後數日蒯通復說曰夫聽者事之候也
数日後、蒯通はふたたび説(と)いた、曰く、「それ、聴き入れるとは、事(こと)のさぐりみることで、
計者事之機也聽過計失而能久安者鮮矣
計(はか)るとは、事(こと)のからくりであり、聴き入れることが過(あやま)って、計(はか)りごとが失敗すれば、久(ひさ)しく安(やす)んずることができることはまれでしょう。
聽不失一二者不可亂以言
聴き入れるに順を失わない者は、言葉を以って乱(みだ)すことはできません。
計不失本末者不可紛以辭
計(はか)りごとが、本末(もととすえ)を失わない者は、意見を以って紛(まぎ)らわしくさせることはできません。
夫隨廝養之役者失萬乘之權
それ、廝養(たきぎを取ったり馬の世話をしたりする召使)の役(やく)をつづける者は万乗の権力を失(うしな)い、
守儋石之祿者闕卿相之位
わずかな俸禄(ほうろく)を大切にもちこたえる者は卿相の地位をうしないます。
故知者決之斷也疑者事之害也
故(ゆえ)にさといのは思い切った決断であり、きめかねるのは事(こと)することの害(がい)であり、
審豪氂之小計遺天下之大數
ちいさなつまらない計(はか)りごとを審(つまび)らかにしては、天下の大勢(たいせい)を逃(のが)します。
智誠知之決弗敢行者百事之禍也
智(ち)者が誠(まこと)にさとくても、敢(あ)えて行わないことを決めるのは、百事の禍(わざわい)であります。
故曰猛虎之猶豫不若蜂蠆之致螫
故(ゆえ)に曰く、猛獣の虎(とら)のためらうは、蜂(はち)や蠍(さそり)の刺(さ)すをまねくに
及(およ)ばない。
騏驥之跼躅不如駑馬之安步
騏驥(きき 一日千里を行くすぐれた馬)の行き悩むさまは、駑馬(どば のろい馬)がゆるゆると歩行するに及(およ)ばない。
孟賁之狐疑不如庸夫之必至也
孟賁(勇者の名)がひどくきめかねるは、凡庸(ぼんよう)な男の必至(ひっし)に及(およ)ばない。
雖有舜禹之智吟而不言
帝舜、帝禹の智(ち)が有ると雖(いえど)も、うそぶいて言わなければ、
不如瘖聾之指麾也
聾唖(ろうあ)者の旗(はた)で指揮(しき)するに及(およ)ばない、と。
数日後、蒯通はふたたび説(と)いた、曰く、「それ、聴き入れるとは、事(こと)のさぐりみることで、
計者事之機也聽過計失而能久安者鮮矣
計(はか)るとは、事(こと)のからくりであり、聴き入れることが過(あやま)って、計(はか)りごとが失敗すれば、久(ひさ)しく安(やす)んずることができることはまれでしょう。
聽不失一二者不可亂以言
聴き入れるに順を失わない者は、言葉を以って乱(みだ)すことはできません。
計不失本末者不可紛以辭
計(はか)りごとが、本末(もととすえ)を失わない者は、意見を以って紛(まぎ)らわしくさせることはできません。
夫隨廝養之役者失萬乘之權
それ、廝養(たきぎを取ったり馬の世話をしたりする召使)の役(やく)をつづける者は万乗の権力を失(うしな)い、
守儋石之祿者闕卿相之位
わずかな俸禄(ほうろく)を大切にもちこたえる者は卿相の地位をうしないます。
故知者決之斷也疑者事之害也
故(ゆえ)にさといのは思い切った決断であり、きめかねるのは事(こと)することの害(がい)であり、
審豪氂之小計遺天下之大數
ちいさなつまらない計(はか)りごとを審(つまび)らかにしては、天下の大勢(たいせい)を逃(のが)します。
智誠知之決弗敢行者百事之禍也
智(ち)者が誠(まこと)にさとくても、敢(あ)えて行わないことを決めるのは、百事の禍(わざわい)であります。
故曰猛虎之猶豫不若蜂蠆之致螫
故(ゆえ)に曰く、猛獣の虎(とら)のためらうは、蜂(はち)や蠍(さそり)の刺(さ)すをまねくに
及(およ)ばない。
騏驥之跼躅不如駑馬之安步
騏驥(きき 一日千里を行くすぐれた馬)の行き悩むさまは、駑馬(どば のろい馬)がゆるゆると歩行するに及(およ)ばない。
孟賁之狐疑不如庸夫之必至也
孟賁(勇者の名)がひどくきめかねるは、凡庸(ぼんよう)な男の必至(ひっし)に及(およ)ばない。
雖有舜禹之智吟而不言
帝舜、帝禹の智(ち)が有ると雖(いえど)も、うそぶいて言わなければ、
不如瘖聾之指麾也
聾唖(ろうあ)者の旗(はた)で指揮(しき)するに及(およ)ばない、と。