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太史公曰文帝時會天下新去湯火

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太史公曰文帝時會天下新去湯火

太史公曰く、漢孝文帝劉恒の時、天下が新たに湯(ゆ)、火(ひ)(戦い)を去(さ)るに会(かい)し、

人民樂業因其欲然能不擾亂

人民は業(なりわい)を楽しみ、その欲然として欲することに因(よ)りて、乱れさわがないことができ、

故百姓遂安自年六七十翁亦未嘗至市井

故(ゆえ)に百姓は遂(つい)に安んじた。自らの年六、七十の翁(おじいさん)も未(いま)だ嘗(かつ)て市井に至ったことはなく、

游敖嬉戲如小兒狀孔子所稱有君子者邪

游敖(あそびたわむれる)嬉戲(よろこび戯(たわむ)れる)は小児の様子の如(ごと)し。孔子が称(とな)えたところの有徳(ゆうとく)の君子というものだろうか。

書曰[七正]二十八舍

書経曰く、二十八舎(二十八宿)、と。

律歷天所以通五行八正之氣

律、歴は天の五行八正の気を通わす所以(ゆえん)であり、

天所以成孰萬物也

天の万物を成熟させる所以(ゆえん)である。

舍者日月所舍舍者舒氣也

舎とは、太陽、月の泊まる所。舎とは、気をおちつかせる、である。

不周風居西北主殺生

不周風は西北に居(お)り、殺、生をつかさどる。

東壁居不周風東主辟生氣而東之

東壁は不周風の東に居(お)り、生気をわけることをつかさどり、これを東に進むと、

至於營室營室者主營胎陽氣而產之

営室に至る、営室とは、陽気を営胎(いとなみはらむ)をつかさどりてこれを産む。

東至于危危垝也

東に進むと危に至る。危とは、垝(やぶれる くずれる)である。

言陽氣之(危)垝故曰危

陽気の垝(やぶれる くずれる)を言い、故(ゆえ)に曰く、危、と。

十月也律中應鐘

十月(旧暦十月)であり、律(音の高さ)は応鐘に中(あた)る。

應鐘者陽氣之應不用事也

応鐘とは、陽気の応(或いは区(おう かくす)?)であり、事に用いないのである。

其於十二子為亥亥者該也

その十二支(じゅうにし)に於いて亥(いのしし)と為す。亥とは、該(そなえる)である。

言陽氣藏於下故該也

陽気が下に於いて蔵(しまう)することを言い、故(ゆえ)に 該(そなえる)である。

廣莫風居北方廣莫者言陽氣在下

広莫風は北方に居(い)る。広莫とは、陽気が下に在(あ)り、

陰莫陽廣大也故曰廣莫

陰が莫大(ばくだい 大きい)で陽が広大(こうだい 広い)であるのを言い、故(ゆえ)曰く、広莫、と。

東至於虛虛者能實能虛

東に進むと虚に至る。虚とは実(みたす)ことができ虚(から)にすることができ、

言陽氣冬則宛藏於虛

陽気が冬ならば、虚に於いて宛藏(うんぞう たくわえる)し、

日冬至則一陰下藏一陽上舒故曰虛

太陽が冬至(とうじ)になれば、一(いつ)に陰が下ってしまわれ、一(いつ)に陽が上がってひろがるを言い、故(ゆえ)に曰く、虚(うろ)、と。

東至于須女言萬物變動其所

東に進むと須女に至る。万物がその所を変動することを言い、

陰陽氣未相離尚相[如]胥[如]也故曰須女

陰、陽の気が未(ま)だ相(あい)離れず、尚(なお)相胥(あいたがいに)しているのであり、故(ゆえ)に曰く、須(ひげ)女、と。

十一月也律中黃鐘

十一月(旧暦十一月)であり、律(音の高さ)は黄鐘に中(あた)る。

黃鐘者陽氣踵黃泉而出也

黄鐘とは、陽気が黄泉(よみ)を踵(きびす ふむ)して出(い)でるのである。

其於十二子為子子者滋也

その十二支に於いては子(ねずみ)と為す。子とは滋(ふえる)である。

滋者言萬物滋於下也

慈(ふえる)とは、万物が下に於いて増えることを言うのである。

其於十母為壬癸壬之為言任也

その十母に於いては壬癸と為す。壬は任を言うとするのであり、

言陽氣任養萬物於下也

陽気が万物を下に於いて任養(にないやしなう)することを言うのである。

癸之為言揆也言萬物可揆度故曰癸

癸は揆(はかる)を言うのであり、万物は度を測(はか)ることができることを言い、故(ゆえ)に曰く、癸、と。

東至牽牛牽牛者言陽氣牽引萬物出之也

東に進むと牽牛に至る。牽牛とは、陽気が万物を牽引(けんいん)してこれを出(い)だすことを言うのである。

牛者冒也言地雖凍能冒而生也

牛とは冒(おおい)であり、地が凍(こお)ると雖(いえど)も、おおって生ずることができることを言うのである。

牛者耕植種萬物也東至於建星

牛とは、耕(たがや)して万物の種をまくのである。東に進むと建星に至る。

建星者建諸生也

建星とは、諸(もろもろ)の生を建てることである。

十二月也律中大呂

十二月(旧暦十二月)であり、律(音の高さ)は大呂に中(あた)る。

大呂者其於十二子為醜

大呂とは、その十二支に於いて醜(うし?)と為す。

條風居東北主出萬物

條風は東北に居(お)り、万物を出(い)だすことをつかさどる。

條之言條治萬物而出之故曰條風

條は万物を條治(すじみちだてておさめる)してこれを出(い)だすことを言い、故(ゆえ)に曰く、條風と。

南至於箕箕者言萬物根棋故曰箕

南に進むと箕に至る。箕とは、万物の根基(こんき 根っこ)を言い、故(ゆえ)に曰く、箕(あぐらをかいてすわる)、と。

正月也律中泰蔟

正月(旧暦正月)であり、律(音の高さ)は泰蔟に中(あた)る。

泰蔟者言萬物蔟生也故曰泰蔟

泰蔟とは、万物の蔟生(むらがり生ずる)を言うのであり、故(ゆえ)に曰く、泰蔟、と。

其於十二子為寅寅言萬物始生螾然也故曰寅

その十二支に於いては寅(とら)と為す。寅は万物が螾然(いんぜん)とうごめいて生じ始めることを言うのであり、故(ゆえ)に曰く、寅、と。

南至於尾言萬物始生如尾也

南に進むと尾に至り、万物が尾(お)の如(ごと)く生じ始めることをいうのである。

南至於心言萬物始生有華心也

南に進むと心に至り、万物が華心(はなやぐこころ)を有(ゆう)して生じ始めることをいうのである。

南至於房房者言萬物門戶也至于門則出矣

南に進むと房に至る。房とは万物の門戸(もんこ)を言うのであり、門に至れば出るのである。

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