蓋明者遠見於未萌而智者避危於無形
蓋明者遠見於未萌而智者避危於無形 思うに明者は未(ま)だ芽(め)ばえないうちより遠くを見て、智者は形にならないうちより危険を避(さ)け、 禍固多藏於隱微而發於人之所忽者也 禍(わざわい)は固(もと)より多くが隠微(いんび かすかではっきりしない)としまわれておりて、人のいいかげんにするところのものより発するのである。 故鄙諺曰家累千金坐不垂堂...
View Article持身不謹兮亡國失埶
持身不謹兮亡國失埶 身をもちこたえて謹(つつし)まず、国を亡(ほろ)ぼし、勢(いきお)いを失(うしな)い、 信讒不寤兮宗廟滅絕嗚呼哀哉 讒言(ざんげん)を信じて悟(さと)らず、宗廟(そうびょう)は滅(ほろ)び絶えた。ああ、哀(かな)しいかな。 操行之不得兮墳墓蕪穢而不修兮 品行(ひんこう)の得られずは、墳墓(ふんぼ)は荒(あ)れて雑草が茂りて修(おさ)めず、 魂無歸而不食...
View Article相如以為列僊之傳居山澤
相如以為列僊之傳居山澤形容甚臞此非帝王之僊意也 漢孝文園令司馬相如は、列仙の伝は、山沢の間に居住して、形容(けいよう)が甚(はなは)だ貧相(ひんそう)で、これは帝王の仙意ではないと思い、 乃遂就大人賦其辭曰 そこで遂(つい)に大人賦をつくりあげた。その辞曰く、 世有大人兮在于中州 「世に大人有り、瀛州(中=央(えい)=瀛(えい)?)に在住する。 宅彌萬里兮曾不足以少留...
View Article紅杳渺以眩湣兮猋風涌而雲浮
紅杳渺以眩湣兮猋風涌而雲浮 紅(くれない)は杳渺(ようびょう)と遠くかすみ、まどわすを以ってし、つむじ風が涌(わ)いて雲がただよう。 駕應龍象輿之蠖略逶麗兮 龍(りゅう)象(ぞう)の輿(こし)の蠖略(わくりゃく)と龍の動くようにうねりゆき、逶麗(いり)としてゆったりとつらなるに応(おう)じて駕(が)し、 驂赤螭青虯之幽蟉蜿蜒...
View Article沛艾赳螑以佁儗兮
沛艾赳螑以佁儗兮 沛艾(はいがい)として馬の頭がゆらぎ、赳赳(赳螑(きゅうきゅう)=赳赳(きゅうきゅう)?)として強く勇ましく、(きつ)として頭をあげて、佁儗(ちぎ)としてとどこおるを以ってする。 放散畔岸驤以孱顏...
View Article歷唐堯於崇山兮
歷唐堯於崇山兮 陶唐(国号)の堯帝公孫放(史記 五帝本紀 黄帝より舜禹に至るまで皆同姓より。 後に禹は姓名を別ける)を祟山に於いてめぐり、 過虞舜於九疑 有虞(国号)の舜帝公孫重華(史記 五帝本紀 黄帝より舜禹に至るまで皆同姓より。 後に禹は姓名を別ける)を九疑に立ち寄った。 紛湛湛其差錯兮 紛(旗につけるかざり)は湛湛(たんたん)とゆるやかに、その差錯(ささく)とたがいちがいにまじわり、...
View Article騷擾沖蓯其相紛挐兮
騷擾沖蓯其相紛挐兮 騷擾(そうじょう)とさわぎ乱れ、沖蓯(ちゅうしょう)とわきたってぶつかり、その相(あい)紛挐(ふんだ)と打ちあうは、 滂濞泱軋灑以林離 滂濞(ぼうび)と水の流れる音が、泱軋(おうあつ)とわきたって生(しょう)じ、灑(さい)と洗い清めるは淋漓(林離(りんり)=淋漓(りんり)?)と勢いのよいさまを以ってする。鉆羅列聚叢以蘢茸兮鉆(ほこ...
