末、広賁の音(曲?)が作られれば、しこうして民は剛毅(ごうき)になる。
廉直經正莊誠之音作而民肅敬
廉直(れんちょく)、経正、荘誠の音(曲?)が作られれば、しこうして、民は肅敬(しゅくけい つつしみうやまう)する。
裕肉好順成和動之音作而民慈愛
裕(かんゆう 気持ちが大きくゆったっりしていること)、肉好、順成、和動の音(曲?)が作られれば、しおうして民は慈愛(じあい)する。
流辟邪散狄成滌濫之音作而民淫亂
流辟、邪散、狄成、滌濫(流れあふれる)の音(曲?)が作られれば、しこうして民は淫(みだ)らにみだれる。
是故先王本之情性稽之度數
この故(ゆえ)に先王は情性を本(もと)にし、度数をはかり、
制之禮義合生氣之和
礼義を制し、生気の和を合わせ、
道五常之行使之陽而不散
五常(仁義礼知信)の行いをみちびき、この陽(よう)をして散らせず、
陰而不密剛氣不怒柔氣不懾
陰(いん)をして密(みつ)にせず、剛気は怒らず、柔気はおそれないようにして、
四暢交於中而發作於外皆安其位而不相奪也
四暢(暢(ちょう 長くのびること))は中において交わりて外に於いて作り発せられ、皆(みな)
その位に安んじて相(あい)奪(うば)いあわないようにし、
然後立之學等廣其節奏
然(しか)る後に学を立てて等(ひと)しくし、その節奏(リズム)を広め、
省其文采以繩厚也
その文(あや)彩(いろど)りを省(かえり)みて、徳厚を受継ぐを以ってしたのである。
類小大之稱比終始之序
小大の称(たた)えを分類し、終始の順序をならべ、
以象事行使親疏貴賤長幼男女之理皆形見於樂
事行を象(かたど)るを以って、親疏、貴賤、長幼、男女の理をして皆(みな)音楽に於いて形(かたち)にしてあらわれさせた。
故曰樂觀其深矣
故(ゆえ)に曰く、「音楽はその深さを観(み)る」と。
土敝則草木不長水煩則魚鱉不大
土が疲弊すれば草木は成長せず、川が煩(わずら)えば、魚、鱉(すっぽん)は大きくならず、
氣衰則生物不育世亂則禮廢而樂淫
気が衰(おとろ)えれば生物は育たず、世が乱れれば礼が廃(すた)れて、音楽が淫(みだ)らになる。
是故其聲哀而不莊樂而不安
この故(ゆえ)のその声(響き)は哀(かな)しくしておもおもしくなく、楽しんでも安んじず、
慢易以犯節流湎以忘本
慢易(まんい ばかにする、あなどる)と節(せつ)を犯(おか)すを以ってし、流湎と流れて本(もと)を忘れるを以ってし、
廣則容姦狹則思欲
広ければ不正を容(い)れ、狭(せま)ければ欲(よく)を思い、
感滌蕩之氣而滅平和之
滌蕩(できとう 洗い去る)の気を感じて、平和の徳を滅ぼす。
是以君子賤之也
ここに君子を以ってこれを賤(いや)しむのである。
音楽とは、聖人の楽しむところであり、そして民心を善くするを以ってすることができる。
其感人深其風移俗易故先王著其教焉
その人に感じさせるは深く、その風習は移り俗は替(か)わり、故(ゆえ)に先王はその教えをあきらかにしたのである。
夫人有血氣心知之性而無哀樂喜怒之常
それ、人には血気、心知の性が有り、しこうして、哀楽喜怒の情(常=情?)が無くても、
應感起物而動然後心術形焉
感に応じて物に起こして動かし、然(しか)る後に心の術(すべ)が形づくる。
是故志微焦衰之音作而民思憂
この故(ゆえ)に志微、焦衰の音(曲?)が作られれば、しこうして、民は思い憂(うれ)え、
啴緩慢易繁文簡節之音作而民康樂
啴緩(のびやかで緩やか)慢易(まんい ばかにする、あなどる)、繁文(豪華な文(あや))、簡節(節(せつ)を簡略にする)の音(曲?)が作られれば、しこうして、民は広大に楽しむ。
粗猛起奮末廣賁之音作而民剛毅
粗(粗(あら)く激しい)、猛起、奮末、広賁の音(曲?)が作られれば、しこうして民は剛毅(ごうき)になる。
廉直經正莊誠之音作而民肅敬
廉直(れんちょく)、経正、荘誠の音(曲?)が作られれば、しこうして、民は肅敬(しゅくけい つつしみうやまう)する。
裕肉好順成和動之音作而民慈愛
裕(かんゆう 気持ちが大きくゆったっりしていること)、肉好、順成、和動の音(曲?)が作られれば、しおうして民は慈愛(じあい)する。
流辟邪散狄成滌濫之音作而民淫亂
流辟、邪散、狄成、滌濫(流れあふれる)の音(曲?)が作られれば、しこうして民は淫(みだ)らにみだれる。
是故先王本之情性稽之度數
この故(ゆえ)に先王は情性を本(もと)にし、度数をはかり、
制之禮義合生氣之和
礼義を制し、生気の和を合わせ、
道五常之行使之陽而不散
五常(仁義礼知信)の行いをみちびき、この陽(よう)をして散らせず、
陰而不密剛氣不怒柔氣不懾
陰(いん)をして密(みつ)にせず、剛気は怒らず、柔気はおそれないようにして、
四暢交於中而發作於外皆安其位而不相奪也
四暢(暢(ちょう 長くのびること))は中において交わりて外に於いて作り発せられ、皆(みな)
その位に安んじて相(あい)奪(うば)いあわないようにし、
然後立之學等廣其節奏
然(しか)る後に学を立てて等(ひと)しくし、その節奏(リズム)を広め、
省其文采以繩厚也
その文(あや)彩(いろど)りを省(かえり)みて、徳厚を受継ぐを以ってしたのである。
類小大之稱比終始之序
小大の称(たた)えを分類し、終始の順序をならべ、
以象事行使親疏貴賤長幼男女之理皆形見於樂
事行を象(かたど)るを以って、親疏、貴賤、長幼、男女の理をして皆(みな)音楽に於いて形(かたち)にしてあらわれさせた。
故曰樂觀其深矣
故(ゆえ)に曰く、「音楽はその深さを観(み)る」と。
土敝則草木不長水煩則魚鱉不大
土が疲弊すれば草木は成長せず、川が煩(わずら)えば、魚、鱉(すっぽん)は大きくならず、
氣衰則生物不育世亂則禮廢而樂淫
気が衰(おとろ)えれば生物は育たず、世が乱れれば礼が廃(すた)れて、音楽が淫(みだ)らになる。
是故其聲哀而不莊樂而不安
この故(ゆえ)のその声(響き)は哀(かな)しくしておもおもしくなく、楽しんでも安んじず、
慢易以犯節流湎以忘本
慢易(まんい ばかにする、あなどる)と節(せつ)を犯(おか)すを以ってし、流湎と流れて本(もと)を忘れるを以ってし、
廣則容姦狹則思欲
広ければ不正を容(い)れ、狭(せま)ければ欲(よく)を思い、
感滌蕩之氣而滅平和之
滌蕩(できとう 洗い去る)の気を感じて、平和の徳を滅ぼす。
是以君子賤之也
ここに君子を以ってこれを賤(いや)しむのである。