漢十年信令王黃等說誤陳豨
漢十年、韓信は王黄らに令(れい)し(鉅鹿守(趙地)の)陳豨を誤(あやま)らせようと説(と)かせた。
十一年春故韓王信復與胡騎入居參合距漢
漢十一年春、元韓王韓信はふたたび胡騎とともに参合に入り居(きょ)し、漢と対峙(たいじ)した。
漢使柴將軍擊之遺信書曰
漢は柴將軍をつかわしこれを撃(う)たせ、韓信に書状を送って曰く、
陛下仁諸侯雖有畔亡而復歸
「陛下(劉邦)は心が広く情け深く、諸侯に謀反(むほん)が有(あ)って逃亡し、しこうして、ふたたび帰属したと雖(いえど)も、
輒復故位號不誅也大王所知
そのたびごとにまた前の位号に復位させ、誅(ちゅう)さないのは、大王(韓信)の知るところです。
今王以敗亡走胡非有大罪急自歸
今、王(韓信)は敗(やぶ)れて胡(匈奴)に逃走したのを以って、大罪を有(ゆう)したのでは非(あら)ず、急いで自(みずか)ら(漢に)帰られよ」と。
韓王信報曰陛下擢仆起閭巷
韓王韓信は返報して曰く、「陛下(劉邦)はわたしを民間から起こして引き抜き、
南面稱孤此仆之幸也滎陽之事
南面して孤(王侯の自称)を称(しょう)し、これは、わたしの幸いであります。栄陽の事(こと)では、
仆不能死囚於項籍此一罪也
わたしは死ぬことができず、項籍(項羽)に囚(とら)われました。これが一つめの罪であります。
及寇攻馬邑仆不能堅守以城降之
寇盗が馬邑を攻(せ)めるに及び、わたしは堅(かた)く守ることができず、城を以ってこれに降(くだ)りました。
此二罪也今反為寇將兵
これが二つめの罪であります。今、反対に兵を率(ひき)いて寇盗と為り、
與將軍爭一旦之命此三罪也
将軍(漢柴将軍)とともに一朝の命(いのち)を争(あらそ)っています。これが三つ目の罪であります。
夫種蠡無一罪身死亡
越大夫文種、范蠡は一つの罪も無く、身(み)は死し、逃げましたが、
今仆有三罪於陛下而欲求活於世
今、わたしは三つの罪が陛下に於いて有(あ)り、しこうして漢世に活(かつ)を求めることを欲するは、
此伍子胥所以僨於吳也
これ、伍子胥が呉に於いてたおれるを以ってしたところであります。
今仆亡匿山谷旦暮乞貸蠻夷
今、わたしは、山の谷間(たにま)に逃げ隠(かく)れ、朝も夕も蛮夷にほどこしを乞(こ)い、
仆之思歸,如痿人不忘起盲者不忘視也
わたしの帰ろうという思いは、足萎(あしな)えの人が立ち上がることを忘れず、盲者が視(み)ることを忘れないようなもので、
勢不可耳遂戰
情勢は不可であるだけです」と。遂(つい)に(漢柴将軍と)戦った。
柴將軍屠參合斬韓王信
漢柴将軍は参合をやぶって、韓王韓信を斬った。
漢十年、韓信は王黄らに令(れい)し(鉅鹿守(趙地)の)陳豨を誤(あやま)らせようと説(と)かせた。
十一年春故韓王信復與胡騎入居參合距漢
漢十一年春、元韓王韓信はふたたび胡騎とともに参合に入り居(きょ)し、漢と対峙(たいじ)した。
漢使柴將軍擊之遺信書曰
漢は柴將軍をつかわしこれを撃(う)たせ、韓信に書状を送って曰く、
陛下仁諸侯雖有畔亡而復歸
「陛下(劉邦)は心が広く情け深く、諸侯に謀反(むほん)が有(あ)って逃亡し、しこうして、ふたたび帰属したと雖(いえど)も、
輒復故位號不誅也大王所知
そのたびごとにまた前の位号に復位させ、誅(ちゅう)さないのは、大王(韓信)の知るところです。
今王以敗亡走胡非有大罪急自歸
今、王(韓信)は敗(やぶ)れて胡(匈奴)に逃走したのを以って、大罪を有(ゆう)したのでは非(あら)ず、急いで自(みずか)ら(漢に)帰られよ」と。
韓王信報曰陛下擢仆起閭巷
韓王韓信は返報して曰く、「陛下(劉邦)はわたしを民間から起こして引き抜き、
南面稱孤此仆之幸也滎陽之事
南面して孤(王侯の自称)を称(しょう)し、これは、わたしの幸いであります。栄陽の事(こと)では、
仆不能死囚於項籍此一罪也
わたしは死ぬことができず、項籍(項羽)に囚(とら)われました。これが一つめの罪であります。
及寇攻馬邑仆不能堅守以城降之
寇盗が馬邑を攻(せ)めるに及び、わたしは堅(かた)く守ることができず、城を以ってこれに降(くだ)りました。
此二罪也今反為寇將兵
これが二つめの罪であります。今、反対に兵を率(ひき)いて寇盗と為り、
與將軍爭一旦之命此三罪也
将軍(漢柴将軍)とともに一朝の命(いのち)を争(あらそ)っています。これが三つ目の罪であります。
夫種蠡無一罪身死亡
越大夫文種、范蠡は一つの罪も無く、身(み)は死し、逃げましたが、
今仆有三罪於陛下而欲求活於世
今、わたしは三つの罪が陛下に於いて有(あ)り、しこうして漢世に活(かつ)を求めることを欲するは、
此伍子胥所以僨於吳也
これ、伍子胥が呉に於いてたおれるを以ってしたところであります。
今仆亡匿山谷旦暮乞貸蠻夷
今、わたしは、山の谷間(たにま)に逃げ隠(かく)れ、朝も夕も蛮夷にほどこしを乞(こ)い、
仆之思歸,如痿人不忘起盲者不忘視也
わたしの帰ろうという思いは、足萎(あしな)えの人が立ち上がることを忘れず、盲者が視(み)ることを忘れないようなもので、
勢不可耳遂戰
情勢は不可であるだけです」と。遂(つい)に(漢柴将軍と)戦った。
柴將軍屠參合斬韓王信
漢柴将軍は参合をやぶって、韓王韓信を斬った。