View Article經營炎火而浮弱水兮
經營炎火而浮弱水兮 炎火を経営して弱水に船を浮かべ、 杭絕浮渚而涉流沙 杭絕(こうぜつ)と船でわたること渚(なぎさ)に浮きて、流沙を渉(わた)る。 奄息總極氾濫水嬉兮 奄息(あんそく)とにわかに増えるは、総極(そうきょく)と全体に最高点にいたり、氾濫(はんらん)と水があふれて流れ、水嬉(すいき)と川がよろこび、 使靈媧鼓瑟而舞馮夷...
View Article排閶闔而入帝宮兮
排閶闔而入帝宮兮閶闔(西のはてにある門)を押し開きて帝宮(白帝?)に入り、 載玉女而與之歸 美女を載(の)せてこれとともに帰る。 舒閬風而搖集兮閬風(崑崙山の頂上にある)にのんびりして、搖集(ようしゅう)とゆらゆらとやわらいだ。 亢烏騰而一止 大きな烏(からす)が飛び上がって、一度止まり、 低回陰山翔以紆曲兮 陰山を低く回(まわ)り、飛びめぐるは紆曲(うきょく)とうねるを以ってした。...
View Article回車朅來兮絕道不周
回車朅來兮絕道不周 車を回して立ち去って来て、道を絶(た)ってめぐらず、 會食幽都呼吸瀣兮餐朝霞兮 幽都に会食した。夜半の気を呼吸し、朝霞(あさのかすみ)を食べ、 杳芝英兮嘰瓊華 芝英(草名)をわずかに食べ、瓊華(美しい花)を少し食べる。嬐侵潯而高縱兮鉆(ほこややじり 嬐(せん)=鉆(せん)=鑽?)は伸(の)びて(侵(しん)=伸(しん)?)つづき(潯=尋?)、縦(たて)に高(たか)くして、...
View Article涉豐隆之滂沛
涉豐隆之滂沛 豊隆の 滂沛を渉(わた)り、 馳游道而修降兮 道を巡り馳せて、修(おさ)め安(やす)らぎ、騖遺霧而遠逝 はせて霧を抜けて遠く行く。 迫區中之隘陝兮 区中(句注?)の 隘陝(けわしくせまい)に迫り、 舒節出乎北垠 旗をゆるやかにたらして出るは、北のはてに。 遺屯騎於玄闕兮 抜けて 玄闕(黒帝の遠望台?)に於いて騎を屯し、 軼先驅於寒門 過ぎて北のはての門に先駆けする。
View Article下崢而無地兮
下崢而無地兮 下は、谷などの深くて危険なさまにして、地は、無く、 上寥廓而無天 上は、がらんとしてむなしくして、天は、無く、 視眩眠而無見兮 視るは、目がくらんで見えずして、見えるものは無く、 聽惝恍而無聞 聴くは、ぼうっとしてはっきりせずして、聞こえるものは、無く、 乘虛無而上假兮 虚無に乗って、遠く上がり、 超無友而獨存 飛び越えて、友は無くなりて、ただ一人ながらえるのみ。
View Article相如既奏大人之頌天子大說
相如既奏大人之頌天子大說 漢孝文園令司馬相如が、既に大人の 頌を奏でると、天子は、大いに喜んだ、 飄飄有凌雲之氣似游天地之意 飄々と、雲を凌いで高く飛ぶ気((或いは旗))を有してさすらい、天地の間に遊ぶに似た気持ちを。 相如既病免家居茂陵 漢孝文園令司馬相如は、既に病で免ぜられ、茂 陵に隠居した。 天子曰司馬相如病甚 天子曰く、「「司馬相如の病は甚だしく、 可往從悉取其書...
