Quantcast
Channel: 倭人伝を解く
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2176

子貢見師乙而問焉曰

$
0
0
子貢見師乙而問焉曰

子貢(孔子の門人)が師乙に見(まみ)えて問うた、曰く、

賜聞聲歌各有宜也如賜者宜何歌也

「わたしは歌声には各(おのおの)宜(よろ)しきが有ると聞きますが、わたしの如(ごと)くの者は宜(よろ)しく何を歌うべきでしょうか」と。

師乙曰乙賤工也

師乙曰く、「わたしは、賤(いや)しい楽人であり、

何足以問所宜請誦其所聞

どうして宜(よろ)しくすべきところを問われるを以ってするに足(た)るでしょうか。その聞いたところをそらんじて、

而吾子自執焉而靜柔而正者宜歌頌

しこうして、あなたが自ら執(と)ることを請(こ)う。寛(ひろ)くして静かで、柔(やわ)らかくして正しい者は宜(よろ)しく頌を歌うべきで、

廣大而靜疏達而信者宜歌大雅

広大にして静かで疏達(物事の筋道が通っていること)にして信(しん)ある者は宜(よろ)しく大雅を歌うべきで、

恭儉而好禮者宜歌小雅

恭倹(きょうけん 人にはうやうやしくして自分については控えめにすること)にして礼を好む者は宜しく小雅を歌うべきで、

正直清廉而謙者宜歌風

正直、清廉(せいれん)にして謙(へりくだる)する者は宜(よろ)しく風を歌うべきで、

肆直而慈愛者宜歌商

肆直(正直)にして慈愛(じあい)者は宜(よろ)しく商を歌うべきで、

溫良而能斷者宜歌齊

温良にして判断できる者は宜(よろ)しく斉を歌うべきです。

夫歌者直己而陳

それ、歌とは、己(おのれ)にして徳を並べて直(なお)させ、

動己而天地應焉四時和焉

己(おのれ)にして天地の応、四季の和、

星辰理焉萬物育焉

星座の理、万物の育に動かされる。

故商者五帝之遺聲也

故(ゆえ)に商とは、五帝の声(ことば)を遺(のこ)したのであり、

商人志之故謂之商

商(殷)人はこれを志(こころざ)したので、故(ゆえ)にこれを商と謂(い)う。

齊者三代之遺聲也

斉とは、三代(夏、殷、周)の声(ことば)を遺(のこ)したのであり、

齊人志之故謂之齊

斉人はこれを志(こころざ)したので、故(ゆえ)にこれを斉と謂(い)う。

明乎商之詩者臨事而屢斷

明らかや、商の詩とは、事に臨(のぞ)みてはやく断(だん)ずる。

明乎齊之詩者見利而讓也

明らかや、斉の詩とは、利(り)を見て譲(ゆず)るのである。

臨事而屢斷勇也

事に臨(のぞ)みてはやく断(だん)ずるは勇(いさましい)である。

見利而讓義也

利(り)を見て譲(ゆず)るは、義(ぎ)である。

有勇有義非歌孰能保此

勇を有(ゆう)し、義(ぎ)を有(ゆう)して、歌で非(あら)ざればいずれがこれを保(たも)つことができようか。

故歌者上如抗下如隊

故(ゆえ)に歌とは、上は抗(あげる)が如(ごと)く、下は隊(おちる)が如(ごと)く、

曲如折止如槁木居中矩

曲(ま)がるは折(お)れるが如(ごと)く、止まるは槁木(枯れ木)の如(ごと)く、居(すわる)は矩(さしがね)に中(あ)て、

句中鉤累累乎殷如貫珠

句(かがまる)は鉤(かぎ)に中(あ)て、累々(るいるい)とうちつづくや、豊かに珠(たま)をつらねるが如(ごと)く。

故歌之為言也長言之也

故(ゆえ)に歌が言うを為すは、これを長く言うのであり、

說之故言之言之不足故長言之

これを悦(よろこ)び、故(ゆえ)にこれを言い、言うが足(た)らなければ、故(ゆえ)にこれを長く言う。

長言之不足故嗟嘆之

長く言って足(た)りなければ、故(ゆえ)にこれを嗟嘆(さたん 感動して声をあわせてうたう)させる。

嗟嘆之不足故不知手之舞之足之蹈之子貢問樂

嗟嘆(さたん 感動して声をあわせてうたう)が足(た)りなければ、故(ゆえ)に知らずに手が舞い、足が踏(ふ)まれるのです」と。子貢は楽を問うたのである。

凡音由於人心天之與人有以相通

凡(およ)そ音(曲)は人の心に由来(ゆらい)し、天は人と相(あい)通じあうを以ってすることを有(ゆう)し、

如景之象形響之應聲

影(かげ)が形を象(かたど)るが如(ごと)く、響(ひび)きが声(ことば)に応じたのである。

故為善者天報之以福

故(ゆえ)に善(ぜん)を為す者は天がこれに福(ふく)を以って報(むく)い、

為惡者天與之以殃其自然者也

悪(あく)を為す者は天がこれに殃(わざわい)を以ってすることを与(あた)えるのが、その自然なものである。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2176

Trending Articles