View Article使所忠往
使所忠往而相如已死家無書 忠実なるところをつかわしてゆかせると、司馬相如は、すでに死んでおり、家には書がなかった。 問其妻對曰長卿固未嘗有書也 その妻に問うた、応えて曰く、「「 長卿は、もとより未だかつて書を有したことは、ありません。 時時著書人又取去即空居 時々書を著すと、人が取り去って、すぐにからになります。 長卿未死時為一卷書曰有使者來求書奏之無他書...
View Article伊上古之初肇自昊穹兮生民
伊上古之初肇自昊穹兮生民 「これ、上古のはじめ、大空が民(たみ)を生(しょう)じてより、歷撰列辟以迄于秦 多くの諸侯を選びあきらかにし、秦に及(およ)ぶを以ってする。 率邇者踵武逖聽者風聲 近くを率(ひき)いるのは、前人のあとをつぎ、遠く聴(き)くのは、土地風俗に従う教え方をする、 紛綸葳蕤堙滅而不稱者...
View Article五三六經載籍之傳
五三六經載籍之傳 五帝三王、六経は書籍に載(の)せられて伝わり、 維見可觀也 これ、今観(み)ることができるのである。 書曰元首明哉股肱良哉 書経曰く、『元首(げんしゅ 国にかしら)は賢明(けんめい)かな、股肱(ここう 家来)は良いかな』と。 因斯以談君莫盛於唐堯 これに因(よ)り、話すを以ってするに、君は唐堯(陶唐(国号)の堯帝公孫放)より盛んではなく、 臣莫賢於后稷 家臣は后稷(周の太祖 姫棄...
View Article然無異端慎所由於前
然無異端慎所由於前 然(しか)るに異端(いたん 正しい教えにそむこと)を無くし、前より従うところを慎(つつし)み、 謹遺教於後耳 後(あと)に教えを遺(のこ)すことを謹(つつし)むのみ。 故軌跡夷易易遵也 故(ゆえ)に軌跡(きせき わだち)が平(たい)らかになり、守り従う道にかわるのである。 湛恩濛涌易豐也 満ちあふれる恩(おん)が盛んに涌(わ)いて、豊(ゆた)かにかわるのである。 憲度著明易則也...
View Article大漢之逢涌原泉
大漢之逢涌原泉 大漢の徳は、さかんに源泉に涌(わ)き、沕潏漫衍旁魄四塞沕潏と深く涌(わ)きでて、漫衍(まんえん)と流れあふれ、四方の塞(とりで)に旁礴(ぼうはく 旁魄(ぼうはく)=旁礴(ぼうはく)?)といっぱいになってふさがり、 雲尃霧散上暢九垓下泝八埏 雲は遷(うつ)って(専(せん)=遷(せん)?)、霧は散(ち)り、上は天のはてにのびて、下は八方の地のはてに向う。 懷生之類霑濡浸潤...
View Article然後囿騶虞之珍群
然後囿騶虞之珍群 然る後、騶虞(すうぐ 獣名)の珍(めずら)しい仲間を集め、 徼麋鹿之怪獸 麋鹿(おおじかやしか)のみなれないふしぎな獣を求め、噵一莖六穗於庖 炊事場では一つの茎(くき)に六つの穂(ほ)がついているものを話し、 犧雙觡共抵之獸 二つの角(つの)に、二つのひづめ(共抵(ぐてい)=遇蹄(ぐてい) 偶蹄目(ぐうていもく)?)の獣をいけにえにし、 獲周餘珍收龜于岐...
View Article於是大司馬進曰
於是大司馬進曰 ここに於いて大司馬が進み出て曰く、 陛下仁育群生 「陛下の仁(じん)は多くの生き物を育(はぐく)み、 義征不憓 義(ぎ)は、従(したが)わずを征(せい)し、 諸夏樂貢 中国はよろこんで貢(みつ)ぎ、 百蠻執贄 百蛮(多くの異民族)は、面会するときにおつかいものを持って行き、 往初 徳(とく)は以前をしのぎ((ぼう)=冒(ぼう)?)、 功無與二...
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